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NZ Wellington(3)

ウェリントン市立図書館の閉館中のサービスを紹介してきたが,この図書館がすぐれていのは,オンラインで提供しているコンテンツを魅力的に見せる力のあることだ。

多くのコンテンツが提供されても,どのような映画,音楽,図書を読めばよいか途方にくれる人がいる。ウェリントンの図書館では,そうした「迷える利用者」を救うため,”StayAtHomeFest 2020″を開催している。これは,簡単に言えばブログである。コンテンツに詳しい図書館員による資料案内である。

どのような「お祭り」(Fest)が行われているか。以下は紹介されているテーマの一例である。

  • ミュージックドキュメンタリー(ヨーヨー・マ,ミック・ジャガーなど)
  • コメディー映画(伊丹十三「タンポポ」など)
  • 有名デザイナーのドキュメンタリー(クリスチャン・ディオールなど)
  • 漫画家のドキュメンタリー(ジュリアン・タマキなど)  などなど

これらの紹介では,単にドキュメンタリーや映画だけが紹介されているわけではない。例えば,「タンポポ」なら,映画を見てお腹が空いたら,としてOverDriveやBorrow Boxのたべもののカテゴリの電子書籍サイトにリンクを張ってあったり,ジュリアン・タマキのドキュメンタリーであれば,その漫画へのリンクがはられたり,といった具合だ。ライブラリアンが,映像,音楽,電子書籍に目配りしながら,ハイカルチャー,サブカルチャーを横断して紹介できるのは,コンテンツに対する深い理解があるからに他ならない。日本の図書館員でも,こうしたことのできる人は多くいるのではないだろうか。

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NZ Wellington (2)

ウェリントン市の図書館が提供する閉鎖中のサービスの紹介を続ける。

Beamafilm,Kanopy:Beamafilmは,映画,ドキュメンタリーなどを提供するビデオストリーミングサービスである。オセアニア地域で制作された作品が多く含まれている。個人で契約する場合は5.99NZドルかかるが,図書館の利用券があれば無料である。KanopyもBeamafilm同様,ビデオストリーミングサービスである。

Teen’s eReading Room:オーバードライブ社の電子書籍ライブラリーから,ティーンズ向けの選書を行っているサイトの案内である。アクセスしたときにはちょうど,日本のコミック『かぐや様は告らせたい』がトップページに掲載されていた。

Kids eReading Room:上のTeen’s eReading Roomと同様のもので,こちらはより小さな子供向けの電子書籍ライブラリーである。

Naxos Jazz Library,Naxos Music Library,Naxos Video Library:日本でも導入している図書館があるが,ナクソスの音楽ストリーミングサービスである。

Libby,OverDrive,BorrowBox:各種の電子書籍サービスである。オーディオブックも多く提供されている。提供点数は,それぞれ,50,000点,50,000点,3,500点以上とされている。

PressReader,RBdigital:新聞,雑誌のオンラインサービスである。前者はニュージーランドを含む60以上の言語の新聞,雑誌を読むことができる。日本のものは29紙誌あり,新聞では当日のThe Japan News by The Yomiuri Shimbunを読むことができる。

ここまで調べてきて,ふと,これらは無料なのか疑問に思ったので,料金を調べてみると,特に料金がかかるとは書いていない。ベストセラーの図書やDVDなどは1週間,10日間などで,4NZドルあるいは5NZドルかかるが,ストリーミングサービスなどには特にそうした記述は見られない。

つづく。

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NZ Wellington (1)

海外の図書館で,閉館中,どのようなサービスが提供されているか。ここでは,ニュージーランドのウェリントン市の図書館サービスを紹介する。ここはニュージーランドの図書館協会であるLIANZAのウェブページでInnovative Approachesとして紹介されている。

ウェリントンはニュージーランドの首都で人口は郊外を含めおおよそ40万人である。図書館は2020年3月22日から閉鎖されている。市全体では13の図書館ある。

ここのページに自宅からアクセスできる図書館サービスの案内が載っている。以下,順番に見ていく。

MANGO:これは,オンラインの言語学習システムで,70以上の言語が学べる。個人で利用する場合,7.99NZドルかかるが,図書館のカードがあれば無料で利用できる。

Lynda.com:こちらはオンライン学習サイトで,ソフトウェア開発などが中心のようである。毎月支払いで2,990円かかるが,図書館のカードがあれば無料である。

Archives online:ウェリントン市アーカイブズが提供するサイト。ウェリントン市アーカイブズは1840年以降の歴史を収集しており,それを検索できる。public libraryで検索すると多数ヒットする。以下は,1966年のウェリントン公共図書館のオープン時の写真である。

Copyright Attribution:Wellington City Council, photographer A K Bristow, Copyright License:CC-BY

(Copyright Attribution: Wellington City Council, photographer A K Bristow, Copyright License: CC-BY)

 つづく。

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お話会をオンラインで実施できるか?

外国の公共図書館では,読み聞かせなどをオンラインで提供することが広がっている。このとき,問題となるのが著作権である。アメリカでは,このことは,フェアユースにより可能と考えられている(詳しくはこちらの記事)。また,オーストラリアでは,オーストラリア図書館情報協会(ALIA)が著作者,書店,出版社などと協定を結び,WHOがパンデミックを宣言している期間中,実施できるようになっている(詳しくはこちらの記事)。

これらでは,Facebook,YouTubeなどを活用し,収録した読み聞かせの動画を利用できるようにしている。利用者が資料にアクセスできないことを考慮すると,こうしたサービスには意義がある。

現時点で日本でこうしたサービスを提供することは可能か。絵本を読み聞かせる場合,絵本の著作者の権利(著作権)として,口述権(著作権法第24条)がある。また,それを録画しオンラインで蓄積提供する場合,複製権,公衆送信権(同法第23条)が関わる。著作権法第38条第1項の権利制限規定により,図書館内での読み聞かせは可能だが(口述権が制限),非営利無料など一定の制約のもとである。詳しくは日本図書館協会と権利者団体の手引きに書かれている。しかし,複製権,公衆送信権の権利制限規定はこの場合ないため,実施には著作者の許諾が必要になる。

現在(2020年4月14日)までのところ,図書館など社会教育施設に対して,文化庁より特段の方針は残念ながら示されていない。学校教育ではあるが,文化庁によるICT利用に対する特段の配慮要請に対して,前述したガイドラインを公表している一般社団法人日本書籍出版協会からは対応が表明されていない。また,日本図書館協会において方針は示されていない。多くの子供たちが自宅にとどまらざるを得ない中,こうしたサービスは強く求められているのではないだろうか。

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図書館閉館の影響

Library Journal誌にMeredith Schwartz氏による「COVID-19の教訓」というコラムが掲載されている(April 2020, vo. 145, no. 4)。

記事では,これまで図書館はセーフティーネットの役割を果たしていたが,その役割が果たせなくなっていることが述べられている。以下はその例である。

・学校教育が遠隔教育にシフトする中で,31%がブロードバンド環境がない。図書館が開いていれば,提供できたWiFi環境を提供できなくなっている。
・民間の教育支援を受けられない低所得家庭に対する教育支援ができない。
・いつもにもまして,衛生的で,安全な場所が必要なホームレスに対してサービスができない。

記事では,将来の危機的状況において,セーフティーネットの役割を果たせるよう,準備する必要が述べられている。これらは日本においても同様だ。

さて,東京都内の図書館が1日閉館すると,どの程度の影響があるのだろうか。1日のサービスを数字で見ると以下のとおりである。

サービス件数
貸出点数305,823点
予約受付数74,869点
文献複写件数18,759枚
参考業務受付件数3,243件

* 2018年度の数値を365で除した

数字は東京都立図書館の「平成30年度 東京都公立図書館調査」のデータに基づく。1日,東京都内の図書館が閉館するごとに,30万点以上の貸出しの機会が失われているのである。アメリカと大きく異なるのは,電子書籍サービスが進んでいない点である。同調査によると,電子書籍を館外利用者に貸出している図書館はわずか4自治体しかない。今後の課題だ。

図書館が閉館していることの影響はこうしたことからも読みとることができる。

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特措法と東京都の要請の整理 no.3

今回,東京都は「特措法によらない協力依頼を行う施設」にも要請した。そこに1,000平米以下の図書館が含まれている。具体的には,「同1,000平方メートル超の施設に対する施設の使用停止及び催物の開催の停止要請(=休業要請)の趣旨に基づき、適切な対応について協力」とされていた。

このように,今回,東京都内すべての図書館に対して要請と協力依頼が行われたことになる。

ここまでの議論でいくつか確認をしておくと,まず,特措法施行令でいう「図書館」は図書館法上の図書館,すなわち,公共図書館を指すと考えられるが明確ではない。また,1,000平米超は「要請」,以下は「協力依頼」であり,いずれも強制力はなく,違反に対する罰則もない。

こうした要請にしたがうこと,つまり図書館の閉館は必要であろう。しかし,今後,次第に図書館の活動をもとに戻していくことが求められる。図書館関係者は,図書館に求められる社会的役割・期待を重く受け止めるべきである。そして,活動をもとに戻していくために,国,都道府県,自治体,さらに社会の動きをしっかりモニターしつつ,準備をすすめる必要がある。

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特措法と東京都の要請の整理 no.2

上記告示により,都道府県知事は特措法第45条などに基づく各種措置が可能になった。東京都では,4月10日,第19回東京都新型コロナウイルス感染症対策本部会議で「新型コロナウイルス感染拡大防止のための東京都における緊急事態措置等」が示された。ここでは,医療機関への通院,食料の買い出し,職場への出勤など,生活の維持に必要な場合を除き,原則として外出しないことを要請した。また,同法第24条第9項(以下参照)に基づき、施設管理者もしくはイベント主催者に対し、施設の使用停止もしくは催物の開催の停止を要請した。第24条第9項は,第45条と比較して私権制限に,より抑制的である。

9 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。

発表された休止を要請する施設等は新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(以下特措法施行令)第11条に該当するものである。第11条には第1項第10号として「十 博物館、美術館又は図書館」が挙げられている。なお,同条は「第十一条 法第四十五条第二項の政令で定める多数の者が利用する施設は、次のとおりとする。」とあるように本来は特措法第45条に基づく要請対象施設である。 図書館部分の要請内容は以下のとおりである(図書館部分のみ)。

施設の種類要請内容内訳
集会・展示施設施設の使用停止及び催物の開催の停止要請(=休業要請)博物館、美術館又は図書館、ホテル又は旅館(集会の用に供する部分に限る。)* 床面積の合計が1,000平方メートルを超えるものに限る。

  東京都の要請はさらにあるが,つぎの記事で。

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特措法と東京都の要請の整理 no.1

東京都内の公共図書館では,緊急事態宣言や自治体からの要請により閉館に至った。このことについて,制度的な整理をしておきたい。ここでは,まず,国の動きについて。

2020年4月7日に新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)第32条第1項(以下参照)(以下特措法)に基づき新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態が発生した旨が政府対策本部長(内閣総理大臣)により宣言(告示)された。措置を実施すべき期間は4月7日から5月6日で,区域は,埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県,福岡県である。

第三十二条 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。
一 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間
二 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域
三 新型インフルエンザ等緊急事態の概要
* 条文中の( )内は除く

なお,図書館との関係では,文部科学省総合教育政策局地域学習推進課が「社会教育施設において行われるイベント・講座等の開催に関する考え方について(令和2年3月21日時点)」を発出していることを付言しておく。実際には2020年2月下旬ごろから図書館では閉館や事業縮小が見られるようになっていた。これを受けた東京都の対応について,次に述べる。

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感染症対策指針

日本の図書館では,近年,各種の危機対応への取り組みが進んできた。しかし,感染症に対する取り組みは十分ではなかった。今後,図書館は,今回のような事態を踏まえ対策を準備していく必要がある。ここでは,アメリカ図書館協会のPandemic Preparednessに掲載されている事項を参考に,指針のあり方の論点を整理してみた。

以下では,ALAが挙げた指針に含めるべきトピックである。また,それぞれについて,日本の文脈での論点を整理した。

  • 図書館を閉館する場合の基準
    日本では,感染症のため閉館することはこれまで想定してこなかった。こうした場合の規程を今後設ける必要があるのか,設ける場合,どのようなレベルの規程とするか(図書館条例,運営規則,施行規則,スタッフマニュアル),どのような内容とするか。
  • 病気休暇,給与,在宅勤務に関する図書館スタッフの方針
    図書館スタッフが在宅勤務する場合の方針を設けるのか,設ける場合,どのような規定とするのか。
  • 社会的距離の基準
    図書館内において社会的距離を確保するための手立てとして,どのエリアを対象とするのか(閲覧席,事務室など),入館者の人数制限をするのか,そのためのサインを設置するのか。
  • 実施する事業の中止基準
    おはなし会,対面朗読,映画会,各種講座などについて,どのような場合に中止とするか,どのような場合に再開するのか。
  • 設備の消毒
    どの範囲(トイレ,ドアノブ,電話,キーボード,カウンターなど)を,どのように消毒するか。
  • 長期休館中の各種対応
    施設管理者への対応,返却ポストの対応,会計処理などはだれが,いつ対応するか。
  • 連絡・広報
    自宅にいる職員と連絡はどのようにとるのか,利用者へのコミュニケーションはどのようにとるのかなど。

こうした論点を指針に落とし込む場合,当然,日本の法令,省庁によるガイドライン等を踏まえることになる。例えば,総務省が4月6日付けで「新型コロナウイルス感染症の大規模な感染拡大防止に向けた職場における対応について」を発出している。今後,日本図書館協会などが指針の雛形を作ることも期待さよう。

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ウィルスへの対処 no.3

資料自体の消毒はどうするべきか。ここでも,American Libraries誌におけるLara Ewen氏による”How to Sanitize Collections in a Pandemic“を紹介しながら考えたい。

記事では,図書館の資料は基本的に傷みやすいことから,溶剤などによる消毒は望ましくないと述べられている。

しかし,ポリエステルまたはポリエチレンで包まれた図書にはそうした対処は可能であるとも言及している。日本の図書館で使われている図書を覆うカバーの多くがそうしたものであれば,少なくとも「外側」について消毒が可能となる。

ただし,外側を拭くだけでは,ウイルスを完全に除去したとはいえないことに注意が必要とも述べている。資料内部のウイルスを完全に除去できないためである。

紫外線については,その照射強度が強いため,資料を傷める可能性が指摘されている。また,全てのページを照射することは,現実には難しいことを考慮する必要も指摘されている。

以上,記事を紹介してきたが,全体を読んだ印象としては,資料の消毒には限界があること,ウイルス除去には時間の経過が有効であること,資料を痛めないよう十分な配慮をすること,が強調されていたように感じる。図書館が資料を将来に向かって蓄積保存する役割を考慮すれば,資料がいたむような手段は用いるべきではない,という考えが見られる。