オハイオ州の図書館員採用

オハイオ州の公共図書館員の採用と昇進について,図書館長へのインタビューをした結果を交えながら,理解した範囲で簡単にまとめておきたい。日本では,正規職員の採用は地方自治体が行い,異動は司書職であれば図書館内,一般事務職であれば教育委員会や本庁との間で定期的に行われる。このように自治体の内部労働市場の中で職員が動いている。アメリカでは,この点がかなり異なる。

まず,制度について確認しておく。図書館について定めた州法40条(G)では,図書館委員会が図書館員を採用するとされている1。実際には,図書館長に関しては確かに図書館委員会が採用に関わるが,それ以外は図書館長が中心になっていることが多いようである。図書館長の資格は,MLISが必要とされることが多いが,望ましい資格とされる場合もある。Ohio Library Council(OLC)の募集情報で確認すると2,現在出ている募集では,学士が必須でMLISまたはMLS(以下MLIS)は望ましい資格として挙げられていた(グリーンビル公共図書館,レッパー図書館)。

図書館長以外の職員については,聞き取りをした図書館では,図書館長が図書館のHR部門と共同して採用を進めているとのことであった。オハイオ州に限らず米国では,基本的にポストごとに職務記述書があり,そのポストに適した人物が採用される。したがって,日本のように定期的に部署を異動したり,組織内部の選考を経てポストを問わずに昇進したりしていく,というわけではない。他の図書館システムに移動してよりよいポストに就任することも普通に行われている。聞き取りをしたある図書館長は,これまで,8つの図書館システムの勤務経験があると言っていた。図書館でポストに空席が出たり,新たなポストを設ける場合には,情報を公開して職員を募集する。聞き取りをした図書館では,さまざまなチャネルを通じて一斉に告知を行っているとのことだった。

図書館長以外の職務記述書では,求められる資格はポストによって異なる。OLCの募集情報を見ると,分館長や部門の管理職ではMLISが必須とされることがある(ウォーレン・トランブル郡,リッキング郡)。一方,アシスタント職は高卒でよいとする図書館もある(カイヤホガ郡)。また,技術職では関連分野の学士号を求める例もある(ラウドンビル,ピカリントン)。ここでいう技術職とは,機械・工学的な技術職ではなく,図書館の専門的業務を支援する職のことである。他に,聞き取りを行った図書館では,管理職であってもマーケティングなどのポストの場合,MLISは必須ではなく,マーケティングの学位を求めているとのことだった。こうした資格に加えて,多くの場合,一定の図書館勤務経験を求めている募集が多い。

全体としてみると,管理的ポジションではMLISが求められる傾向が強い。しかし,特別な職務については,管理的ポジションでも必ずしもMLISを求めていなかった。技術職やアシスタント職はMLISなどは求められない。聞き取りをしたある図書館長は,基本的にMLISを重視していたが,以前の図書館長はこだわらなかったという。どちらを優先するかは,館長の方針に左右されるようである。職務記述書に,「MLISを取得しているものが望ましい」と書かれているときの判断である。なお,図書館員によっては,働きながらMLISを取得するものもいる。訪問した図書館の中にもそうしたライブラリアンがいた。図書館によってはそうした際に学費面の支援を行うところもある。ただし,その場合は資格取得後,一定期間勤務することが条件として付されることがあるようである。

  1. https://codes.ohio.gov/ohio-revised-code/chapter-3375 ↩︎
  2. https://members.olc.org/jobs ↩︎