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電子書籍利用急増のインパクト

海外で,COVID-19による図書館閉館により,電子書籍の貸出しが急増していると報道されている。

例えば,4月22日,BBCは,英国の公共図書館における急増を伝えている。記事ではいくつかの増加の数値が出ているが,最大で2倍である。5月8日のBurnabynowの記事では,Burnaby公共図書館で450%増だという。5月13日のLadysmith Chronicleによると,Vancouver Island librariesでは50%増だという。

これらはGoogle Newsで検索した記事のいくつかの例であるが,図書館が閉館し,物理的な図書を借りることができない中,電子書籍利用が増加するのは容易に想像できる。その程度は,図書館がそろえるコレクションや利用可能性(アベイラビリティレート)などによりばらつきがあるのも当然であろう。

では,これらの電子書籍貸出しは貸出し全体の中で,どの程度を占めるのだろうか。ここではアメリカの事例を見てみたい。少し古いが,米国博物館・図書館サービス機構(IMLS)の統計書(Public Libraries in the United States FISCAL YEAR 2016)を参考にする。2016年(FY)に,アメリカの公共図書館では,22億3千万点の貸出しをしている。国民一人あたりおおよそ7点弱である。

22億3千万点のうち,電子書籍の貸出点数は3億9千万点である。近年の方が電子書籍の貸出しは増えているかもしれないが,ここでは,この数値で話しを進めると,電子書籍の貸出しは全体の17.5%を占める。

仮に,COVID-19のもと,この数値が1.5倍になったとすると,電子書籍の貸出点数は,5億9千万点ほどになり,先程の貸出全体の22億3千万件を一定とした場合,26.2%に相当する。数値を2倍にすると7億8千万点で35%を占める。

この数値をどう評価するかである。特に,こうした新しい利用形態が「ニューノーマル」となったとき,物理的な図書の貸出しはどう位置づけられるのだろうか。

貸出数はかなり多い,と評価できるかもしれない。特に2倍と推定すると,そうである。貸出全体の1/3以上であり,4割も間近だ。利用可能な資料も実はかなり増えている。先ほどのIMLS統計によると,一人当たりの資料点数は図書が2.36点であるのに対して,電子書籍は1.29点まで増加している。ここから,電子書籍だけでも,一定の貸出しをまかなえる,という評価につながるかもしれない。

一方,それほどでもない,とも評価できるかもしれない。特に,1.5倍と推測した場合,そうである。まだ,1/4である。現在のような特異な状況下においても,この程度しか増加しないのであれば,物理的な図書へのニーズは依然高い,という評価につながるかもしれない。

「コロナ禍」以前の日常は戻らず,ニューノーマル,新しい生活様式が定着するともいわれている。図書館の利用方法も変わっていくのであろうか。