行ったところ(6/4〜)

ミンスク・マゾビエツキ市立図書館

ワルシャワから東に約30キロのところに,ミンスク・マゾビエツキという町がある。ベラルーシの首都もミンスクだが,そことは別である。ここはマゾフシェ県の一つで,人口約4万人のグミナ(基礎自治体)である。ミンスク郡には13のグミナがあるが,ミンスク・マゾビエツキは最も人口が多く,郡の中心地である。図書館はミンスク・マゾビエツキ駅から歩いて15分ほどのところにある1。分館が一つある。ワルシャワのような集合住宅の中でなく,独立した建物となっている。入口脇には「ブックマート」と呼ばれる機械が置かれており,予約資料の受け取りや図書の返却が可能である。開いた図書の大きなオブジェもある。館内に入ると左手に大人向けの貸出室があり,文学書,一般書,オーディオブック,コミックなどが並んでいる。蔵書量はそれなりに多い。一度部屋を外に出て奥に進むと,児童向けの部屋がある。部屋の至るところに桜の造花が飾られている。これは以前日本文化のイベントを行った際に作られたものとのことである。また,ここに来て気づいたのだが,図書館内にぬいぐるみやパンダをモチーフにしたものが多く置かれている。そもそも図書館のロゴにもパンダが使われている。図書館員に尋ねたところ,「絶滅危惧種のパンダと,電子化によって存立の危機にある図書館は似ているから」とのことであった。児童室の蔵書は絵本のほか,読みものがレベル1から4に分けられている。レベル4はほぼYA向けの内容である。こうしたレベル分けは,他の児童向け図書館でも同様であった。子ども用のオーディオブックも充実している。奥にはお話会などができる部屋があり,テーブルやソファーも置かれている。また,児童向けの一般書が分類順に並んでいた。建物の1階(日本的には2階)には「閲覧室」がある。閲覧席は比較的多く,利用者が一人いてスマホで話をしていた。ここに図書が並んだ一画があったが,これらはこれまで講演会などで来館した作家の著作とのことだった。数が非常に多い。ガラス張りの小部屋も併設されている。イベントなどで活用しているとのことであった。2階には「教育図書館」(Biblioteka Pedagogiczna)があるが,今回は行っていない。

この図書館は1999年以降,ミンスク郡と協定を結んでおり,郡の図書館の役割も果たしている。図書館の定款(条例)にもこのことが規定されている。この図書館ではその活動内容をブログで公開している2。郡の図書館の役割は図書館法にも定められているが,ブログから具体的な活動を知ることができる。最近の活動を見てみると,クリスマス会のような郡内図書館職員の親睦イベント,アクセシビリティや図書館見学など職員研修,会議での課題共有やデータ分析の共有,そして地区内外の図書館に関する情報提供などであった。また,図書館の公開情報(BIP)には「活動報告(Sprawozdanie z prowadzonej działalności)」が掲載されており3,郡との関係が分かる。2024年の報告を見ると,郡との最新の協定が,前年の2023年1月に締結されている。ここから,協定は適宜更新されていることを確認できる。郡からの補助金は担当職員の給与の4分の3,出張費,研修会開催費用などである。このようにグミナは,協定実施のために担当者を置き,郡はその人件費と関連経費を負担している。2023年の活動報告では,他の郡に比べて予算が少ないとして,郡に対して増額が要望されている。グミナからの業務報告は毎年,郡に提出される。

オホタ地区学術図書貸出閲覧室11

ワルシャワのオホタ地区にある「学術図書貸出閲覧室11」に行った。行ったのは夕方である。大きな通りから少し奥に入った集合住宅2階にある。入口近くにカウンターがあり,女性の図書館職員が二人である。訪問時には利用者はいなかったが,しばらくするとやってきた。全て男性で,読みもの中心の図書館とは異なる利用者層である印象を受けた。利用者はカウンターだけで用事を済ませていた。一人ひとりが職員と比較的長く話をしていたため,待っている利用者もいた。会話の内容は分からなかったが,雑談でなくサービスに関するやり取りのようだった。この図書館には文学書はない。入口側にはPC席,ソファ,そして閲覧席が10席ほどあり,DVDやレファレンスブックも並んでいた。奥の書棚には一般書が排架されていた。

図書館ではStefan Żeromskiという人物の紹介が多くなされていた。Żeromskiはポーランドの作家・劇作家で,作品のひとつ『灰』はアンジェイ・ワイダによって映画化されている。階段の壁には作品や生家などがポスターで紹介されていた。図書館の入口前では著作や関連する本が展示ケースに入れられていた。この展示は,2025年のPatron of the Yearと関連している。Patron of the Yearとは,毎年ポーランドの国会がその年に顕彰すべき人物を複数選出するもので,図書館や文化機関などでは,年間を通じて顕彰する。歴史的人物や作家などが選ばれている。2025年はŻeromski氏の没後100年にあたるため選ばれたようである。顕彰の方法は図書館によって異なる。『Biblioteka Publiczna』という雑誌では,著作やプロフィールの展示,外部ゲストによる講演会,作品の読み聞かせ,映画会,パトロンをテーマにした脱出ゲームなどが提案されている4。国に貢献した人物を称え,その功績を未来へと伝えることを目的としている。

  1. https://mbpmm.pl/ ↩︎
  2. https://bibliotekiwpowiecieminskim.wordpress.com/ ↩︎
  3. https://mbpminskmazowiecki.bip.e-zeto.eu/index.php?type%3D4%26name%3Dvb%26func%3Dselectsite%26value%255B0%255D%3Dmnu43%26value%255B1%255D%3D2%26value%255B2%255D%3Dselectsite%26value%255B3%255D%3D0%26value%255B4%255D%3D0 ↩︎
  4. https://bibliotekapubliczna.pl/artykul/Patroni-i-patronki-roku-co-warto-zorganizowac/13577 ↩︎