図書館協議会のよりよい運営のために(2)

4.情報公開

図書館協議会の情報公開の重要性はこれまで繰り返し語られてきた。平野は,議事録,報告書を公開することによって図書館協議会が実効あるものになると述べている(平野, 2007)。近年においては,図書館協議会の情報公開はかなり進んできた。筆者が関係している図書館協議会では,すべてで会議は基本的に公開(傍聴可能)である。また,多くで委員名簿,議事録,図書館評価結果,会議資料などについて図書館または自治体のウェブページで公開している。ただし,公開期間と公開場所には課題がある。前者の課題として,図書館協議会に限らないが,一定期間後,ウェブページから見られなくなることがある。時間が経っても見られるようにしたい。公開場所は,図書館ウェブページではなく自治体ウェブページでの公開だと,時期ごとに会議情報が整理されることが多く,開催時期を知らないと探せない。こちらも改善が必要だ。

情報公開が進むことで,図書館協議会の議論に影響が出ることもある。議事録に残ることから,とくに発言者が特定されるような場合に,発言に慎重になる委員が出てくる。市民の間で論争のあるテーマにおいては,特にそうしたことが生じやすい。その意味では自由な議論に多少のブレーキがかかることもあり得るが,やむを得ないことであろう。

5.事前の研修

「研修」というと大げさだが,図書館協議会の委員,とくに新任の委員には,初回の前,または初回時などに,図書館および図書館協議会について学ぶ機会を設けることが必要ではないだろうか。委員は多くの場合,図書館のことをよく知っているが,ときには何らかの事情により,よく知らない委員が選出されることもある。また,図書館はよく知っていても,図書館協議会のことは知らない委員もいる。さらに,前の期から継続する委員がいることもあり,そうした委員中心に議論が進められることがある。新しい委員は議論についていけず戸惑っている間に,数回過ぎてしまうということも多いように思う。

図書館員の伊藤(2000, p. 65)は,図書館のことを知らず,学習の示唆も与えられない委員が「ほとんどまともな発言をできない」場合,「そういう委員を責める前に懸命の努力を傾けるべきである。委員の力不足は図書館の怠慢と知るべし」と述べ,研修の必要性を指摘する。かつて図書館協議会委員のハンドブックを作っていた北海道図書館協議会連合会も,研修の必要性を指摘していたし(細谷, 2005, p. 13),嶋田(2005, p. 25)も,初回に条例,規則,法律,図書館の自由に関する宣言,図書館員の倫理綱領,竹内悊氏のエッセーなどを配布している。

新しい委員には,条例などの他に図書館の概略も伝えておきたい。また,とくに,図書館協議会の役割,運営,規則はしっかりと伝えておきたい。委員として期待されていることを明確に伝えることで,会議での的確な発言に結びつくはずである。図書館をよく知らない委員には,まずは,図書館を利用すること,自分なりに図書館の勉強をすること,まわりの人に図書館について聞いてみること,などを勧めたい。また,図書館協議会では,議論に貢献するような発言を期待したい。素人的な発言しかできないと思われるかもしれないが,利用経験や市民感覚に基づく意見は貴重である。図書館協議会にとって,教育委員会のレイマンコントロールとは異なるものの,一般市民の肌感覚に基づく意見は重要である。

6.議論のあり方

(1)ルーチンの議事と答申等の作成

図書館協議会に限らず多くの会議では,議事は報告事項と協議事項に分かれる。いずれになるかの絶対的な基準があるわけではないが,「聞き置く」ものは前者で,なんらかの意思決定をするものが後者と,とりあえずいえよう。どちらにするかは,通常,事務局が決めるため,本来,協議事項とすべきことが報告事項になっていれば,そこには事務局のなんらかの意思が働いていると考えるべきである。

 報告事項は,報告を受けて協議会として情報を共有することが中心である。期間中(年度)の活動実績,今後の活動予定(次年度の予定),新規サービス・取り組みの紹介,議会報告,人事,予算などである。報告事項に対して,委員から質問が出されることや要望が出されることがある。委員はこうした報告や,やり取りをとおして図書館への理解を深めていく。協議事項は,協議会として協議をして,何らかの意思決定をするものである。ただし,明確にひとつの結論を出す場合に限らず,意見を聴取するにとどまるものもある。図書館協議会が重要な役割を果たしてきたものとしては,新館構想,指定管理・委託,公共施設再編などが挙げられる。これらは,図書館法にいう「図書館の運営」に関わる重要な事項であり,図書館協議会に諮問することは法の求めることである。他には,基本的運営方針,図書館計画,子どもの読書活動推進計画,自治体の各種計画,図書館評価(第三者評価)などが協議事項となることが多いのではないか。

 平野(2007, p. 81)は,任期中の活動報告と提案事項を文書化し,事後に,検証することを提案している。図書館協議会のやり取りは,しばしば「言いっぱなし」になってしまいがちである。文書化することで,協議会として何を話し合ったかを確認することができるし,図書館にとっても参照することができるというメリットがある。

 こうしたルーチンの議事以外に,図書館協議会の中には,期をつうじて,ひとつのテーマについて協議をして,答申,提言,建議などとしてまとめるところもある。また,筆者は経験がないが,調査を行うことも期待される(塩見& 山口, 2009, p. 184)。答申は図書館から諮問があり,それを受けて検討される。提言,建議は形式としては協議会の意見表明であるが,図書館からテーマが示唆される(あるいは相談がある)こともある。一般に答申は行政において重く受け止められる一方,提言,建議はそれと比較すると劣るかもしれない。ただし,建議であっても教育長に報告され,主要事業の予算要求資料として活用されたとの報告があるように同じように扱われることもある(千葉, 2007, p. 83)。

 答申等を出す場合,その段取りや情報面での支援が課題である。諮問では,事務局の支援をある程度,期待できるが,協議会が主体となって提言などを行う場合は,委員長を中心にまとめていくこともある。手順としては,論点の設定,情報共有(フリートーキング)・ヒヤリング・視察,論点整理,骨子案まとめ,議論,提言のまとめ,といった流れであろうか。図書館によっては,コンサルタントと契約をして一連のプロセスをバックアップするところもあるが,多くの場合,事務局からの情報提供と委員の議論を中心にまとめられるように思う。委員の自主的な調査研究も期待されよう。

 平野は,答申や提言が「お蔵入り」にならぬよう,過去のものの検証を行うことを提案している(平野, 2007, p. 81)。答申,提言を実効あるものとする上で,また行政を牽制する意味でも重要である。(つづく)