国立中央図書館による公立図書館支援

韓国では,公立図書館に対する支援が制度的に整えられている。国家図書館委員会の存在や図書館発展総合計画の策定,文化体育観光部による政策推進など,中央政府による支援の枠組みが存在する。加えて,国立中央図書館による技術的・実務的な支援も行われている。国立中央図書館は,図書館法第19条により文化体育観光部に属することが定められており,第20条でその業務が規定されている。ここでは,国立中央図書館による公立図書館に関係する支援事業について紹介する。

まず,図書館システム(ILS)関連の支援がある1。国立中央図書館は,KORMARCや典拠ファイルの作成・提供を通じて,資料組織化の基盤を提供してきた。また,公立図書館の資料管理システムであるKOLASⅢ(名称は変遷している)を開発してきた点も重要である。これは,日本のNECや富士通が提供する図書館システムに相当するもので,資料管理や電子図書館機能などの機能を持っている。現在ではオープンソースとして公開されており2,他のシステムとの連携も可能である3。他にもRFID技術を用いた図書館管理の技術的開発と支援も行ってきた。

次に,全国図書館資料共同活用サービス「Chaekbada(本の海サービス)」がある45。2010年から始まったこのサービスは,図書館に所蔵していない資料を,利用者自ら他館から取り寄せることができるものである。資料を検索するサイトもある6。国立中央図書館,地域代表図書館,公立図書館,小さな図書館,大学図書館,学校図書館などが参加可能で,現在では,全国1,300館以上がこのネットワークに加わっている。利用するには,自らが利用登録する自治体の図書館で事前に手続が必要であり,往復の宅配料が発生するが,自治体によっては補助もある。さらに,「図書館相互利用サービス(책이음サービス)」も展開されている。これは,全国どこの公立図書館でも一つの利用券でサービスを受けられるもので,2008年から運用されている。現在,2,700館以上がこのサービスに参加している。所蔵情報を検索できるサイト7もある。こちらも利用するには事前に手続が必要である。

また,「図書館情報ナウル」と呼ばれるビッグデータ関連サービスも提供されている8。全国の公立図書館から収集されたデータを経営や選書に活用できる。図書館は,蔵書や貸出などの内部データと,オンライン書店や行政が公開しているデータなどを組み合わせて分析できる。また,研究者や民間事業者などによる分析も支援もしている。そのための分析ツール「Rader」(Rベースのもの)も提供されており,回帰分析やクロス分析,ネットワーク分析といった多様な処理が可能である。日本では,『社会教育調査報告書』について,個票は提供されていない。『日本の図書館 統計と名簿』はオープンデータとして公開されているが,直近5年間のものはオープンデータではない。BIツールのような分析ツールも日本図書館協会からは提供されていない。

こうした支援策を俯瞰すると,政策的な支援は中央政府レベル(国家図書館委員会や文化体育観光部)で行われており,国立中央図書館の支援は技術的・実務的な部分に重点が置かれているように見える。どちらも公立図書館の運営,サービスにとって重要な基盤となっており,それぞれが補完しあう形で図書館サービスの充実を支えている。

  1. https://www.nl.go.kr/NL/contents/N50107060000.do ↩︎
  2. https://current.ndl.go.jp/car/41463 ↩︎
  3. https://books.nl.go.kr/PU/contents/P30101010000.do ↩︎
  4. https://current.ndl.go.jp/car/31787 ↩︎
  5. https://books.nl.go.kr/PU/contents/P10400000000.do ↩︎
  6. https://books.nl.go.kr/PU/contents/P10100000000.do ↩︎
  7. https://books.nl.go.kr ↩︎
  8. https://www.data4library.kr/bigdata ↩︎