サットン区,クロイドン区,タワーハムレット区などの図書館のウェブページを見ていると,デザインが共通していることに気づく。これは,同一のシステムを利用しているためである。これらの区は,いずれもThe Libraries Consortium(TLC)というコンソーシアムに加入している1。TLCはイギリスの図書館連携の中でも代表的な取組のひとつである。ここでは,その概要を簡単に整理する。
TLCには23の自治体が参加している。コンソーシアムとして,図書館システムを共通化し,さらにコレクション,物流,デジタルリソースの共同調達を行っている。2017年からはサットン区が主導的な機関となり,契約などのとりまとめを行っている。目的として挙げられているのは費用節約,効率化,ノウハウの共有などである。メリットとしては,共同目録によるサービス向上などが挙げられている。
歴史的には,2004年にロンドンの3つの区がロンドン図書館コンソーシアムを設立したのが始まりである。現在は23自治体が参加しており,うち19はロンドン市の自治体である。全体では321館,コレクションは730万点にのぼり,サービス対象人口は820万人とされる3。図書館システムとしては,SirsiDynix社のシステムを採用している。電子書籍は4万点以上,電子雑誌は800タイトル以上を提供している。TLCの運営組織は戦略グループ,理事会グループ,利用者グループ,コレクショングループの4つに分かれている。戦略グループは6週間に一度,それ以外は四半期に一度集まる。
システムの統合の実際をサットン区のもので見てみる。図書を検索すると,初期設定ではサットン区の資料が表示される。ただし,検索結果から他の参加館の所蔵も確認できる。図書が自館にない場合,サットン区を含めTLC全体から1.5ポンドで予約可能である。電子書籍などは各区がコンソーシアムを通じて契約したものだけにアクセスできるようであり,費用分担は契約内容に応じて各区で異なる。全体として,フィンランドのHELMETのように利用規則まで統一しているわけではなく,統合のレベルはやや低い。
こうした図書館協力の動向は,Public Library Newsというサイトでまとめられている3。そこでは32の事例が紹介されており,TLCもそのひとつに挙げられている。同サイトでは,図書館協力によるメリットとして経費節減と利便性向上が挙げられている。また,Future Librariesという報告書の方向性とも一致することが指摘されている4。この報告書は2010年頃にLocal Government Group(LGG)とMuseums, Libraries and Archives Council(MLA)によってまとめられたものであり,図書館協力を推奨している。報告書は,バックオフィス(管理業務)の共同化で5〜10%,完全統合で10〜25%の経費削減が期待できると述べている。イギリスでは,図書館閉鎖の波に対して,このような図書館システム統合が一つの対抗策と見られたのではないだろうか。ただし,実際にどの程度の経費節減につながったのかは不明である。