オーストラリア,ビクトリア州の公共図書館職員の採用等について,図書館員から聞いたことや関連情報から整理しておきたい。あくまで備忘のためである。また,ALIAの関連文書も見ておきたい。
まず採用である。職の空席が出た場合,市などが図書館を直接運営している場合は,基本的に市の人事部門が図書館と調整しながら採用を行う。一方,図書館法人が運営している場合は,法人が独立して採用を行う。例えばホワイトホース・マニンガム図書館法人には人事に関する文書があり,そこでは採用はCEOが行うこと,外部に対して公募すること,図書館職員にも募集を通知すること,選考委員会を構成して書類選考と面接を行うことなどが定められている1。内部から当然に採用するわけではなく,外部にも広く募集をかけて採用をすることが分かる。実際にPublic Libraries Victoriaのウェブページには採用情報が多く掲載されている2。また,職にはBANDという等級が設定されており,それに応じて求められる責任,職務内容,資格,給与が定められている。採用情報にもそれが示されている。
次に管理職としてどのような人が採用されているかである。いくつかの図書館では,CEOの新任者をウェブページなどで紹介している。そこで経歴を見ると,図書館学校を卒業し図書館の勤務経験を持つ職員が就く場合もあれば,行政の幹部職員としての経験を持つ人が就任する場合もあった。例えばヤラ・プレンティー地域図書館では,退任する図書館長は図書館界で経験を積んできた人物であったが,新たな図書館長は行政の幹部職員経験者であった。必ずしも図書館出身者に限られず,図書館外の経験を持つ人に任されることもあることが分かる。
これに関連して,ALIAは「上級図書館情報サービス職の指名」という文書を出している3。ALIAは図書館学校の認証を通じて図書館専門職への参入資格を定めている団体である。そのため,専門的な職に任命される職員については,原則としてそうした資格が求められるようにすることが重要であると述べている。そのうえで,上級の図書館情報サービス職には,関連する資格,知識,リーダーシップの資質,スキル,業界経験の組み合わせが必要であるとしている。ここでは様々な要素を勘案して採用することの必要性を述べている。ただし,文書全体からはライブラリアンとしての資格や経験を重視しているとも読み取れる。
次に専門職についてである。オーストラリアの図書館では,ALIAが認証した図書館学校を卒業していることが,原則としてライブラリアンになる条件である。したがって,働きながらそうした図書館学校に通ってライブラリアンの資格を取得することも多い。また,図書館としてもそうした学びを支援することがあるとも聞いた。具体的には一定時間の学習休暇(study leave)を認めたり,修了を条件に学費を一部補助したりすることがある。ただし,仕事との両立はかなりたいへんそうであった。
また,図書館学校の卒業生のみが専門職になれるかというと,やや微妙な側面もある。最近の図書館職場では,目録の担当者を置かないこともあるし,プログラム・コーディネーターのように,伝統的なLIS教育よりも別の専門性が求められる職も出てきている。そのため図書館情報サービスの職の求人であっても,図書館学校の卒業を要件としないもの,あるいは条件としつつ,それと同等の能力証明でも可とする例がある。そして最終的な採用は人物本位で判断されることもあるようであった。なお,ライブラリアンの人数は統計として把握されていない。このことと関連して,ALIAでは「図書館・情報サービス職の任命に関する声明」を出している4。そこでは,図書館などの組織が専門的資格を必要とする職を特定すること,そしてそうした職の募集においては職務記述書に資格要件を明示することを求めている。
次に雇用形態である。ビクトリア州の統計では,職員はフルタイム職員,パートタイム職員,臨時スタッフ(Casual staff)の三つに分けて人数が示されている。別に示されているFTE換算の数値はフルタイムとパートタイムが合算されているが,そこからパートタイム職員の平均労働時間を推定することができる。それによると,パートタイムはフルタイムの平均53%ほど働いており,おおむね半分程度であった。同様に計算すると,臨時スタッフはFTE換算で平均11.4%しか働いていない。このことから臨時スタッフは極めて短時間しか働いていないか,人材の流動性が高いことになる。
オーストラリアでは社会全体で近年,臨時スタッフが増加傾向にあると言われている。給与について見ると,パートタイム職員の時給は正規職員と同等である。一方で臨時スタッフの給与は正規職員より25%上乗せされている。ただし仕事があるときのみ雇用される形であり,身分は不安定である。ALIAもこの問題について声明を出している5。そこでは,パートタイム職員には年金,有給休暇,病気休暇,長期勤続休暇などを通常の雇用条件の職員と比例配分して適用すべきこと,恒常的な職については臨時スタッフではなくフルタイムまたはパートタイムとして雇用すべきこと,臨時スタッフはあくまで一時的な仕事に限るべきことなどが述べられている。臨時スタッフの問題は日本と似ているところもあるが,日本では低賃金が主な問題として語られるのに対し,オーストラリアでは雇用の不安定さに焦点が当てられているようであった。
- https://www.wml.vic.gov.au/files/assets/public/v/1/reports-plans-and-policies/pol-18-69[v4]-recruitment-and-selection-policy.pdf ↩︎
- https://www.plv.org.au/careers/ ↩︎
- https://read.alia.org.au/senior-library-and-information-services-appointments ↩︎
- https://read.alia.org.au/alia-statement-library-and-information-services-staff-appointments ↩︎
- https://read.alia.org.au/alia-supplementary-statement-about-casual-work-library-and-information-sector-australia, https://read.alia.org.au/alia-statement-non-standard-employment ↩︎