オンタリオ州には,オンタリオ図書館サービス(OLS)という団体がある。カナダは州ごとに図書館制度が異なるため,日本の感覚で言えば,オンタリオ州が国に相当する。ここでは,オンタリオ州内の図書館支援を中心に担っている OLS の活動に焦点を当てる。OLS についてはこれまでも触れてきたが,州の観光・文化・ゲーミング大臣に代わって図書館への支援をする機関である。
OLS のウェブページでは,活動が6つに整理されている1。このうち,「図書館間相互貸借」は日本でも都道府県ごとに活発に展開されている。「ファーストネーションズ」は先住民族図書館の支援である。「助成金」は OLS が申請の窓口となっており,その手続きをしたり方法などを解説している。「リソース」はすでに別のところで述べた。残りの2つは,日本での取組への示唆となる可能性があるため,ここではこれらに注目したい。
一つ目は「助言と研修」である。このうち,「助言」は州内図書館への多様な支援であり,専門的指導,計画,ポリシー,新図書館長(CEO)向け,ガイドラインと認定,フランス語圏の図書館,の6つに分かれている。「専門的指導」は図書館長,管理職,図書館委員会委員などへの指導とされているが,具体的な方法は書かれていない。「計画」は計画策定のサポートであり,関連情報の提供に加えて,有料でコンサルタントに類似したサポートを提供している。内容としては,図書館の分析,OLS が開発したツールを用いた戦略目標などの策定,委員会委員や図書館員への計画策定に関する研修が含まれている。これらは日本では「図書館コンサル」が担っている領域に近い。
「ポリシー」は,日本で言えば教育委員会の条例・規則,図書館の内規に相当するものと考えられる。ウェブページでは,ポリシーの概要,必要性や意義,策定プロセス,サンプルポリシーが示されている。初心者でも理解しやすい形でマニュアル化されている。「新図書館長(CEO)向け」では,新しい CEO のツールキットが特に興味深い。ここには,関連法規,オンタリオ州の図書館の現状,CEO の役割,図書館委員会の役割,予算,政策策定のプロセス,アドボカシー,SROIなどがまとめられている。これを読めば,ある程度,CEOの役割の概要をつかめる。
「ガイドラインと認定」は,「オンタリオ州公共図書館ガイドライン」の説明と,それに基づく認定制度である。このガイドラインは自己評価のためのツールだが,オンタリオ州公共図書館ガイドライン・モニタリング・認定協議会という組織があり,ガイドラインを基づいて認定を受けることができる。認定は5年間,有効である。現在38自治体が認定を受けている。評価項目は多く,必須項目とそれ以外がある。例えば,「公開コンピュータの方針を持っている」は必須項目であるが,「距離:市民は45分以内に図書館にたどり着ける」は必須ではない。日本でも業界(例えば「病院」)などで,こうした認定制度があるが図書館ではない。また,評価に関しては,最近,オンタリオ州図書館評価ツールキット(VOLT)が開発されている。このことは別に述べた。「研修」についてもEXCELについてすでに書いた。
二つ目は「コレクション購入」である。これらは「電子リソース」「電子コレクション」「共同購入契約」に分かれている。「電子リソース」は,年に一度,OLSがとりまとめて電子リソースを割安に契約する仕組みであり,100近くの電子リソースから選択できる。「電子コレクション」は人口10万人以下で,まだ OverDrive 社のサービスを契約していない自治体が対象である。参加すると,利用者は OLS の Download Centre にアクセスし,共通の電子図書館を使うことになる。ここの,提供点数は6万点を超えている。また,Advantage 契約にすると,自館利用者用に追加の電子書籍を購入できる。このことにより,OLS 提供分以外も提供できるようになる。「共同購入契約」は,図書館関連製品を通常より有利に購入できる仕組みである。OLSのような州全体をとりまとめる機関が介在することで,ベンダーとの力関係が変化するのではないだろうか。
日本でも,長野県などが積極的な電子図書館の取組を進めている。また,都道府県立図書館によっては,充実した協力支援を基礎自治体図書館に行っている。しかし,OLSのような独立した専門的機関が全国レベルであれば,より取組が充実するのではないだろうか。
- https://www.olservice.idlwebclients.com/ ↩︎