ポーランドの図書館行政

ポーランドの図書館行政については,これまでも断片的に触れてきたが,備忘のために簡単にまとめておく。

ポーランドでは1997年に図書館法1が制定され,現在,それが有効である。この法律は図書館の一般規定に加えて,国立図書館,公共図書館,科学図書館,学校図書館などについても規定している。図書館法の中にはいくつか重要な規定がある。たとえば第7条では文化国家遺産省のもとに「国立図書館協議会」の設置が定められている。国レベルで,図書館に関して意見を述べる機関は,韓国など他国でも見られる。日本では恒常的な機関はなく,必要に応じて文部科学省に設置される点で大きく異なる。

他には,公共図書館に関する第19条から第20条の規定が注目される。基礎自治体であるグミナには図書館の設置が義務づけられており(第19条),県(ヴォイェヴツトヴォ)と郡(ポヴィアト)にも原則として図書館の設置と,域内図書館に対する監督や支援が求められている(第19条から20条)。但し,グミナの図書館は郡や県と協定を結び業務を担うこともできる。郡や県の図書館による監督支援が法律レベルで規定されている点は日本と異なる。

図書館法以外にも,関連する法律として1991年の「文化活動の実施及び運営に関する法律」(ustawy z dnia 25 października 1991 r. o organizowaniu i prowadzeniu działalności kulturalnej)2がある。この法律も図書館を含む文化機関の長の任免などを定めており図書館と関係している。

図書館を自治体に設置する際,日本でいう「条例」にあたる定款が議会で議決され,設置者,監督,目的,組織,財務などが規定される。そして,図書館は自治体の文化機関登記簿に登記され,独立した法人格を持つ。図書館は自治体にとって内部組織ではないため,自治体の行政組織図には登場しない。そうした定款以外に,日本でいう規則や要綱にあたるものが各種定められている。

所管関係はやや複雑である。基礎自治体が設置する図書館については,一般的な業務や財務などは設置した自治体が監督している。しかし,専門的業務については郡や県が監督する。実際,研修の実施,専門的な助言,助成金関連の業務などは郡や県がかなり関与している。なお,図書館の日常業務に対する自治体の関与の程度は,自治体ごとに異なるようである。

人事面では,図書館長の採用は自治体が競争に基づいて行う。これは先ほどの文化活動の実施及び運営に関する法律に基づく(第16条)。しかし,通常の職員採用は図書館が実施するようである。かつては図書館職員の資格に関しては詳細な規定が存在していたが,2013年の規制緩和により規制はなくなっている。そのため,図書館が独自に要件を定めて採用できるようになっている。

図書館は,毎年,活動報告をまとめて提出することになっている。それは,県を通じて中央統計局でまとめられる。全体を集約した情報へはアクセスできるが3,個別図書館の統計情報は一般には公開されていない。つまり,『日本の図書館 統計と名簿』のように個票へのアクスはできない。一方で,活動報告が個別の図書館の公式ウェブなどのBIP(Biuletyn Informacji Publicznej)というウェブページに掲載されることもある。BIPは,すべての行政機関に義務づけられた情報公開用のウェブページである。公開の程度は,図書館によって異なるが,中央統計局の情報をそのまま公開している図書館もある。BIPには他に,定款,各種規則,計画,職員体制,組織図などが載っている。

  1. https://isap.sejm.gov.pl/isap.nsf/DocDetails.xsp?id=wdu19970850539 ↩︎
  2. https://isap.sejm.gov.pl/isap.nsf/DocDetails.xsp?id=wdu19911140493 ↩︎
  3. https://stat.gov.pl/obszary-tematyczne/kultura-turystyka-sport/kultura/ ↩︎