お話会をオンラインで実施できるか?

外国の公共図書館では,読み聞かせなどをオンラインで提供することが広がっている。このとき,問題となるのが著作権である。アメリカでは,このことは,フェアユースにより可能と考えられている(詳しくはこちらの記事)。また,オーストラリアでは,オーストラリア図書館情報協会(ALIA)が著作者,書店,出版社などと協定を結び,WHOがパンデミックを宣言している期間中,実施できるようになっている(詳しくはこちらの記事)。

これらでは,Facebook,YouTubeなどを活用し,収録した読み聞かせの動画を利用できるようにしている。利用者が資料にアクセスできないことを考慮すると,こうしたサービスには意義がある。

現時点で日本でこうしたサービスを提供することは可能か。絵本を読み聞かせる場合,絵本の著作者の権利(著作権)として,口述権(著作権法第24条)がある。また,それを録画しオンラインで蓄積提供する場合,複製権,公衆送信権(同法第23条)が関わる。著作権法第38条第1項の権利制限規定により,図書館内での読み聞かせは可能だが(口述権が制限),非営利無料など一定の制約のもとである。詳しくは日本図書館協会と権利者団体の手引きに書かれている。しかし,複製権,公衆送信権の権利制限規定はこの場合ないため,実施には著作者の許諾が必要になる。

現在(2020年4月14日)までのところ,図書館など社会教育施設に対して,文化庁より特段の方針は残念ながら示されていない。学校教育ではあるが,文化庁によるICT利用に対する特段の配慮要請に対して,前述したガイドラインを公表している一般社団法人日本書籍出版協会からは対応が表明されていない。また,日本図書館協会において方針は示されていない。多くの子供たちが自宅にとどまらざるを得ない中,こうしたサービスは強く求められているのではないだろうか。