サンクチュアリ図書館

最近,英国で排外主義的なデモが行われ,10万人を超える人々が参加したという。デモでは反移民,反イスラムを叫ぶ声があがっている。英国には,当然のことながら移民やイスラム教徒の人々が多く暮らしている。そうした人々にとって,このような排外主義的な動きはうれしいものではない。

先日,ロンドンのワンズワース区の図書館に行くと,「サンクチュアリ図書館」の認定を受けるための計画が進められていた。また,サザーク区の図書館ではすでに認定を受けていた。ブライトン・アンド・ホーヴでは,ジュビリー図書館が英国で2番目に認定を受けたのち,最近では自治体の全図書館が認定を受けていた1。ここでは,サンクチュアリ図書館について簡単にまとめておく。

サンクチュアリ図書館は,難民,亡命申請者,移民,庇護を求める人々を地域で支援するCity of Sanctuary UKという団体が中心となって推進している取り組みである2。Library Connectedもパートーナーとして参加している。この団体は,自治体,学校,大学などさまざまなセクターごとにネットワークを形成しており,図書館もその一つとしてある。そこでは,活動の基本方針や実践事例をまとめた「リソース・パック」も用意している3

認定はCity of Sanctuary UKが行う4。申請する場合,図書館は「学ぶこと」「埋め込むこと」「共有すること」という3つの条件をクリアする必要がある。それぞれの概略を述べれば,庇護を求めるということの意味を「学ぶこと」,図書館内のサービスや活動に包摂的な取組を「埋め込むこと」,ビジョンや成果を「共有すること」である。単に計画を立てるだけでなく,実際にこれらの取組を実践していることが申請の要件である。また,認定を受けた後も継続的な活動が求められる。

実際にどのようなサービスが提供されているか。たとえばサザーク区のウェブページでは,身分証なしでの利用登録,英語クラス(第二言語話者向け:ESOL)の提供,庇護を求める人に役立つ情報の提供,多言語(ペルシア語,アラビア語,アルバニア語,パシュトゥー語,スペイン語)の資料提供,そして出会いや活動の場の提供などが挙げられていた5。こうしたサービスは,庇護を求める人々にとって日常生活の支えとなるだけでなく,地域社会とのつながりを築く機会にもなりうる。図書館がサンクチュアリ図書館の認定を受けることで,庇護を求める人々が安心して利用してもらえる場となるわけである。

  1. https://www.brighton-hove.gov.uk/libraries-leisure-and-arts/libraries/how-our-libraries-support-people-seeking-sanctuary ↩︎
  2. https://libraries.cityofsanctuary.org/ ↩︎
  3. https://cdn.cityofsanctuary.org/uploads/sites/157/2021/11/COS-Library-resource-pack-Low-res-web-version-SINGLE-PAGE-11-10-21-1.pdf ↩︎
  4. https://lib4refugees.splet.arnes.si/files/2022/03/COS-Library-resource-pack-low-res-website-version-13-5-20.pdf ↩︎
  5. https://www.southwark.gov.uk/culture-and-sport/libraries/libraries-of-sanctuary ↩︎