図書館プログラム設計のための方針

英国や北米の図書館と同様に,オーストラリアの図書館も多様なプログラムを実施している。そうした取組を方向付けるものとして,エルサム図書館が属するヤラ・プレンティ地域図書館(Yarra Plenty Regional Library: YPRL)では,「YPRL Programming Framework 2021-2025」(フレームワーク)という文書をまとめている1。コレクションの収集について収集方針があるように,プログラムについても方針を明確にすることは望ましいことであろう。その方針に基づいて実施することで,取組にも一貫性が生まれる。ここでは,このフレームワークの内容を紹介したい。

まず「戦略との整合性」では,フレームワークが図書館の計画である Library Plan 2021-2025 と整合することが述べられている。また,加盟する3つのカウンシルの計画とも一致していることが確認されている。つまり,実施されるプログラムは,これらの計画を実現するための手段として位置付けられている。

続く「背景」(context)では,プログラム設計の際の指針が示されている。そこでは,プログラムが地域社会との関わりや充実,つながりを生み出すこと,図書館空間を活性化することが述べられている。そのうえで,創造的かつ革新的であること,地域のニーズに応えること,地域に焦点を当てること,公的資金を最大限活用すること,外部機関と連携すること,読書や学習を支援すること,地域に変化をもたらすこと,継続的に改善すること,などが示されていた。

次に10の柱(stream)がまとめられている。具体的なプログラムは,必ずこのいずれかの柱と結び付けられる。柱の内容は,つながりの創出,創造的な取組,幼児期のリテラシー,家族で楽む,健康的な生活,テクノロジー(STEMなど)の学び,ライフスキル(金融リテラシーやビジネスなど),地域と家族の歴史,地元の作家,スモールビジネス支援である。かなり具体的に内容を方向付けるものであることが分かる。実際にYPRLで実施予定のプログラムを見ると,すべてに「カテゴリ」としてこの10の柱のいずれかが示されている。例えば,3月3日にエルサム図書館で開催された「50代以降のフィットネス」は,「健康的な生活」に分類されていた2

さらに,これらの柱がSDGsとどのように関係しているかも整理されている。あわせて,評価を定性的・定量的に行うべきとされている。定性的評価としては利用者から聞いたストーリーや事例,定量的評価としては参加者数やコレクション利用などが挙げられていた。単なる実施件数ではなく,成果を多面的に捉えようとしている。

最後の「目標と行動」では,具体的な実施方針が三つに分けて示されている。第一は「バランスのとれたプログラム」である。そのために,各図書館は四半期ごとに10の柱すべてにわたるプログラムを実施すること,継続的に評価を行うこと,可能な場合は共同でプログラムを設計すること,図書館計画との整合性を保つことが求められている。第二は「すばらしい連携・協力を探す」であり,全図書館間での連携や,新規で革新的なパートナーの探索が挙げられていた。第三は「組織と職員の能力を向上する」であり,分館の職員にリーダーシップの機会を与えることや,プログラムに関する学びの機会を設けることが示されている。これらはプログラム編成の具体的な指針として重要である。

日本でも,これまで事業としてお話会などが行われてきた。しかし海外ではそれ以外のプログラムも活発である。文部科学省の社会教育調査報告書などを見ると,日本でも図書館内で行われる事業は近年増加している。ただし,何を行うべきかという方向性は必ずしも明確ではないように思われる。また,最終的に読書や図書に収斂すべきという規範も強い。このフレームワークを見ると,読書やリテラシーを核のひとつに据えつつも,健康,経済,テクノロジー,地域づくりなどへと活動の幅が広がっていることが分かる。プログラムを単発の企画ではなく,戦略的に設計し,地域の発展に寄与しようとしていることが分かる。

  1. https://yprl-filestore.s3.ap-southeast-2.amazonaws.com/policies/Programming+framework.docx ↩︎
  2. https://www.yprl.vic.gov.au/events/ ↩︎