オハイオ州の公共図書館制度

ここでは,理解した範囲でオハイオ州の公共図書館制度をまとめておく。まず基本情報として,オハイオ州の人口は約1,180万人であり,2024年の図書館統計では,図書館システム数が251,図書館数が721館であった1

米国では,日本と異なり,図書館に関わる事項は州単位で規定している。オハイオ州の場合,公共図書館に関しては,オハイオ改訂法典第3375章「図書館」が規定する2。日本では図書館の設置主体は地方自治体であるが,オハイオでは様々である。郡,学校区(school district),市などのmunicipal,さらにはタウンシップなど多様な主体が図書館を設置している。郡の場合は,郡が単独で設置するものと(第6条等),郡内の区画を調整して設置するもの(第19条等)がある。

図書館には図書館委員会(board of public library trustees)が設けられる(第6条等)。州法では,その任命方法,権限,職務などを定めている。委員会は7名で構成され,選出方法は設置主体によって異なる。基本的に非常勤かつ無給であり,任期は設置主体によって異なる。なお,図書館委員会は法人格を有する団体である。図書館委員会の職務は第40条に規定されており,財産の所有と管理,予算の支出,建物施設の購入や維持管理,債券発行による資金調達(要住民投票),職員採用など幅広い。また,日本の無料原則と関連することとして,印刷資料の貸出は延滞時の罰金を除き無料とすることが規定されている(第40条I項)。全体として,日本と比較して自治体行政と距離があり,図書館委員会のガバナンスのもとにある。

州の財政措置として中心的な役割を果たしてきたのが,公共図書館基金(Public Library Fund: PLF)であった3。これは,一般歳入基金(General Revenue Fund=GRF)から一定割合(2024年は1.70%)を図書館費として各郡に配分する方式である。PLFは,多くの図書館にとって重要な財源となっていた。図書館によってはPLFのみで運営しているところもある。オハイオ州の図書館員と話しをする中で,繰り返し言及され,そしてオハイオの図書館発展に極めて重要な役割を果たしてきたと強調されたものである。しかし,2025年に制度変更があり,従来のように自動的に配分額が決まる方式ではなくなった4。代わりに,新たに予算項目が立てられ,通常の予算のように知事提案と議会審議を経て決定される仕組みに変わった。2025年の配分額自体は多少の減額で大きく変わらなかったが,今後は不安定化が避けられないと考えられている。インフレを考慮すると,配分額は長期的には減少傾向にある。

多くの自治体では,PLFに加えて,Levyで財源を確保している。Levyとは固定資産税等に課される目的税の一種で,図書館専用の税を徴収することができるものである。ただし住民の賛同が不可欠であり,税率変更や更新時には住民投票が必要である。目的税であるため,集められた税は必ず図書館予算となり,財政の安定に寄与する。一方で,図書館は常に住民の支持を意識せざるを得ず,その点はプレッシャーにもなる。

連邦政府の補助金としては,IMLS(Museum and Library Services)が配分している図書館サービス技術法(LSTA)に基づく助成金がある5。州立図書館がこの助成金を受け取り,州内向けの助成金プログラムを運営している。オハイオ州立図書館では5年ごとにLSTA計画を策定し,実施後には評価を行ってIMLSに報告している。助成メニューは複数あり,オハイオ州の図書館にとって重要な役割を果たしている。

専門的職員に関して,州法は特段,規定していない。しかし,ライブラリアンに関しては,アメリカ図書館協会(ALA)認定の大学院での学位(MLS)を持つ専門的職員が求められることが一般的である。また,オハイオ図書館協議会(OLC)では認定制度(certification)を設けており,人材育成を担っている6

州立図書館としてオハイオ州立図書館(OSL)がある7。これは,州図書館委員会によって運営されている。OSLは政府のデポジットライブラリーの運営,LSTA関連業務,各図書館区の戦略計画策定のコンサルティング,研修を含む人材育成プログラムの実施,統計データの収集,資料デジタル化の支援,オハイオ・デジタル・ライブラリー(ODL)の運営など多岐にわたる役割を担っている。職能団体としてはオハイオ図書館協議会(OLC)がある8。図書館,図書館委員会,友の会,図書館員,他の関連機関から構成されている。図書館職員の認定を含む専門的能力開発,アドボカシー,公共図書館サービス基準の策定,州図書館大会の開催,図書館管理者や会計担当者,図書館委員会向けのハンドブック刊行なども行っている。

情報基盤の関係では,オハイオ公共図書館情報ネットワーク(Ohio Public Library Information Network: OPLIN)が,ネットワーク接続,電子データベース契約,図書館ウェブサイトのWebkit提供,サーバ管理などを担っている9。また,OPLIN は Libraries Connect Ohio(LCO)のパートナーであり,LCO を通じて学校図書館(INFOhio)や大学図書館(OhioLINK)とも連携している10

  1. https://library.ohio.gov/libraries/ohio-public-library-statistics/stats-and-reports ↩︎
  2. https://codes.ohio.gov/ohio-revised-code/chapter-3375 ↩︎
  3. https://www.olc.org/government-relations/library-funding-plf/ ↩︎
  4. https://bookriot.com/ohios-republican-budget-proposal-destroys-library-funding-restricts-lgbtq-books-targets-library-trustee-terms/ ↩︎
  5. https://library.ohio.gov/libraries/grants/lsta-grants ↩︎
  6. https://www.olc.org/library-jobs/certification/ ↩︎
  7. https://library.ohio.gov/home ↩︎
  8. https://www.olc.org/ ↩︎
  9. https://www.oplin.ohio.gov/ ↩︎
  10. https://www.oplin.ohio.gov/databases/selection/lco ↩︎