書棚は6段目までが利用が想定されている図書が置かれており,それより上は「フェイクブック」である。ライトが効果的に使用されており,おしゃれな書棚が演出されている。さらに図書館の周りを取り囲むように書棚が設置されており,内側外側にフェイクブックが配置されている。書棚や平置きの棚では,図書の表紙が見えるような展示が効果的に用いられており,図書が魅力的に見えるようになっている。一方で,利用者が絶対に手を触れることのできないようなところにも利用用の図書が排架されており,細部まで設計が行き届いていないところも見られる。

蔵書数は,公式サイトでは7万点とされているが,数えた限りではフェイクブックをのぞくと3万点弱のように見えた。面積が2,800平米なので,贅沢な空間の使い方である。OPACは見当たらなかったので,資料管理がどの程度行われているかは不明である。背表紙に請求記号が貼られていたが,1段のラベルであり真剣に分類が行われている様子はなかった。資料は新しいものもあるが,全体にはあまり更新されていないような印象だった。貸出はせず,すべて閲覧用である。ジャンルは全ジャンルで,中には絵本,YA向け図書,雑誌,電子書籍もあった。電子書籍閲覧のためにタブレット端末が設置されていたが,閲覧者はほとんどいなかった。
来場者はどの程度,図書を読んでいるであろうか。2箇所で10分間ほど観察してみた。1箇所目は図書館の中央部で,雑誌が平置きされているところである。結果,5名(組)が何らかの形で,雑誌を手に取っていた。多くは長くても30秒程度,パラパラとめくると立ち去っていたが,ある高齢の男性はゴルフ雑誌を念入りに探して,それを席に持って行って読んでいた。全く利用されていないわけではない。2箇所目は,Teen Ager Literatureのコーナーである。日本で言うYAコーナー,ティーンズコーナーである。ここでは10分間の間,だれも書棚に手を伸ばす人はいなかった。ただ,別のタイミングでここに来たときには書棚の前で図書を読んでいる人がいたので,たまたまだったのかもしれない。

この図書館は,閲覧のみしかできず,レファレンス等も受け付けていない。利用者も真剣に図書館を利用しに来ているわけではない。ここをサードプレイス的機能を果たしうると論じる文献もあるが,そうした役割を果たしているとも思えない。商業空間に,図書館という文化イメージを組み込んだ施設に過ぎない。そのため,通常の公立図書館にとって,機能的な面で参考にできることは少ない。
ただ,施設の作りなどは参考にできるところはあるかもしれない。実際,金泳三図書館に行った際,ロビー階から3階までとどく大きな書棚が設置されていたように施設作りで参考にされているようである。また,「図書館」のイメージを戦略的に使うことも考えられるかもしれない。もちろん,図書館機能が空疎でそうしたイメージだけを強調していけば,そのイメージはすり切れてついには価値がなくなってしまうであろう。