韓国の司書職制度

韓国の図書館制度においては,司書の配置に関して法律に基づいた明確な基準が設けられているなど日本と異なる制度となっている。ここでは,備忘のために概要をまとめておく。主に千錫烈1を参考にしている。

韓国の図書館法第43条1項は,文化体育観光部長官が,「図書館および文献情報に関する学歴や経歴を備えた者」に対して司書の資格証を発行し,これを管理するとされている。また,第45条1項は,図書館の運営に必要な司書を配置しなければならないことが規定されている。

司書資格は,図書館法施行令第32条別表により,1級正司書,2級正司書,准司書の3つに区分されている。取得学位や専門性に応じて整理されており,主に次のような基準がある。1級正司書は大学院で文献情報学や図書館学の博士号を取得した者,2級正司書は大学で文献情報学または図書館学を専攻して卒業した者,あるいは大学院で修士号を取得した者。准司書は,専門大学(短期大学)で文献情報学科を卒業した者,あるいは大学在学中に文献情報学や図書館学を副専攻で学んだ者である。日本の司書は,取得単位数等から考えると准司書相当であろうか。

この資格は,公共図書館に限らず,図書館法で定められたすべての館種で有効である。千によると4年制大学の文献情報学科は全国に33校,2年制の専門大学は7校存在するという。柴尾2によれば,現在ではほぼすべての大学で「文献情報学」の名称が使われているという。資格取得者の数は,千によると2023年は1級正司書が145人,2級正司書が2,466人,准司書が490人であったという。図書館法施行令33条別表5では,司書の基本配置数を4人と定めた上で,人口と面積に応じて加算することになっている。公共図書館あたりの人口が2万人増えるごとに,1人が加算されたりする仕組みである。

実際の配置状況はどうかというと,2023年の全国的データ3では公共図書館あたり4.6人(正規職員)であるが,配置基準の算定は複雑なためどの程度,充足しているかは分からない。非正規は別に1館あたり1.6人いるが,配置基準は正規職員を対象とし,この数値は算入されないと考えられる。2017年の研究4によれば,平均配置数は4.3人で,法定で求められる人数の充足率は18.2%にとどまっていたとされる。当時と比較して0.3人しか増加していないことから推測して,依然として司書を十分に配置していない図書館は多いと思われる。ちなみに,『日本の図書館』を用いて日本の公立図書館における配置人数を計算すると1館あたりは7.4人で多いが,正規職員の司書に限定すると1.5人と非常に少ない。

以上から,日本との違いとして,まず司書資格が館種横断的な資格となっている点が注目される。司書配置の数値基準が法的に明示されている点も注目される。また,資格が3つのグレードに分かれており,その内容が主に学位に基づいている点,特に正司書に関しては大学での専門教育以上を前提としている点も特徴である。配置の状況については,司書の数自体は日本の方が多いが,正規職に限定すると,韓国の方がだいぶ多い。

  1. https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/seisakukikaku/20241209sen.pdf ↩︎
  2. https://meiji.repo.nii.ac.jp/records/14027 ↩︎
  3. https://www.libsta.go.kr/statistics/public/main ↩︎
  4. https://doi.org/10.4275/KSLIS.2017.51.4.183 ↩︎