行ったところ(6/4〜)

SOPOTEKA(メディアライブラリ/文化ギャラリー)

ソポトは,ポーランド北部のポモージュ県にある自治体で,人口は約4万人である。観光都市でもある。少し歩くと,グダニスク湾,そしてバルト海が見える海岸がある。市内には図書館が7館ある。蔵書は全体で約16万点,年間の来館者は累計8万人,イベント参加者は1万人である。行ったのは2015年に開館したソポト駅の駅舎にある分館である。図書館は駅舎の3階に入っており,全面ガラス張りで開放感があった1。窓際には絵画も飾られていておしゃれである。ここにはなんと日本語をしゃべれる図書館員がいる! 韓国や台湾では,日本語がしゃべれる図書館員に会ったが,ポーランドで会ったのは初めてである。図書館は,日本の図書館に似ていて,開放的である。ポーランドでよく見るような部屋に分かれているわけではない。館内には,比較的多くの利用者が滞在している。ワルシャワであまり見ない光景である。ポーランドでは公共図書館に滞在する習慣がないのかとも思ったが,そうではなく,条件がそろえば,市民は図書館に滞在することが分かる。テーブル席では,友人と勉強している人,PCで作業している人,一人で本を読んでいる人,ボーとしている人など,さまざまである。ちなみに図書館は試験勉強の利用を歓迎している。児童コーナーにはディスプレイがある。その近くには,ゲームのソフトが置かれていた。図書館員に聞くと,PlayStationがあり,館内で利用できるとのことだった。奥にはホールのようなスペースもある。ここもカーテンはあるが壁などで仕切っていない。日本のマンガが多い。また,「Meetings with Japan」と題されたプログラムも定期的に開催されている。訪問した月には百人一首講座が予定されていた。興味深かったのは,個人用ブースである。一人用のブースになっており,集中して作業できるようになっていた(下の写真)。図書館では,コワーキングスペースとしての活用を歓迎している。集中してPC作業をしたい人にとってありがたい空間である。特に,タッチ音などは日本でも問題になることがある。とはいえ,館内は適度にざわざわ感があるので,ここでは自分の出す音にそれほど気を遣わなくてもよいかもしれない。カウンターでの話し声や,資料を棚に戻す音,貸出時の「ピッ」という音などが,一番奥のホールまで聞こえる。こうしたざわざわ館が,居心地のよい空間づくりに貢献しているような気もした。図書館で実施するプログラムを調べてみると,さまざま活動していることが分かる。読書会,短編映画の鑑賞会,ボードゲームイベント,絵画教室などなど。新しい図書館ではあるが,館内に図書館員の手が行き届いており,いろいろな工夫が凝らされていた。

グダニスク市立マンハッタン図書館

訪問時,利用者は多く,館内も貸出も,どちらも利用者で混雑していた。来館者は少し以前のデータだが1日1,200人から1,300人である2。利用者は若者が多く,学生と思われる人が目立った。図書館の周辺にはグダニスク大学を始め高等教育機関が多くあり,学生の利用が中心であるという。以前は,大学の図書館が貧弱だったため,もっと学生の利用が多かったという。閲覧席には,ポーランド以外にルーツを持つと思われる利用者も見られた。そうした利用者にとっても居心地のよい図書館なのだろう。入口の右側が閲覧室で,席はほぼ埋まっていた。ここだけドアで区切られている。それ以外は,ちょうど直前に行ったソポトの図書館同様,基本的にワンフロアで空間を分けていない。フロアの中心に視聴覚資料があり,その周りに多くの図書が排架されている。ドラムパッドや電子ピアノなども置かれており,イヤホンをして演奏できる。そして,壁沿いに多くの閲覧席がある。ガラスの壁にはレール敷きの目隠しがあり,自分の空間を作ることができる。カウンターには3人の職員が常駐しており,その後ろには予約資料が並んでいる。カウンターの奥に児童コーナーがある。当初は子ども用の「プレイグラウンド」として位置づけられていたが,他の空間と区切られていないため,音の観点で少し問題があったとのことだった。「図書館は静かであるべき」という規範はやはりあるためである。そのため,リデザインして小さな椅子やソファなどを置き,親子で読書するスペースに変更したという。このスペースはイベントにも使われている。図書館では,かなり頻繁にワークショップや講演会を開催している。その際は,書棚を移動させ,椅子を出す。コミックコーナーもあり,日本のコミックが6つの棚分置かれていた(日本語原書のマンガもある)。かなり多い。他にもアメリカンコミックやポーランドのコミックもある。これらのコーナーは人気があるという。興味深かったのは,図書館脇にあるデッドスペースのようになっていた通路を,図書館の閲覧スペースとして活用している点である。そこは,吹き抜けとなっているため,商業施設の音がかなり聞こえる。しかし,12ほどある机はすべて埋まっていた(訪問時は平日午後)。にぎやかな場所で,会話をしながら作業したいというニーズにぴったりのようである。音があることで,逆に好まれるスペースが図書館にもある点が興味深い。

開館時間は月曜日から土曜日まで9時から21時までとポーランドの図書館としては長い。土曜日も開館している。開館時間は商業施設側との取り決めとのことである。そのためスタッフの勤務はシフト制になっている。商業施設は日曜日は閉店している。これは法律による規制である。当然,この図書館もそうだが,多くのポーランドの図書館(商業施設も)が日曜日に閉館するのは,その背景としてカトリックの価値観が関係しているのではとのことだった。日曜日は安息日であり,休みをとるわけである。以前,大学にしっかりした図書館がなかった時代に,分館のひとつが日曜日に短時間だけ開いていたが,今では大学図書館も整備され,そうした分館はなくなった。図書館職員は17名である。17名のうち,LIS(図書館情報学)を大学で学んだのは7名で,10名は学んでいない。但し,ほとんどがライブラリアンとしての雇用である。分館では,LISの知識よりも,コミュニケーション能力や,利用者の知的好奇心を刺激する力,イベントの企画力,などが重要になるとのことだった。このあたりは他の図書館で聞いた話とも共通する。ポーランドの図書館員の中には,職員の専門性に関する基準緩和を,前向きに捉えている職員も多い。目録のようなLISの知識が必要になる業務について尋ねたところ,分館での作成は行わず,本部で一括して作成しているという。人材育成については,OJTでステップバイステップに進めることが中心である。それに加えて,テーマごとの研修プログラムがメインライブラリーで開催されており,図書館員は必要に応じてそれに参加しているという。

商業施設にうまく溶け込み,活発にサービスを提供していることが印象的だった。利用者も,デッドスペースに作られた空間などを始め,自分の状況に合わせて図書館を使えるようになっている点も興味深かった。

グダニスク市メインライブラリー

この図書館を含む図書館システムの正式名称は,「グダニスク市ジョセフ・コンラッド・コジェニオフスキ記念県立・市立公共図書館」である3。グダニスクは,ドイツ語でダンツィヒとも呼ばれる。映画『ブリキの太鼓』の舞台でもある。ポモージュ県に属しており,その県庁所在地がグダニスクである。その関係で,この図書館は市立図書館でありながら,県の図書館の役割も兼ねている。これは,図書館法第20条2項が,県庁所在地にある図書館は協定により県の役割を兼ねることができるとしていることに依る。県と市の協定は2013年に結ばれている。図書館長は,ポーランドで著名な詩人,Jarosław Zalesiński氏である。グダニスク市の人口は50万人,ポモージュ県は230万人ほどである。2025年の歳入は,市からが42.9%,県からが52.5%,延滞料などを含む独自収入が4.6%である4

市内には本館を含めて図書館が30館ある。本館は,グダニスク中央駅からそれほど離れていない市庁舎などが並ぶ地域にある。図書館は事務部門とともに,大きなビルに入っている。事務部門は部門ごとに部屋が分かれているのが新鮮である(写真の部屋番号はその一部)。日本のような「大部屋」で仕事するスタイルとは全く異なる。日本の自治体関連の文献を読んでいると,日本の行政機関の特徴として「大部屋」という言葉が出てくるが,その意味を改めて認識できる。建物に入ると,すぐに図書展示スペースがある。15世紀のインキュナブラと思われる資料が2点展示されていた。市立図書館でこのような資料を所蔵しているのは驚きである。左側には,比較的大きな閲覧室があり,レファレンス資料などが並んでいる。ポーランドの閲覧室らしくクラシカルでおしゃれである。平日午前中だからか利用者は一人だった。1階(日本的に言えば2階)に上がると,児童図書館がある。YA向けの図書も同じスペースにある。日本の図書館と比較すると,YA向けの蔵書がかなり充実している。子ども向けの棚やソファなども工夫されている。学校訪問があり,廊下は中学生ぐらいの生徒たちで混雑していた。0階に戻り,建物の右側へ行くと,視聴覚資料の部屋と一般用の貸出室がある。貸出室には,とぎれずに利用者が来ていた。新しい図書も多く並んでいた。書棚を眺めている利用者の姿もあった。OPACを検索すると,書誌レベルで月ごとの貸出回数が棒グラフで表示されていて面白い。グダニスクの図書館では,市内の図書館の資料を予約することが可能であり(フィクション以外),さらに,トリミア都市圏であるグダニスク,ソポト,グディニャ間で相互貸借も実施している。それを超える館(たとえばワルシャワなど)からの借用も可能だが,利用は館内閲覧に限られる等の制限がある。全体として,事務部門が部門ごとに分かれた部屋で仕事をしていたのが印象に残った。このこと自体はここに限ったことではないが,県の役割を担っており事務部門も多いことから,その部屋の数の多さが印象に残った。

ラチンスキー図書館 分館 3

訪問したのは平日の午後である。この図書館は集合住宅の中にある。図書館に入るのが難しい。そもそも集合住宅の,どの入口から入ればよいのかも分からない。どうやら,ここが入口だということが分かったが,そこには鍵がかかっている。どういうわけかと思っていると,機械で番号を押しロックを解除しなければならない。その説明がポーランド語で書かれているので苦労した。この日の開館時間は14時半までであった。日本ではこうした早い時間の閉館はあまりないが,こちらでは予算の関係か,そうした図書館を見かける。図書室は3部屋あり,職員は一人であった。利用者はいなかった。女性がいた部屋は主に歴史関連の蔵書が並んでいた。もうひと部屋あり,そこには文学の図書が所狭しと並んでいた。全体として,この図書館の蔵書は文学書と歴史書が中心で,この2ジャンルで大半を占めていた。奥には閲覧室もあった。全体に,ワルシャワでよく見るタイプの分館と似ていた。ここで確認できたのは,ポズナンでも,分館レベルは小規模であることと,蔵書は文学書や歴史書など人文学を中心としていることであった。

ラチンスキー図書館 分館 20

こちらはポズナン市の図書館のうち,子ども向け分館の一つである。集合住宅の中にある。平日午後に行ったが,利用者はいなかった。図書館の中は,大きく2つの部屋に分かれている。左側の部屋には,奥の方に絵本が並んでおり,小さい子向けのコーナーである。右側は,YA向けコーナーで図書が対象年齢ごとに並んでいた。種類は多くないがコミックもあった。右側にも部屋はあるが,どちらかというと事務用のスペースのようだった。ラチンスキー図書館では,5月に「ムーミンと過ごす家族の時間」という企画を複数館共同で開催していた。この分館でもその一環として,ムーミン関連のイベントを3日間にわたって行っていた。それで思いだしたのだが,メインライブラリーを訪れた際,著者であるTove Jansson氏からの直筆の手紙が展示されていた。図書館員とやりとりがあったようである。

ミンスク・マゾビエツキ市立図書館

ワルシャワから東に約30キロのところに,ミンスク・マゾビエツキという町がある。ベラルーシの首都もミンスクだが,そことは別である。ここはマゾフシェ県の一つで,人口約4万人のグミナ(基礎自治体)である。ミンスク郡には13のグミナがあるが,ミンスク・マゾビエツキは最も人口が多く,郡の中心地である。図書館はミンスク・マゾビエツキ駅から歩いて15分ほどのところにある5。分館が一つある。ワルシャワのような集合住宅の中でなく,独立した建物となっている。外の入口脇には「ブックマート」と呼ばれる機械が置かれており,予約資料の受け取りや返却が可能である。開いた図書の大きなオブジェもある。館内に入ると左手に大人向けの貸出室があり,文学書,一般書,オーディオブック,コミックなどが並んでいる。蔵書量はそれなりに多い。一度部屋を出て奥に進むと,児童向けの部屋がある。部屋の至るところに桜の造花が飾られている。これは以前日本文化のイベントを行った際に作られたものとのことである。また,ここに来て気づいたのだが,図書館内にパンダをモチーフにしたものが多く置かれている。そもそも図書館のロゴにもパンダが使われている。図書館員に尋ねたところ,「絶滅危惧種のパンダと,電子化によって存立の危機にある図書館は似ているから」とのことであった。児童室の蔵書は絵本のほか,読みものがレベル1から4に分けられている。レベル4はほぼYA向けの内容である。こうしたレベル分けは,他の児童向け図書館でも同様であった。子ども用のオーディオブックも充実している。奥にはお話会などができる部屋があり,テーブルやソファーも置かれている。また,児童向けの一般書が分類順に並んでいた。建物の1階(日本的には2階)には「閲覧室」がある。閲覧席は比較的多く,利用者が一人いてスマホで話をしていた。ここに図書が並んだ一画があったが,これらはこれまで講演会などで来館した作家の著作とのことだった。数が非常に多い。ガラス張りの小部屋も併設されている。イベントなどで活用しているとのことであった。2階には「教育図書館」(Biblioteka Pedagogiczna)があるが,今回は行っていない。

この図書館は1999年以降,ミンスク郡と協定を結んでおり,郡の図書館の役割も果たしている。図書館の定款(条例)にもこのことが規定されている。この図書館ではその活動内容をブログで公開している6。郡の図書館の役割は図書館法にも定められているが,ブログから具体的な活動を知ることができる。最近の活動を見てみると,クリスマス会のような郡内図書館職員の親睦イベント,アクセシビリティや図書館見学など職員研修,会議での課題共有やデータ分析の共有,そして地区内外の図書館に関する情報提供などであった。また,図書館の公開情報(BIP)には「活動報告(Sprawozdanie z prowadzonej działalności)」が掲載されており7,郡との関係が分かる。2024年の報告を見ると,郡との最新の協定が,前年の2023年1月に改訂されている。ここから,協定は随時更新されていることを確認できる。郡からの補助金は担当職員の給与の4分の3,出張旅費,研修会開催費用などである。このようにグミナは,協定実施のために担当者を置き,郡はその人件費と関連経費を負担している。2023年の活動報告では,他の郡に比べて予算が少ないとして,郡に対して増額が要望されている。グミナからの業務報告は毎年,郡に提出される。

オホタ地区学術図書貸出閲覧室11

ワルシャワのオホタ地区にある「学術図書貸出閲覧室11」に行った。行ったのは夕方である。大きな通りから少し奥に入った集合住宅2階にある。入口近くにカウンターがあり,女性の図書館職員が二人である。訪問時には利用者はいなかったが,しばらくするとやってきた。全て男性で,読みもの中心の図書館とは異なる利用者層である印象を受けた。利用者はカウンターだけで用事を済ませていた。一人ひとりが職員と比較的長く話をしていたため,待っている利用者もいた。会話の内容は分からなかったが,雑談でなくサービスに関するやり取りのようだった。この図書館には文学書はない。入口近くにはPC席,ソファ,そして閲覧席が10席ほどあり,DVDやレファレンスブックも並んでいた。奥の書棚には一般書が排架されていた。

図書館ではStefan Żeromskiという人物の紹介が多くなされていた。Żeromskiはポーランドの作家・劇作家で,作品のひとつ『灰』はアンジェイ・ワイダによって映画化されている。階段の壁には作品や生家などがポスターで紹介されていた。図書館の入口前では著作や関連する本が展示ケースに入れられていた。この展示は,2025年のPatron of the Yearと関連している。Patron of the Yearとは,毎年ポーランドの国会がその年に顕彰すべき人物を複数人選出するもので,図書館や文化機関などでは,年間を通じて顕彰する。歴史的人物や作家などが選ばれている。2025年はŻeromski氏の没後100年にあたるため選ばれたようである。顕彰の方法は図書館によって異なる。『Biblioteka Publiczna』という雑誌では,著作やプロフィールの展示,外部ゲストによる講演会,作品の読み聞かせ,映画会,パトロンをテーマにした脱出ゲームなどを提案している8。国に貢献した人物を称え,その功績を未来へと伝えることを目的としている。

  1. https://www.mbp.sopot.pl/ ↩︎
  2. https://bibliotekapubliczna.pl/artykul/Kultura-w-swiatyni-handlu-z-biblioteka-do-ludzi/6181 ↩︎
  3. https://wbpg.org.pl/ ↩︎
  4. https://bip.wbpg.org.pl/o-nas/ ↩︎
  5. https://mbpmm.pl/ ↩︎
  6. https://bibliotekiwpowiecieminskim.wordpress.com/ ↩︎
  7. https://mbpminskmazowiecki.bip.e-zeto.eu/index.php?type%3D4%26name%3Dvb%26func%3Dselectsite%26value%255B0%255D%3Dmnu43%26value%255B1%255D%3D2%26value%255B2%255D%3Dselectsite%26value%255B3%255D%3D0%26value%255B4%255D%3D0 ↩︎
  8. https://bibliotekapubliczna.pl/artykul/Patroni-i-patronki-roku-co-warto-zorganizowac/13577 ↩︎