オンタリオ州の図書館運営に関わる知識共有

オンタリオ図書館サービス(OLS)のウェブページでは,いろいろな情報が公開されているが1,その中に「リソース」という項目がある2。OLSは別のところで触れたが,州の所管大臣に代わって図書館政策を担う機関である。「リソース」は,簡単にいえば,図書館運営に必要な業務上の知識をまとめたものである。図書館運営には様々な知識や技能が必要となる。それらはライブラリアンの養成課程やスタッフの研修等で身につけるものも多い。しかし,全ての関係者がそうした知識を持つわけでもない。OLSはオンタリオ州の図書館関係者として求められる知識を整理し,ウェブページで提供しているわけである。

北米といえば,大学院で学位(MLS,MLIS)を取得したライブラリアンが働いており,専門的知識を持った図書館スタッフが当然いるという印象があるが,そうした職員は一部である。このウェブページではかなり基本的な事柄まで説明されている。ある意味で至れり尽くせりである。間違いのない図書館運営を行えるよう州として仕組みを構築したものといえる。日本でも参考にできる点は多い。

ガイドは全体で30項目ある。それぞれのページの構成は,まずテーマが示され,その下に大項目,小項目と続く。小項目では,その事柄について簡単な説明がなされている。例えば,「カタログ作成及びテクニカルサービス」というテーマでは,「MARC,BIBFRAM」「主題目録」「分類」「記述目録」「典拠コントロール」が大項目となっている。このうち,「MARC,BIBFRAM」の項目では,「解説」「無料で利用できるツールと情報源」「トレーニングの情報源」と分かれており,それぞれ説明がされている。また,「アクセシビリティ」というテーマでは,大項目が「オンタリオ州のアクセシビリティ」「公共図書館のアクセシビリティ」「統合的アクセシビリティ標準と関連するベストプラクティス」「FAQ」となっている。そのうち,「オンタリオ州のアクセシビリティ」の小項目は,「概要と立法」「オンタリオ州障害者アクセシビリティ法」「統合的アクセシビリティ標準と関連するベストプラクティス」「その他のリソース」となっており,それぞれについて説明がなされている。

30項目は6つに分類されている。それらは「先住民」「ガバナンス,計画,ポリシー」「ガバナンスHUB」「図書館管理と運営」「図書館サービス」「マーケティング,コミュニティ関係,パートナーシップ」である。このうち「ガバナンスHUB」というのは,図書館委員会に任命された委員が4年間で何を行うかを,1年目から4年目まで時系列で整理したものである。オンタリオ州では,図書館委員会は図書館運営で極めて重要な役割を担っている。そうした委員に対して丁寧な説明がなされている。

30項目のうち,いくつか興味深いテーマを挙げてみる。「図書館職員のコンピテンシー」は図書館員に求められる能力をリスト化したもの(自己研鑽に活用できる)で,「図書館のパートナーシップ」は連携相手との関係構築や,取り交わす覚書きの例を示している。また,「戦略計画」は策定から実施までを参考資料とともにまとめたものである。日本でも都道府県立図書館が相互貸借業務などに関する情報を共有したりしているが,それらと比較すると,相互貸借などに限定せず,図書館運営に必要な,かなり基本的な内容まで扱っている印象である。

それぞれのテーマには最終更新日とアクセス数も示されている。30件のうち18件は2025年に更新されており,比較的頻繁にアップデートされていることが分かる。またアクセス数を見ると,最も多いものは相互貸借関連のガイドで6,574回である。平均は1,200回ほどであり,実際に利用されていることがうかがえる。日本でも,図書館運営のあり方について「望ましい基準」がある。ここのガイドは,それをもう一段,詳細化したような内容であるように感じる。こうした形で標準的な知識を整理し共有することで,州の図書館全体の底上げにつながっているのではないだろうか。

  1. https://resources.olservice.ca/ ↩︎
  2. https://www.olservice.ca/resources ↩︎