ALAのアドボカシー

5月11日,アメリカ図書館協会(ALA)を含む多くの団体・企業等がIMLS(Institute of Museum and Library Services)を通じた図書館への20億ドル緊急援助を求める書簡を,上下両院に送った(記事)。図書館界はすでにCARES法により5,000万ドルの補助を得ているが,20億ドルはそれをはるかに上回る金額である。

その書簡(下院はこちら)に議員とともに名を連ねているのが,ALA以外に自治体,首長,教員等の全米の連合団体であり,さらにはBaker & TaylorやOverDrive等の民間企業である。その数,35団体にのぼる。仮に,日本図書館協会(JLA)が図書館への緊急援助を間もなく編成されるであろう補正予算で求めたとして,これほどの団体が名前を連ねるだろうか。

書簡では,援助を求める理由として,COVID-19により図書館の歳入が減少し,スタッフの解雇が生じていることを挙げている。そして,図書館サービス継続のために,財政的安定が不可欠と述べている。

具体的な数字も挙げられている。図書館は37万人を雇用し,年間40億ドル以上の資料購入費や10億ドル以上の施設整備費を支出していること,92%の予算が自治体から来ており,それがCOVID-19の影響で激減していること,アメリカ国民は年間13億回以上,来館していること,などである。

下院はAndy Levin氏, Don Young氏, Raúl M. Grijalva氏等が,上院はJack Reed氏, Susan Collins氏等の議員が中心となり,それぞれ101名,46名の議員が署名している。署名した議員は超党派であり,中には,史上最年少議員として話題になったAlexandria Ocasio-Cortez氏などの名前も見られる。

ALAはワシントンに公共政策・アドボカシー・オフィスを設置している。ここを通して議会に積極的な働きかけをしている。この書簡の取りまとめでも中心的役割を果たしたと推測される。記事によれば,ALAはさらに,図書館をCARES法に含まれる教育安定化基金の対象施設に入れるよう教育省に働きかけたという。

この事例で興味深いのは,多くの議員や有力団体がこうした趣旨に賛同していること,さらにこうした連携が事態の推移に合わせて迅速に行われていることである。日頃から連携のあることが推測される。さらに,ALAがこうした活動を積極的に情報発信している点である。情報発信によって,社会においてALAの存在感を高めることにつながるし,図書館界においてもALAへの求心力を高めることができるのではないだろうか。