ロサンゼルス市の図書館

ロサンゼルス市の公共図書館について整理しておく。ロサンゼルス市はカリフォルニア州にあり,全米ではニューヨーク市に次ぐ規模の都市である。人口はおよそ380万人で,日本では横浜市に近い。ただし,面積はロサンゼルス市の方が約3倍と広い。

ロサンゼルス市立図書館は,中央館を含めて73館から構成されている。このうち72館は分館(branch)である。市内は6つのエリアに分けられている。それぞれのエリアには,域内の分館をとりまとめるエリアマネージャーが配置されている。エリアマネージャーのいる分館は地域分館(regional branch)として位置づけられている。

統計データを確認しておく1。2023年から2024年の数値である。職員数は1,284名であり,そのうちALA-MLSを取得したライブラリアンは424名である。来館者数は575万人で,物理資料の貸出総数は628万点であるので,来館者数と近い。物理資料の貸出密度は2に届いていない。電子資料の貸出は1,791万点であり,物理資料と合算すると2,419万点となる。これを人口で割ると貸出密度は6.4となる。このように電子資料の利用が多いことが分かる。電子資料の内訳を見ると,電子図書の貸出が707万点で多い。プログラムの開催状況については,開催回数が11,135回であり,図書館数で除すと1館あたり年間,平均152.5回となる。プログラムの参加者数は227,794人で,1回あたり平均20.5人が参加していた。統計データから見えてくるのは,物理資料の貸出は少ない一方,電子資料の利用が多い。あわせてプログラムも活発に展開されている。

ガバナンスの面では,ロサンゼルス市立図書館は市の一部門として設置されており,独立した法的主体ではない。この点は,独立した法的主体であったオハイオ州の図書館制度とは異なる。カリフォルニア州教育法典では,タイトル1,ディビジョン1,パート11が図書館に関する規定であり2,その第5章で市立図書館について規定している。そこでは,市立図書館は市議会等が設置するとされており,条例による設置である日本と類似している。

とはいえ,管理・運営は一定程度,市から独立している。カリフォルニア州教育法典では,5名からなる図書館委員会(Board of Library Commissioners)が市長によって指名されることになっている。ロサンゼルス市の憲章では,これを受けて,図書館委員会が指名され,図書館部門を管理・運営すると規定されている。具体的には規則制定,予算管理,建物の建設や維持管理,職の設置,職員の承認などを担う3

予算については,固定資産の課税評価額の0.03%以上が図書館に割り当てられる方式が採用されている(Charter 531)。こうした支出方式は住民投票で決定されたものであり,それまでの緊縮的な予算状況から回復する契機になったと紹介されている4。これに加えて,市全体の一般基金からの予算が上積みされることもある。ただし,図書館は経費全体を自らの予算で賄うことが求められており,人件費や光熱水費なども含めて負担している。Charter 531の方式は,オハイオ州で見られるような目的税方式とは異なり,最低額が定められている点を除けば,最終的な予算は通常の予算と同様に査定の対象となる。その意味では,日本の予算制度と共通する側面も見られる。

職員の採用については,図書館が市の一部門であるため市が行う(図書館の関わり方は不明)。但し,職の設置は図書館委員会が担う。この点も,図書館委員会が採用を主導することの多いオハイオ州とは異なる。また,ライブラリアンの昇進については,内部昇進が原則となっているようである。LAPLでは,ライブラリアンのキャリアラダーとして,Senior Librarian,Principal Librarian,Division Librarianと昇進することになっている5。このうち,Principal Librarianの募集要項を見ると,Senior Librarianとして最低2年間勤務していることなどが条件として示されていた6

以上から,いくつかの点を指摘できる。まず,アメリカにおける図書館制度の多様性である。ロサンゼルス市を含むカリフォルニア州の制度は,オハイオ州とは大きく異なっていた。さらに,カリフォルニア州内でも設置主体は多様であり,運営の実態はさらに多様である。もう一点は,統計データから明らかなように,物理資料から電子資料への移行がかなり進んでいる点である。ロサンゼルス市では,物理図書の貸出割合が電子資料を含む貸出資料の29.9%にとどまっており,他市の多くが70%から80%であるのと比べると,例外的に低い水準にあることが分かった。

  1. https://www.library.ca.gov/services/to-libraries/statistics/ ↩︎
  2. https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/codes_displayexpandedbranch.xhtml?tocCode=EDC&division=1.&title=1.&part=11.&chapter=&article= ↩︎
  3. https://www.lapl.org/about-lapl/board-library-commissioners ↩︎
  4. https://current.ndl.go.jp/car/17752 ↩︎
  5. https://personnel.lacity.gov/eeo/career/Librarian.pdf ↩︎
  6. https://personnel.lacity.gov/doc.cfm?get=ClassSpec6155 ↩︎