Library Journal誌にMeredith Schwartz氏による「COVID-19の教訓」というコラムが掲載されている(April 2020, vo. 145, no. 4)。
記事では,これまで図書館はセーフティーネットの役割を果たしていたが,その役割が果たせなくなっていることが述べられている。以下はその例である。
・学校教育が遠隔教育にシフトする中で,31%がブロードバンド環境がない。図書館が開いていれば,提供できたWiFi環境を提供できなくなっている。
・民間の教育支援を受けられない低所得家庭に対する教育支援ができない。
・いつもにもまして,衛生的で,安全な場所が必要なホームレスに対してサービスができない。
記事では,将来の危機的状況において,セーフティーネットの役割を果たせるよう,準備する必要が述べられている。これらは日本においても同様だ。
さて,東京都内の図書館が1日閉館すると,どの程度の影響があるのだろうか。1日のサービスを数字で見ると以下のとおりである。
サービス | 件数 |
貸出点数 | 305,823点 |
予約受付数 | 74,869点 |
文献複写件数 | 18,759枚 |
参考業務受付件数 | 3,243件 |
* 2018年度の数値を365で除した
数字は東京都立図書館の「平成30年度 東京都公立図書館調査」のデータに基づく。1日,東京都内の図書館が閉館するごとに,30万点以上の貸出しの機会が失われているのである。アメリカと大きく異なるのは,電子書籍サービスが進んでいない点である。同調査によると,電子書籍を館外利用者に貸出している図書館はわずか4自治体しかない。今後の課題だ。
図書館が閉館していることの影響はこうしたことからも読みとることができる。