行ったところ(3/26〜4/9)

永登浦区立ムンレ図書館(문래도서관)

2008年にできた図書館。建物の1階に入り口には受付があり,利用登録や返却,予約資料の貸出などを行っている。貸出は1人10冊まで,3週間。自動貸出機も設置されている。返却は,金泳三図書館と同様,わざわざ上のフロアまで行かなくても済むようになっている。こうしたスタイルの図書館は多い。1階は児童向けのエリアで,日曜日からか利用者が多い。2階には事務室があり,3階には一般向けの図書が配架されている。蔵書は6.6万点,貸出は18.2万点(2023年)で蔵書回転率が2.8。かなりよく利用されている。4階は2つのスペースに分かれていて,一方はPC不可の机だけが並ぶ部屋。もう一方はPCが利用できる部屋で,持ち込み用の席と備え付けPCの席があり,持ち込み用の利用者がやや多い印象。PC利用エリアではワード等の印刷も可能。基本的には席を予約してから使う仕組み。これも多くの図書館で導入されている。ほとんどの席が埋まっていた。5階には児童向けの洋書と雑誌が並び,さまざまなタイプの机が置かれている空間になっている。4階が静寂を保った集中エリアだとすれば,5階は家族やグループで来て,一緒に勉強したりできるスペースになっている。

永登浦区立思考工場図書館(영등포생각공장도서관)

2023年にできた比較的新しい図書館である。ムンレ図書館からもそれほど遠くない場所にある。1階はロビー階で,受付のカウンターが設置されている。2階と3階に図書室があり,1階から2階にかけては図書が面陳でディスプレイされていたが,フェイクブックだった。館内は快適な空間で,一定数の座席が用意されていて,勉強などをしている利用者の姿も見られた。3階は英語ライブラリーとされている。洋書は絵本や児童向けが中心だったが,他に児童向けのハングルの図書も多くあった。利用者は7〜8名ほどで,多くは子どもたち。熱心に読書をしていたが,ハングルの漫画を読んでいる子どももいた。英語の図書は,Gradeによって色分けされていた。蔵書は全体に少なくデータによると1.1万点だった。貸出は3.1万点(2023年)で,蔵書回転率は2.8と高かった。

銅雀区立サダンソルバッジ図書館(사당솔밭도서관)

ソウル特別市銅雀区にある公共図書館のひとつ。銅雀区には15の洞(町)があり,Wikipediaによると人口はおよそ40万人弱である。日本の田原市と姉妹都市になっている。ソウルの公共図書館は多くが委託運営となっているが,銅雀区の場合は銅雀文化財団が図書館運営を担っている。区内には11の図書館が設置されており,この図書館もそのひとつである。施設は2013年に開館した。傾斜地に建っており,入口は2階部分にある。建物全体は2階から4階までが図書館スペースになっていて,2階は児童用エリアである。3階はデジタル資料室になっていて,Wi-Fiやコンピュータの利用が可能。コンピュータで作業したものを備え付けのプリンターから出力もできるようになっていた。文化教室も同じフロアにあり,訪問時には英会話のクラスが開かれていた。4階には「空中庭園」があり,ここは開放的な雰囲気である。館内の各部屋には書棚と大きな机が置かれていて,利用者は学習や読書をしていた。また,廊下,階段と,各階の図書館部分はドアで完全に分離されていて閉鎖的な印象はある。開館時間は平日夜10時までである。韓国の多くの図書館は夜遅くまで開館している。月曜日は一般的に休館日となっている。

銅雀区立キム・ヨンサム図書館

写真撮影は禁止だったので,外観や内部の様子をここに載せることはできないが,施設は新しく興味深い図書館だった(雰囲気はこちらで1)。この図書館は,韓国第14代大統領のキム・ヨンサムにちなんで名付けられており,銅雀区の公共図書館のひとつとして,施設規模は区内で最も大きい。もともとは大統領による財産寄付によって独自に整備が進められる予定だったが,途中で費用面での課題が発生し,最終的に金泳三民主センターが8階のみを使用する条件で銅雀区に建物を寄付し,2020年に開館した。場所はサンド駅から徒歩5〜6分ほど。8階建ての新しい建物。開館時間は火曜〜金曜が9時から22時,土日は9時から17時で,月曜が休館日である。銅雀区の図書館事情を少し見ておくと,2023年時点で図書館は8館,1館あたりの蔵書数は約4.7万点,来館者は約15.9万人,貸出数は約8.1万点。人口規模が近い日本の北区では,図書館は14館,蔵書は1館あたり約9.9万点,来館者は16.7万人,貸出数は25.1万点という状況である。全般的に北区の方が多いが来館者数はほぼ同じである。ただし,銅雀区には公立の「ちいさな図書館」や私立の「小さな図書館」なども存在する。統計によると,ちいさな図書館は全体で38館あり,蔵書は17.6万点,貸出も17.6万点ある。キム・ヨンサム図書館は,ロビー階が入口で,吹き抜けが2階まで続いており,かなり開放的で,また高級感のある建物となっている。吹き抜けにはフェイク図書が展示されている。1階には児童フロアがあり,2階までは子どもの声がよく響が,2階はカフェがあり,テラス席もあるが,音を出すことを前提とした空間のため,話し声が気になることはない。児童フロアには遊具の置いてある部屋もある。図書の蔵書数は全体で約4.6万点と少ない。建物全体の面積が6,500㎡あることを考えると,かなり抑えめである。3階はデジタルメディアラウンジで,PC作業スペースとして整備されており,訪問時には20人弱が作業していた。自分のノートPCを持ち込んでいる人もおり,仕事や資格の勉強をしていた。この階には簡単な展示もあった。4階から上は図書が配架されているが,いずれも排架されている資料は少ない。各フロアにはレファレンスデスクがあり職員が1名配置されていた。各階の利用者はいずれも20名弱である。7階は半分がオフィス,もう半分が利用者スペースであった。全体として,図書館としては図書を非常に少なくしか排架していないという点で,興味深い施設だった。「図書のある空間」としての図書館とはやや異なり,作業をする,交流をする機能を重視している図書館という印象が強かった。

瑞草区立ヤンジェ図書館(서초구립양재도서관)2 

日曜日の16時過ぎに尋ねた。ヤンジェ駅からバスで10分ほどで,ヤンジェ川の前に位置しており,当日はちょうど桜祭りのようなイベントが開かれていたこともあってか,周辺はかなりにぎわっていた(図書館の雰囲気はこちら3)。館内に入ると非常に混雑していた。これまで訪れたどの図書館よりも多くの人がいて,「これ以上詰め込めないほど利用者を入れたら,こうなる」という印象だった。この図書館は2019年に開館した比較的新しい施設で,面積は2,985㎡。蔵書は約7.5万点で,来館者は32.2万人,貸出点数は17.3万冊で,蔵書回転率は2.3である。韓国の図書館としてはよく利用されている。プログラム参加者も6.1万人と多い。1日平均来館者は1,102人である。司書も正職員が8名在籍し,うち2名は1級司書とのこと。1階は入口と多目的ルーム,児童向け資料のフロア(館内の様子はこちらのブログに詳しい4)。入口付近には昨年,年間を通じて行った地元作家の展示を紹介する大きな図書のオブジェが置かれていた。そこには,図書館は本を探すだけの場所ではなく,私たちの想像を超えたものに偶然,出会える場所であると書かれている。2階には一般の書棚のほか,閲覧用の机,研究個室,個人ブースなど,多様な閲覧・調査用スペースが配置されている。ティーンズ向けの部屋や立ってPC作業ができるスペースまであり,この日はほぼすべての席が埋まっていた。1階・2階ともに書棚は低めのものがあり,斜めに配置するなどして,開放感を意識した設計になっている。3階にはカフェがあり,そのほかホールや文化教室(この日は閲覧席として開放),「ママの部屋」などもあった。地下1階と屋上は当日は利用できなかった。カウンターは1階に置かれており,職員3名で対応していた。返却や問い合わせがひっきりなしにあり,対応に追われていた様子だった。韓国に来てここまで人が多く,活発に使われている図書館を見るのは初めてだった。指標からも,年間を通して活発に利用されていることが分かる。

港南区立ケポハヌルクム図書館(강남구립 개포하늘꿈도서관) 

テチョン駅近くに2023年に開館した新しい図書館である。日曜日の午後ということもあってか,館内はかなりの混雑ぶりだった。この図書館の面積は1,994㎡だが,まだ新しいこともあり,蔵書は2.6万冊と少なめだった。ただし,2023年の年間来館者は28.8万人,貸出は13.3万点と非常に多く,プログラム参加者も年間4万人に達している。入口脇には大きな図書の展示コーナーがある。また,地域の子どもたちの絵をタイルに焼き付けたものも飾られていた。1階と2階は児童資料が中心となっている。他にLPやDVDを所蔵する視聴覚資料室もある。1階から2階にかけての階段は「ゆいの森あらかわ」のように階段部分が閲覧スペースになっている。3階は一般書のフロアで,閲覧席が多く設けられている。ブックカフェをコンセプトとしているようで,落ち着いた雰囲気になっている。1階から3階までは壁で仕切られた部屋はなく,開放的なつくりになっているのが特徴的だった。個室の閲覧席は設けられていない。各階のカウンターには2名の職員が配置されていた。日本語を話せる職員もいて,かつて日本で2年間働いていたとのこと(図書館ではないが)。書棚そのものは多かったが,開館からまだ日が浅いためか,それぞれの棚に本が半分程度しか入っていないところが多かった。4階にはサークルルーム(ボードゲームや読書会用),講義室,クリエイティブルーム,そしてクロマキー撮影用のメディアアートスペースなどもあり,かなり多機能である。全体として活発に利用され,よい図書館だと感じた。

gaga77page

望遠洞にある「ソウル型書店」のひとつ。地階にある,おしゃれな感じの独立系書店である。平日夕方に行ったところ,お客さんは5名ほどいて,若い女性ばかりだった。写真が載っている現地の人のブログはこちら。実際にはもっと薄暗かった。大きなソファやテーブルがあり,そこで読んでいるひともいた。著者によるブックトークなども時々行っている。本は,硬めの図書というよりはエッセイのようなものが中心のようだった。出版年は,手に取った限りでは新しめだった。ソウル型書店には数年前から継続して選ばれている。近くの旅行マウル(여행마을)にも行ったが,休みだった。ここもソウル型書店のひとつ。旅行関連の図書やグッズを扱っているようだが,見ることはできず。他にも「ソウル型書店」の多くは個人経営のところが多いようで,開店日や時間が限定されていたりするので,訪れる際は注意が必要だ。

大民文庫

近所のソウルデイックにある。場所はデパートの地下で,およそ1000㎡ほどの広さであろうか。入口には冠岳区の図書館との即時提供サービスの案内ポスターがあった。平日の昼間に行ったところ,スタッフは一人で,そのときのお客さんはゼロだった。後日,平日の18時過ぎに再び訪ねてみると,お客さんは2人であった。この規模の書店にしてはかなり少ない印象である。平置きで並べられた本は豊富で,所狭しと並べられていた。

プレロマ家族文庫

同じくソウルデイックにある。およそ20㎡ほどのこぢんまりとした空間で,子ども向けの絵本が面陳されている。親子が一緒に本の読み聞かせができる空間もある。木曜日と土曜日にはプログラムを実施している。英語の本を声に出して読むもの(対象は7歳)や,1冊の本を1ヶ月かけてじっくり読むもの(対象は小学校3~4年生)などである。ある意味で図書館の児童向けサービスに近い役割を果たしている印象である。休みの日などに子どもと一緒に本を楽しむには,よい場所だと感じた。

永豊文庫と教保文庫

シンリム駅前にあるタイムズストリームという商業ビルの7階に入っているに行ってみた。ビルにはナイキやサムソン,ロッテシネマなどイマドキのお店が集まっていて,書店自体もおしゃれな印象である。韓国でも有数の書店チェーンで,新刊が豊富に並んでおり,見やすいように排架されていた。お客さんもそれなりにいる。図書館との連携に関する情報は見当たらなかった。こうした大型チェーン書店との間ではあまり行わないのかもしれない。フロアの半分は文具や雑貨などを扱っていた。書店チェーンといえば,教保文庫も有名である。光化門本店に立ち寄ってみたが,巨大なフロアにお客さんもたくさん,本もたくさん,という感じだった。

コミックゾーン大林寺

こちらもシンリム駅近くにある書店。地下にある書店で,秋葉原っぽいというか,いわゆるオタク的な雰囲気の書店である。店内には世代的には高校生前後と思しき若者が10名前後いた。並んでいる本のほとんどは日本のコミックで,フィギュアやアニメグッズもフロアの半分程度を占めていた。書店というよりは,オタク向け複合ショップといった感じか。テーブルがあり,そこでは何人かがたむろしていた。漫画にはビニールがかけられており,立ち読みはできない。コミックの値段はだいたい1冊600円前後。

その日が来たら5

ソウル大学近くにある書店。ソウル市の「2024年ソウル型本屋」のひとつで,気になっていた書店である。フロア面積は意外に小さめで,どうやら2023年に移転した際に規模が縮小したようである。行ったあとに知ったのだが,1980年代の学生運動の時代に生まれたというこの書店は,その時代,大きな役割を果たしたようである6。人文社会系の硬派の本を中心に扱っており,以前は周辺にこうした書店がいくつもあったそうだが,今ではほとんど残っていない。書棚には1990年代の本もあり,新しい本だけを扱っているわけではない。著者を招いたイベントも開催している。最近はネット販売にも力を入れているようである。訪問したのは夕方で,たまたまソウル大学の学生アルバイトと店主が店番を交代するタイミングだった。店主は常連さんと楽しそうに話しており(話しかけられない!),店内では20代の学生風の若者が一人,立ち読みしていた。この書店には数百名の後援者がいて,後援者になると購入毎にマイルがたまるようである。店主が書店の歴史などについて話してくれ,その内容を学生さんが英語で通訳してくれた。彼自身が作った雑誌もくれた。優秀な学生だった。日本でこうした硬派な人文社会系の図書はどの程度,売れているのだろう。

ソウル市立ソウル図書館

ソウル市の中心に位置するソウル図書館は,もともとソウル市庁舎だった建物をリノベーションして,2012年に開館した図書館である。館内は中央部分が移動のためのスペースとなっており,左右に部屋が分かれて配置されている。訪れたのは平日の夕方だったが,全体的に利用者は多く,賑やかな雰囲気があった。1階は一般書のフロアで,かなりの冊数が揃っていた。蔵書冊数は54.5万点で,韓国国内では5番目の規模である。もう一方の部屋は障害者向けの資料室になっており,大活字本,拡大読書機,点字資料,さわる絵本などが揃っていた。さらに,手話用の部屋や対面朗読室(bookteller’s Room)も設けられていた。2階にはデジタル資料室と雑誌のコーナーがあり,反対側の部屋には一般書が並んでいた。デジタル資料室という名称だが,実際はPCが24台並ぶスペースとなっていた。3階はソウル資料室とソウル市の歴史に関する展示スペース。行政資料室は資料数が非常に多く,調査・研究にも対応できる充実した内容だった。併設のMayer Room(市長室)は雰囲気のある空間で,3つの部屋からなっており,一番奥は市長が使っていた部屋だある。展示はソウル市のデジタルアーカイブ資料をインタラクティブに体験できるもので,デジタル技術をうまく活用していた。4階はグローバルコレクションを集めた部屋で,各国大使館から寄贈された図書が壁際に排架されていた。全部で67か国から寄贈があり,これは図書館側が依頼して集めたものとのことだった。寄贈以外にも洋書や中国語,日本語の図書が揃っており,日本語資料はおおよそ3,500冊ほど。ChatGPTに関する図書もすでに並んでいた。職員によると,3ヶ月に一度リストを作成して購入しているという。対応してくれた職員は,ちょうど先週,日比谷図書文化館に行ってきたところだと写真を見せてくれた。各国語で書かれた韓国関連の図書をまとめた「コリアコレクション」もあり,日本語以外に,中国語,タイ語,フランス語,スペイン語,ドイツ語,ベトナム語,ロシア語,英語など多言語に対応していた。また,館内ではGwanghwamun(光化門)で実施される予定の「Seoul Outdoor Library」に関連した準備も進められていた。

봉천6동문고(ヘンウン洞住民センター)

以下は冠岳区にあるいずれも「小さな図書館」である。宿泊所に近かったので,平日夕方に行ってみた。この地区センターの2階にある図書室で,面積は56㎡。蔵書は6,618点,年間の貸出は3,969点,1日あたりの平均利用者は27名とのこと。プログラム参加者は年間1,036人。平日夕方に訪れたときには利用者は3名。母親が子どもに静かに本を読ませていて,もう1人は30代の男性が座って読書をしていた。受付には60代と見られる女性が一人いる。小さな図書館では,少数の職員とボランティアで運営されている。滞在中の30分間に,さらに4名が来館し,図書の返却や棚を眺めていた。児童書が中心で,蔵書は直近10年以内の出版物が多かった。館内には音楽が流れていた。

봉천7동문고(ナクソンデ洞住民センター)

こちらも地区センター内,4階にある図書室。面積は81㎡で,蔵書点数は9,130点,年間貸出は3,744点,1日あたりの平均来館者は14名。プログラム参加者は年間242人。滞在時間は20分ほどだったが,その間にいたのは,はじめから座っていた20歳くらいの若者2名のみ。2人とも本やパソコンに集中しており,会話は一切なし。所蔵資料のほとんどがコミックで,日本の漫画が中心。『ワンピース』や『鬼滅の刃』,高橋由美子の作品などが並んでおり,特に『鬼滅の刃』はすり切れるほど読まれていた。2冊以上のシリーズものだけでも300タイトルほどあり,コミック特化型の図書室といった印象だった。

인헌동 보물섬 작은도서관(インホン洞住民センター)

こちらも地区センター内に設けられている図書館で,面積は110㎡とやや広め。蔵書数は20,017点,年間貸出数は24,614点,1日あたりの平均来館者は128人,プログラム参加者は年間482人。前の2館と比較するとよく利用されている。訪れたのは夕方で,20分ほどの間に7名の利用者が訪れていた。館内にはそれ以前から6名の来館者がいて,それなりに利用されている印象。予約棚が設置されており,予約本を受け取りついでに,書棚を眺める女性の姿もあった。カウンターには2名のスタッフがいた。小さな図書館は,近年,特に私立のものが減少していたり,ソウル市の育成支援事業が縮小するなど,難しい状況にあるようである7

冠岳区立冠岳中央図書館

訪れたのは夜の20時半ごろ。図書館はソウル大学の近くにある。夜の図書館の雰囲気を見てみたいと思って訪れた。2階の入口付近には,ノーベル文学賞を受賞したハン・ガン氏を特集した展示があった。1階入口には図書館のさまざまな取組を紹介する立て看板が立っていた。2階と3階は通常の図書館。吹き抜けでつながっている。2階は柱を中心に書棚が放射状に並んでいる。書架にはあまり人がいなかったが,閲覧席には利用者数名が座っていて,何か作業していた。4階の閲覧コーナーは広々としており,落ち着いて作業できる空間になっている。最近改装したようである。閲覧席はかなり埋まっていた。全体として利用者の年齢層はやや高めで,読書をしたり,仕事をしていたりした。この図書館の図書の所蔵点数は17.1万点で,貸出は18.3万点,来館者は26.5万人。貸出点数よりも来館者数が多い。積層書架もあり手続き不要で出入りできるようになっていた。書棚の図書をめくってみると20年前の本も並んでいたが,よく利用されている様子だった。カウンターには老眼鏡なども用意されていた。全体的な印象としては,書棚が多く並んでいる点で日本の図書館とよく似ていて,手が行き届いた良い図書館だと感じた。日本では22時まで開館する図書館は少ないが,開館していれば,そこに自然と利用者が集まり,読書したり,仕事したり,勉強したりしている。職員の負担の問題はあるが,そうした図書館のあり方もありえるのかもしれない。

龍山区立青波こども英語図書館(청파 어린이 영어도서관)

設立は2010年。龍山区が運営する小さな図書館の一つだが,英語に特化している点で日本人の感覚からすると珍しい。韓国では近年,こうした図書館が普及しつつある。詳しくはカレイラ松崎8や千錫烈9などを参照のこと。こうした図書館ができた背景について,カレイラ松崎は英語教育における教育格差を解消するためと述べている。場所は雑居ビルの4階にあり,データ10によれば面積は256㎡,所蔵資料数は21,020点である。年間貸出数は14,895点であるため,蔵書回転率は1に満たない。1日の平均来館者数は33人で,プログラムの実施回数は266回,参加者数は4,198人である。資料利用と比較すると,プログラム参加者は多い。来館した際,職員は3人だった。当日,昼前に伺ったところ利用者は誰もおらず,学校が終わって以降,忙しくなるようである。英語の絵本,図書,CDなど多く揃っていて,資料以外には,プログラムを行う部屋があった。来館者は,親子で読み聞かせをしたり,英語プログラムに参加したりすることが多い。プログラムは50分で10,000ウォン(約1,000円)などで提供されている。英語の本を一緒に読んだり,ネイティブが読み聞かせをするような内容である。職員には,日本語を話せるスタッフもいて丁寧に説明してもらった。館内の様子はこちらのブログの方ががよく分かる11

  1. https://m.blog.naver.com/coom91/223775189780 ↩︎
  2. https://yangjae.seocholib.or.kr/LibFacility ↩︎
  3. https://m.blog.naver.com/wnsdlgusdlaka/223611851286 ↩︎
  4. https://m.blog.naver.com/joooosong/223812354099 ↩︎
  5. http://www.gnal.co.kr/shop/ ↩︎
  6. https://blog.naver.com/seoul_library/221711377317 ↩︎
  7. https://press.uos.ac.kr/news/articleView.html?idxno=13553 ↩︎
  8. https://repository.tku.ac.jp/dspace/handle/11150/11818 ↩︎
  9. 千錫烈. (2024). 教育時評 (309) 韓国の教育事情と学校図書館 (8) 釜山英語図書館: Busan English Library. 学校図書館, (886), 44-46. ↩︎
  10. https://www.libsta.go.kr/statistics/small/stat ↩︎
  11. https://m.blog.naver.com/angelkim73/221360012178 ↩︎