ハミルトン公共図書館(HPL)では,ピアサポートプログラムを実施していることは別のところで述べた。このプログラムは,近隣にあるマクマスター大学との連携がきっかけとなって実現している。HPLでは研究者との連携について,ウェブページで条件を示した上で,研究者の申請を受け付けている。また,HPLでは,図書館で実施するプログラムについても,同様に市民から提案を募っている。図書館外の関係者の中には,図書館と連携したいと考えている者もいるであろう。そうした観点から,こうしたパートナー募集の仕組みは興味深い。ここでは,その取組について紹介したい。
まず,研究者との連携である。図書館と共同研究を行いたい研究者は,研究提案を行うことができる1。図書館では,その研究がHPLの使命や戦略計画に沿っているかという観点から評価する。研究は基本的にコミュニティ志向である必要があり,倫理的配慮等についても所属組織で審査を受けることが求められる。それらを含めて,研究目的,方法,予想される成果,HPLの役割,予算などをまとめた計画書を作成し,HPLに提出する。
図書館側で研究プロジェクトが承認されると,各パートナーの役割,責任,データの取り扱い等について合意を取り交わす。研究プロジェクトの実施中は進捗を共有し,成果発表前にはHPLと議論を行う。研究成果は図書館主催のイベントやワークショップなどでステークホルダーと共有することが推奨されており,最終的に研究報告書をまとめてHPLに提出する。
ウェブページには,実際に取り組まれているプロジェクトが掲載されていた。社会的孤立に陥りがちな高齢者への支援方策(高齢者の居場所作り),図書館におけるソーシャルワーカーとの連携,図書館におけるデジタルリテラシースキルの促進,図書館職員の感情労働などがある。こうした連携によって,研究者は現場に根ざした研究ができるし,図書館側も,その活動を拡大したり,抱える課題を解決する糸口を得ることができる。興味深い試みである。
次にプログラムの提案である2。図書館で何かプログラムを実施したい市民は,ウェブフォームから提案することができる3。ウェブサイトによると,図書館の方針とポリシーに基づいて年4回審査が行われる。提出される提案はかなり多いようであり,図書館側が依頼する可能性のあるものについてのみ返信するとされている。
ウェブページでは,プログラム名,対象者,プログラムの詳細,組織名などを入力する。ポリシーとしては「連携,プログラム,スペースの方針」という文書があり4,それに沿う必要がある。プログラムとして期待されているのは,学習,識字,読書,社会的孤立の解消,相互理解促進などである。他にデジタルインクルージョン,ビジネス支援,地域社会,芸術・音楽・文化,健康,高齢者なども挙げられている。プログラムは料金を徴収せず無料とすることが原則であり,団体側も無料で開催する必要がある(図書館に費用などを請求しない)。運営に際しては,知的自由の尊重,差別の禁止,販売促進の禁止,私的集まりの禁止などが必須とされている。こうした点を踏まえて提案を行うことになる。