ポーランド公立図書館の電子書籍提供

調査によると,ポーランドでは電子書籍を読む人は20人に一人と少ない1。図書館においても電子書籍の提供は限定的であり,台湾の図書館と対照的である。もっとも,台湾でもあれだけのタイトル数と利用しやすい仕組みを整えているにもかかわらず,利用は紙の図書に遠く及ばない。現状,貸出密度1から2程度が最大なのかもしれない。

ポーランドの図書館に行くと大抵,ポスターで電子書籍の宣伝がされている。ただし,その提供方法は日本とは異なっている。基本的に,SpotifyやNetflixと同様のサブスクリプション方式が採用されている。図書館がアクセス権を購入し,それを1ヶ月などの期間で利用者に配布するのである。プラットフォーム側では,図書館専用のサブスクリプションプランを用意している。利用者は毎月,決められた期日以降に図書館に希望するプラットフォーム名を伝えて,早いもの順にアクセス権を取得する。

提供されるコンテンツは,電子書籍のほか,オーディオブック,シンクロブックなどである。シンクロブックとは電子書籍とオーディオブックが一緒になったものである(おそらく自動音声読み上げ)。代表的なプラットフォームは,Legimi,Empik Go,IBUK Libraなどである。図書館では,県単位などでコンソーシアムを組んでいる。たとえば,基礎自治体のラシンではマゾフシェ県でLegimiとIBUK Libraのコンソーシアムに入っている。コンソーシアムを組んで購入数を増やすことで契約価格を抑えることができる。ポーランドではKindle以外にもinkBookなどの電子書籍リーダーが普及している。Legimiなどのプラットフォームはこうした端末に対応している。図書館によっては,これらの端末を貸出している。

文献によれば,2022年時点の情報だが,例えば100件分のサブスクリプションを月額で契約する場合,単価は16.79PLN(約670円)である2。仮にこれを100人に配布すると,6.7万円になる。日本ではシステム使用料,選書の手間,電子書籍の価格の高さ,2年間で買い直す必要がある,など各種課題があるが,ポーランドの方式であれば,1ヶ月ごとのライセンス配布数を検討するだけである。ただし,利用できる利用者は制限される。

ポーランドの図書館は電子書籍に対する警戒感が強いような印象がある。ある図書館では,ロゴを始めぬいぐるみなど,図書館のいたるところにパンダの姿が見られた。理由を尋ねたところ,「絶滅危惧種のパンダと,電子化によって存立の危機にある図書館は似ているから」と,冗談かどうか分からない説明が返ってきた。ただ,「ともに危機は乗り越えたようだ」とも語っていた。話は戻るが,そうした意味では,こうした契約モデルは図書館にとってもちょうどよいのかもしれない。

  1. https://lustrobiblioteki.pl/2025/04/41-polakow-czyta-ksiazki-najnowszy-raport-o-stanie-czytelnictwa/ ↩︎
  2. https://bibliotekapubliczna.pl/artykul/Ksiazki-elektroniczne-w-bibliotekach-publicznych/12114 ↩︎