図書館目的税としてのLevy

アメリカの公共図書館の特徴としてよく挙げられるのがLevy(ここでは図書館目的税としてのLevy)である。オハイオではPLFという州からの財源があったとはいえ,多くの図書館システムでLevyを導入しており,図書館の予算にとって重要な役割を果たしている。ここでは,最近Levyの投票を経験した図書館長へのインタビューの話しも交えながら,Levyについて簡単に整理しておく。

オハイオでは歴史的に,州からの助成金が運営費に占める比率が比較的高かったが,次第にLevyによる収入が増えてきている。2025年のコロンバス・メトロポリタン図書館では,Levyによる収入は79.9%で,PLFは16.9%となっている1。Levyは,州の図書館法にもとづき住民の固定資産税評価額に応じて課税される。上限は法律で定められている。目的税であり図書館予算としてだけ使われる。期間を決めて徴収する場合もあれば,改定しない限り継続される場合もある。2024年11月のデータによれば,期間は最短5年間から最長30年間までであり,継続は2つの図書館システムだった2。多くは5年間に設定されている。税率は1000分の0.75が最も低く,2.4が最も高かった。

Levyの提案は住民投票で決せられる。その際の提案には4種類ある。「Renewal」「Replacement」「Additional」「Increase」である。Renewalは税率も評価額(住民投票があった時点)も据え置くもの,Replacementは税率を維持しつつ評価額を現状に合わせるもの,Additionalは既存のものとは別に新たなLevyを追加するもの,Increaseは税率そのものを引き上げるものである。2024年はRenewalが最も多かった。これは,インフレによって実質的な価値が目減りするとはいえ,最も通過しやすいという。

Levyを投票にかけるためには,まず,なぜその予算が必要なのかを明確にする必要がある。公的な手続きは州法である租税徴収法(5705)23条で定められており,図書館委員会で2/3以上の承認を得たうえで課税当局(学校区であれば教育委員会など)の承認を経る。その後,住民投票に付される。こうした流れと手順については,オハイオ図書館協議会(OLC)が詳細なマニュアルをまとめており,非常に参考になるという。投票自体は州内で実施される選挙に合わせて実施される。

投票が行われることが決まると,そのための運動が始まる。活動の中心は友の会が実質的に担うことが多く,メンバーを中心に政治活動団体が作られ,キャンペーンを展開する。図書館は,自ら賛成の投票を呼びかけることはできない。ただし,事実を伝えることは許されており,ある図書館では戦略計画,近隣図書館の課税状況,経済的インパクト,投資収益率などの情報をウェブに掲載していた3。図書館がコミュニティにどの程度のインパクトをもたらしているかを示し,将来の図書館の姿を伝えているわけである。また,図書館員も勤務時間外であれば活動は可能であり,話しを伺った図書館長は勤務時間外は地域を飛び回っていたという。その際には,図書館の活動をアピールするカードやチラシを持って行ったそうである。そこには,年間の来館者数,利用者数,プログラム参加者数,コレクション利用回数,投資収益率,各家庭で節約できたお金などが記載されていた。

Levyの投票には難しさもある。特に,実施するタイミングが悩ましい。選挙が何回かある中で,どのタイミングに行うかが重要となる(Levyの投票は単独で行われるのではなく,一般的な選挙に合わせて実施される)。投票率が高い選挙とあわせる(提案が通りやすいと言われている)のが基本だが,万が一,否決された場合の再挑戦のスケジュールも関係する。また,学校や警察など他の公共サービスもLevyで予算を調達しているため,他の公共サービスで「Increase」が出る場合,住民の重税感のため通りにくくなることもあるという。さらに,党派的な議論の影響が出ることもある。特に最近はLGBTQ+など蔵書に対する攻撃が強まっており,そうした政治的ムードも関係する。否決され徴収できない場合は,その分の予算が失われるため,運営に大きな支障が出る。

とはいえ,Levyが認められれば,自治体の財政状況や政治的動向と関わりなく図書館予算が安定化する利点は大きい。一方で,図書館の予算が住民の意向に直接さらされるため,シビアな制度であることも間違いない。図書館長は,投票のある年は特にプレッシャーを感じると述べていた。ただ,普通にサービスをしていれば多くの場合,認められるとも話していた。

住民へのアピールとして基本となるのは,しっかりとした図書館サービスを提供することである。そのうえで,ある図書館長は「ビジビリティ」を意識しているという。図書館の活動を住民の目に触れる機会を増やすことが重要,とのことである。そのために,例えば,公園,学校,デイケアセンターなど多様な場所に移動図書館を走らせたりしているとのことだった。Levyは,図書館委員会と合わせて,アメリカの図書館を特徴付ける重要な仕組みである。それらによって,人事,予算,知的自由などの面で,政治的圧力や自治体行政から高い独立性が確保されるようになっている。

  1. https://www.columbuslibrary.org/wp-content/uploads/2025/04/2025-Financial-Summary.pdf ↩︎
  2. https://www.olc.org/government-relations/public-library-levies/ ↩︎
  3. https://www.delawarelibrary.org/levy/ ↩︎