カウンターに座っている図書館員には話しかけづらいが,書架などに出ていると声をかけやすいというのは,よく言われる。このことは,実際に多くの図書館員が経験していることではないだろうか。こうしたことを考慮して,カウンターの外でレファレンスを受け付ける「Roving reference」のような取り組みも行われてきた1。
Sello図書館では,そもそも図書館員がいわゆる典型的なカウンターに座っていない。「Info」と書かれたカウンターが,一人用の小さなサービスポイントになっている。写真は左が1階のもの,右が2階のものである。これは端末など必要な機器だけが設置されているだけのシンプルなものだ。こうした一人用カウンターは,ストックホルム市のホーンストゥルス図書館でも見た。北欧の図書館では,他にもこのような事例は多くあるのだろう。そして,図書館員は常にここにいるわけではない。Sello図書館では,こうしたサービスポイントは館内にいくつかあるが,唯一,児童コーナーのサービスポイントには,職員が常駐していた。
では,図書館員がサービスポイントにいないとき,利用者はどう図書館員とコミュニケーションをとるのか。Sello図書館では,カウンター近くに「Call for help」と書かれた機械があり,液晶画面のボタンを押すと,職員と話すことができる。特別の機械ではなく電話でもよいと思うが,ここでは職員と話す特別の機械がある。職員は肩から黒いバックをかけておりそこにスマホが入っている。
では,図書館員は何をしているのか。私が滞在していたときには,返却機を使って図書の仕分けをしている姿を多く見かけた。ほかにも,メーカースペースの対応や,予約資料のピックアップなど,多様な業務を担っているようであった。RFIDの導入によって,貸出・返却・予約などの処理を利用者が自分で行うようになっている。そのための職員をカウンターに常駐させる必要も薄れてきている。そうした変化に,この仕組みはうまく対応しているように見えた。技術の活用によって業務の在り方が変化し,それに応じてうまくサービスをデザインしている点が興味深い。


- https://en.wikipedia.org/wiki/Roving_reference ↩︎