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図書館スタッフの解雇

2020年5月21日のデジタル版Library Journalにアメリカの図書館におけるスタッフ解雇の記事が載っている(「パンデミックによる緊縮財政で図書館の一時帰休,解雇が増加」)。コロナウイルス感染拡大が長期化する中で,図書館スタッフの解雇が進んでいるという。解雇の状況はTracking Library Layoffsにリスト化されている。Google Docで広く共有されている情報であり,そこから,図書館名,館種,解雇の状況,関連報道などが分かる。

解雇の人数は明確になっていないものも多いが,パートタイムや単純業務に従事するスタッフが多い印象である。リモートワークに移行できない職員ということだろう。しかしフルタイムのスタッフも一部,解雇されている。中にはすべての職員を解雇した図書館(Moline Public Library)もある。再開するときどうするのだろう。

記事では,今回の図書館の解雇には,レイオフ,つまり通常の意味の解雇と,身分を保証したまま給与の支払いをしない一時帰休(furlough)があるという。確かに上記のリストを見ると,これらが混在している。こうした解雇の判断は,自治体当局者,図書館長,図書館委員会(Library Board)等が行っているようである(日本の図書館協議会との権限の違いに注意!)。解雇の背景には,今後の固定資産税(property tax)減少による図書館予算減少の見通しがあるとされている。

さて,日本では,少なくとも現在まで,図書館員の解雇はほとんど問題となっていない。なぜか。アメリカでは,「職」に対して人が割り付けられているといわれる。近年,日本ではこうした雇用形態をジョブ型雇用と呼んでいる。そのことは,専門職制度にとっては有利に働いてきたと思う。職が先にあることで,専門職の外部労働市場が成立し,キャリア形成が可能になる。しかし,今回のような事態に直面すると雇用は保証されないことになる。

日本の組織は多くが内部労働市場型といわれ,一括採用された職員が組織の中で職を割り振られる。図書館の多くもその例外ではない。仕事がなくなれば,解雇されるのではなく,仕事のあるところに回される。そのことは,組織の中に専門職を作ることを困難にしてきたとも言われる。

しかし,日本の図書館では,正規職員以外の職員が多様な形で働いている。パートタイム,会計年度任用職員,委託職員,指定管理者の職員などなど。今後,図書館が再開される中で,業務が縮小され,また変化していくかもしれない。そのとき,彼らの職や仕事はどのようになるのであろうか。

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図書館閉館の影響

Library Journal誌にMeredith Schwartz氏による「COVID-19の教訓」というコラムが掲載されている(April 2020, vo. 145, no. 4)。

記事では,これまで図書館はセーフティーネットの役割を果たしていたが,その役割が果たせなくなっていることが述べられている。以下はその例である。

・学校教育が遠隔教育にシフトする中で,31%がブロードバンド環境がない。図書館が開いていれば,提供できたWiFi環境を提供できなくなっている。
・民間の教育支援を受けられない低所得家庭に対する教育支援ができない。
・いつもにもまして,衛生的で,安全な場所が必要なホームレスに対してサービスができない。

記事では,将来の危機的状況において,セーフティーネットの役割を果たせるよう,準備する必要が述べられている。これらは日本においても同様だ。

さて,東京都内の図書館が1日閉館すると,どの程度の影響があるのだろうか。1日のサービスを数字で見ると以下のとおりである。

サービス件数
貸出点数305,823点
予約受付数74,869点
文献複写件数18,759枚
参考業務受付件数3,243件

* 2018年度の数値を365で除した

数字は東京都立図書館の「平成30年度 東京都公立図書館調査」のデータに基づく。1日,東京都内の図書館が閉館するごとに,30万点以上の貸出しの機会が失われているのである。アメリカと大きく異なるのは,電子書籍サービスが進んでいない点である。同調査によると,電子書籍を館外利用者に貸出している図書館はわずか4自治体しかない。今後の課題だ。

図書館が閉館していることの影響はこうしたことからも読みとることができる。

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感染症対策指針

日本の図書館では,近年,各種の危機対応への取り組みが進んできた。しかし,感染症に対する取り組みは十分ではなかった。今後,図書館は,今回のような事態を踏まえ対策を準備していく必要がある。ここでは,アメリカ図書館協会のPandemic Preparednessに掲載されている事項を参考に,指針のあり方の論点を整理してみた。

以下では,ALAが挙げた指針に含めるべきトピックである。また,それぞれについて,日本の文脈での論点を整理した。

  • 図書館を閉館する場合の基準
    日本では,感染症のため閉館することはこれまで想定してこなかった。こうした場合の規程を今後設ける必要があるのか,設ける場合,どのようなレベルの規程とするか(図書館条例,運営規則,施行規則,スタッフマニュアル),どのような内容とするか。
  • 病気休暇,給与,在宅勤務に関する図書館スタッフの方針
    図書館スタッフが在宅勤務する場合の方針を設けるのか,設ける場合,どのような規定とするのか。
  • 社会的距離の基準
    図書館内において社会的距離を確保するための手立てとして,どのエリアを対象とするのか(閲覧席,事務室など),入館者の人数制限をするのか,そのためのサインを設置するのか。
  • 実施する事業の中止基準
    おはなし会,対面朗読,映画会,各種講座などについて,どのような場合に中止とするか,どのような場合に再開するのか。
  • 設備の消毒
    どの範囲(トイレ,ドアノブ,電話,キーボード,カウンターなど)を,どのように消毒するか。
  • 長期休館中の各種対応
    施設管理者への対応,返却ポストの対応,会計処理などはだれが,いつ対応するか。
  • 連絡・広報
    自宅にいる職員と連絡はどのようにとるのか,利用者へのコミュニケーションはどのようにとるのかなど。

こうした論点を指針に落とし込む場合,当然,日本の法令,省庁によるガイドライン等を踏まえることになる。例えば,総務省が4月6日付けで「新型コロナウイルス感染症の大規模な感染拡大防止に向けた職場における対応について」を発出している。今後,日本図書館協会などが指針の雛形を作ることも期待さよう。

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アメリカの図書館

アメリカの公共図書館の状況をPLA(Public Library Association)が調査している。調査期間は3月24日〜4月1日である。PLAは,日本でいえば日本図書館協会の公共図書館部会に近い。

調査では,2,500の図書館システム(設置機関)に調査を行い,約30%から回答を得ている。回答率は低いが,いろいろ参考になる。以下,結果の概要を紹介する(PDF)。

  • 98%の図書館が少なくとも建物の一部を閉鎖している(完全な閉館を含む)
  • 74%が電子書籍,ストリーミングメディアを提供している
  • 61%が催し物をヴァーチャル(つまりオンラインで)で実施している

最初の閉鎖に関しては,逆に1%が”open to the public”との回答であることを考えると,閉鎖がかなりの図書館に及んでいることが伺える。日本と大きく異なるのは,2つめの電子書籍等の提供が進んでいることだ。また,多くの図書館が実施していることとして,以下が挙げられている。

  • 76%がオンラインでの期間更新指針を改定
  • 74%がオンラインの貸出サービスを拡張
  • 41%がオンラインのヴァーチャルレファレンスを拡大

規則の変更は当然であろう。自由回答では以下の活動が多くの図書館で実施されている。

  • 21%がCOVID以外のオンラインリソースを提供している(自宅でできる活動,失業者向けリソースなど)
  • 21%がサービスへのアクセスを拡大している(電子的な利用券など)

他に,ソーシャルメディアの利用は非常に進んでおり,95%が図書館サービスの変更についてソーシャルメディアを活用している。4/22には調査結果をもとにウェビナーを実施する。こうした情報共有から,取り組みを進めていく点は見習いたい。