グレンデール中央図書館
グレンデール市の公共図書館であり,中央館と7つの分館から構成されている1。組織としては,図書館単独ではなく文化芸術部門と一体となっている。建物はブルータリズム建築である2。イギリスではいくつか見たが,アメリカでは初めてであった。
サービス対象人口は約19.2万人である。物理資料の年間貸出点数は約69.8万点で,貸出密度は3.6である。電子資料の貸出は約18.9万点であった。職員数は114.26人で,そのうちALA-MLS保持者は27.57人であった。年間来館者数は約60.2万人である。図書館長は,前ALA会長であった3。図書館のすぐ近くには,屋外型のショッピングモールであるアメリカーナと,屋内型のグレンデール・ガレリアがあり賑やかな商業エリアに隣接している。
建物は2階建てで,入口は大きな通りに面しているが,反対側からも入館できる。館内に入ると,吹き抜けの空間が印象的である。この図書館は2017年に大規模なリノベーションを行っており,2018年には歴史的建造物の修復に関する賞を受賞している。改修では書架を減らし,閲覧スペースや滞在型の空間を増やしたとのことで,全体にその意図がよく表れていた。
1階にはソファーや閲覧席がゆったりと配置されている。カウンターの周辺にコピー機,自動貸出機,特集展示コーナーなどがある。コピー機の横にはオーバーヘッドスキャナーが設置されており,専用アプリを用いることで,スキャンしたデータを直接スマートフォンに転送できるようになっていた。「MARKET PLACE」と書かれた書架もある。予約が集中している図書を来館者向けに貸出している。カウンター付近には3つの部屋が並んでいる。リテラシーセンター,アダプティブサービス(障害者向け),コミュニティ・リソース・センターである。最後のコミュニティ・リソース・センターには,ソーシャルサービス・リエゾンやコミュニティ・リソース・スペシャリストが滞在している。食料,住宅,法律,医療などに関する相談を受け,適切な機関への紹介を行っている。
近くには ReflectSpace と呼ばれるギャラリーがある。これは2017年に,人道的な残虐行為に向き合う空間として議会の要請により設けられたものである4。これまでに,アルメニア人虐殺,慰安婦問題,日系人強制収容所などが取り上げられてきた。訪問時は改修中であった。返却機として,返却ボックスに入れられた図書を自動的に仕分ける大型の機械があった。北欧の図書館でよく見かけたものだったが,北米ではあまり見ることがなかった。右手側のスペースにはノンフィクションを中心とした書架が並んでいる。奥にはグラフィックノベルとマンガのコーナーがあり,日本のコミックも多く見られた。多言語図書も所蔵されている。日本語資料もあるが,特にアルメニア語資料が充実していた。この地域にはアルメニア系住民が多く居住しているためである。近くには「ジェノサイド・コーナー」があり,アルメニアのジェノサイドに関する資料が集められていた。
2017年のリノベーションに合わせてメーカースペースも設けられている。職員が常駐し,3Dプリンター,製図用タブレット,ミシンなどが設置されていた。また,録音などができるサウンドスペースも併設されており,利用頻度は高いとのことであった5。OPACにはBiblioCommonsが使われている。資料にはRFIDタグが貼付されている。複本はフィクション,ノンフィクションともに2冊程度のものが多かった。壁際にはむき出しのコンクリートを活かした小さな閲覧席も数多く設けられている。CD,DVD,雑誌も所蔵されているが,雑誌はそれほど多くなく,電子雑誌への移行が進めているとのことであった。
中央カウンター横には2階へ上がる階段があるが,これもリノベーションに伴って新設されたものである。2階には児童室がある6。空間として完全に分離されているため,音が外に漏れにくい。中央には円形のスペースがあり,その周囲に児童書が排架されている。壁には動物などが大きく描かれていたが,いずれも絵本に登場するモチーフである。天井にはうろこのような模様が描かれている。これはアルメニアの伝統的な模様であるという。奥には長細いの部屋があり,こちらは年長の子どもが静かに読書できるように空間を区切っているとのことであった。
2階にはガラス張りのTEEN向けスペースもある7。ソファや机がゆったり配置された大きな部屋と,グループ学習用のワークスペースに分かれている。大きな部屋にはゲームルームもある。訪問時は障害のある人たちのアクティビティに利用されていた。興味深いのは,このTEENスペース内には資料が排架されていない。TEEN向け資料は部屋の外側のフィクションの書棚近くに置かれていた。ほかに,多目的に利用されるオーディトリアムも設けられている。
ノンフィクションが配置されているフロア上部にフィクションが排架されている。ミステリーやサイエンスフィクションは別置されていた。グレンデール・ローカル・ヒストリー・ルームもある。通常は閉まっており,予約制で利用を受け付けているとのことであった。地域資料用の小さな専用の書庫もある。ローカルヒストリーの関係で,1階には地域の写真を掲示するコーナーがあり,「写真についてなにか知っていることがあったら教えて」と呼びかけていた。地域住民の知恵を借りるのはおもしろい。
以下,興味深い取組について述べる。この図書館は州立図書館の California Revealed という事業に参加している8。これはカリフォルニアの歴史資料を保存・共有するためのプロジェクトで,図書館が所蔵する地域資料のデジタル化と保存を支援するものである。メタデータは参加機関が付与する。デジタル化された資料は California Revealed 上で公開される。あわせて Internet Archive,DPLA,Calisphere などからも検索可能である。ただし,2025年6月以降,トランプ政権下での IMLS の機能縮小により,資金が停止されている状況にあるという。
2点目として,ウェブページ上の「ライターズ・コーナー」でセルフパブリッシングを積極的に支援している点である9。著作を公表したい利用者は,まず Pressbooks を用いて電子書籍を作成する。グレンデール図書館経由でアクセスすれば,Pressbooksを無料で利用できる。作成した電子書籍はPDFやEPUB形式で書き出すことが可能である。完成した作品は Indie Author Project に投稿することで,グレンデール図書館の Biblioboard 上で公開される。利用者は Biblioboard を通じて,作品を探し読むことができる。さらに,Library Journal が自費出版作品の中から優れたものを選定しており,それに選ばれると北米各地の Biblioboard 参加館で公開される10。日本でも多くの投稿サイトがある。そうした作品を図書館の電子書籍で公開してみてはどうだろうか。
3点目として,ヴァーチャル・オーサー・トークの取り組みも興味深い11。比較的高い頻度で著名な作家が登壇しており,2025年10月にはノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイ氏も登壇している。これは Library Speakers Consortium によるもので,ウェブページによれば1,500以上の図書館が参加しているという12。これに参加することで,ライブイベントや過去イベントへのアクセスが可能であるという。ウェブだからこそ実現できる取り組みであり,比較的安価に著名人のイベントに参加できる点は,確かに魅力的である。
全体として,ブルータリズム建築の特徴をうまく活かしたリノベーションが行われていた。ゆったりとしたスペースが随所に設けられ,滞在型の公共図書館として,空間づくりに成功している印象を受けた。






オールド・タウン・ニューホール図書館
サンタ・クラリタ市の公共図書館である13。ロサンゼルス市の北に位置している。サービス対象人口は約23万人である。サンタ・クラリタ市の図書館は3館で,中央館に位置づけられる図書館はない。図書館スタッフは64.45人で,うちALA-MLIS保持者は23人であった。物理資料の貸出点数は約91万点で,貸出密度は3.9である。電子資料の貸出は約28.7万点であった。
この図書館は2012年に建設された。環境配慮型建築物としてLEEDのゴールド認証を取得している14。通り側から入館するとすぐにスタンディング型のカウンターがある。反対側にも入口が設けられていた。1階には児童コーナー,TEENのコーナー,ミーティングルームなどがある。児童コーナーの資料としては,フィクション,ノンフィクション,伝記,グラフィックノベル,絵本,子ども向け古典,初歩的な読み物,シリーズ本,多言語図書(スペイン語),DVDなどが排架されていた。中に「Yawáyro」と書かれたプラスチックケースがある。これはこの地域にもともと居住していたインディアンであるタタビアム族の伝統や文化を伝える物語などをまとめたものであった15。
TEENコーナーには,フィクション,ノンフィクション,グラフィックノベルが排架されている。興味深かったのは,図書,情報,ものを組み合わせたバッグである。テーマは,ボディイメージ,鬱,感情のコントロール,マインドフルネスなどであった。マインドフルネスのバッグには,関連図書5冊,情報シート2枚,カードデッキが入っている。これらは図書館スタッフがテーマを考え,資料やツールを組み合わせて作成しているとのことであった。この階には,スタディールームやコンピュータラボもある。コンピュータラボの前にはデルのラップトップキヨスクが設置されていた。この図書館もパスポートサービスを行っている。
2階へ上がる階段には地域の歴史的な写真が飾られていた。天井や内装には木材が多く使われており,全体に温かみのある空間であった。2階左側には,フィクション,ノンフィクションを中心に資料が排架されている。ほかにペーパーバック,大活字本,多言語図書(スペイン語),新刊図書,オーディオブックなどもあった。木で組まれた壁のない部屋のような閲覧席が設けられていた。ここは閲覧スペースのアクセントになっている。平日の午後に訪問したが,利用者は多く,長時間滞在している様子が見られた。窓に向いたソファー席もあり,そこには行政資料がファイルにまとめられている。「Read Local Authors」という段もあり,地域の著者による図書が紹介されていた。
返却には Lyngsoe Systems 社の機器が用いられていた。自動貸出機は EnvisionWare のものである。RFIDが導入されていた。請求記号は DDC / 著者の姓 / 出版年 で,出版年がすぐ分かるようになっていた。複本は2〜3冊のものが比較的多く見られ,書棚は最上段を外した5段である。2階の右側にはPC席がある他,学習室が3室設けられていた。ソファのある閲覧スペースもある。ここでは閲覧スペースを広く確保し,ゆったりとした空間づくりを行っている。この階にはヘリテージルーム(地域資料)も設けられていた。
興味深い点として,まず,運営形態の変化がある。以前,この図書館は LS&S 社にアウトソーシングされていたが,2018年に市の直営に戻されている16。その前はロサンゼルス・カウンティ図書館であった。短期間のうちに,カウンティ,LS&S,市直営と運営主体が変わったことになる。ただし職員の継続性は一定程度保たれたようで,LS&S 社から市への移行時には,4つの管理職ポストのうち3つは同じ職員が引き継いだという17。報道によれば,運営を市に戻すことで年間約40万ドルの経費削減が見込まれるとされていた。
もう一つの点は,ホームレスを巡る市の方針である。サンタ・クラリタ市では2018年にホームレスに関する条例が議会で可決されている。それにより,公道での座り込みや車内での睡眠に加え,図書館を含む公共施設内での睡眠も禁止された18。これは反ホームレス法とも呼ばれ,全米各地で同様の条例が制定され,人権の観点から議論や訴訟の対象となっている。私もうっかりすると図書館で眠ってしまいそうになることもあるが,この図書館ではそれはできない。



ウェスト・コビーナ図書館
ロサンゼルス・カウンティの公共図書館であり19,近くには市役所がある。なお,ロサンゼルス・カウンティ図書館全体については別に書いたので,ここでは主に図書館自体について述べる。また,同じカウンティ立のウェスト・ハリウッドの図書館で書いたこともここでは省略する。この図書館は1961年に設置され,1975年に大きな改修が行われている。また,2024年に大規模なリノベーションを実施している。
図書館は2階建てで,2階部分は主に児童向けのスペースである。全体として,児童のためのスペースが比較的大きく確保されている印象であった。入口を入ると,右手に友の会の書棚が設けられている。一部は図書館の廃棄図書であった。常駐のスタッフはおらず,ドネーションと書かれた箱が置かれていた。その先にはミーティングルームがある。比較的大きな部屋で,各種イベントに使われている。ズンバのクラスなどが開催されている。カメラ付きのディスプレイが設置されており,会合などで利用されているという。
ゲートを通過すると左手に総合カウンターがある。入口を背にして見ると,右側からフィクション,壁際にペーパーバック,多言語図書(中国語とスペイン語),行政資料(ウェスト・コビーナ市,ロサンゼルス・カウンティ,カリフォルニア州)が配置されている。中央から左側にかけてはノンフィクション,TEENコーナーがある。ノンフィクションのDVDは図書と混配されていた。中央の手前には,CD,DVD,オーディオブック,HOLDS,Kindle機器の貸出などがある。このうち,CDやオーディオブックの需要は落ちてきているが,DVDはオンラインサービスでは人気作品に利用が集中しがちなため,依然として需要があるとのことであった。
入口付近には「新年」を特集した展示がある。また「Blinde date with Library」も行われていた。これはロサンゼルスの公共図書館でも見かけた。点字図書のメモリーの貸出も行われている。Braille Institute Library が貸出しているデジタルプレイヤー用のメモリーがある。バーバンク中央図書館でも見たが,これまで訪問した図書館の中では量が最も多い。フィクションなどでは2冊程度の複本が多く見られた。この点について尋ねると,基本的には利用者のニーズに応じて複本数を調整しており,利用が集中している間は冊数を増やし,落ち着けば2冊程度に戻すという。
資料の購入は分館では行っておらず,本部が集中的に行っている。目録作成も同様である。分館からは,地域の人口構成や住民が使用する言語などのデータを毎年本部に提出し,それをもとに選書が行われているという。RFIDは導入されていない。棚差しが非常に多く,日本人の感覚からすると資料を探しやすい。
フロア左側にはPC席が約20席設けられている。左奥にはセミナールームがあり,ここにもカメラ付きディスプレイが設置されていた。近くにはガラス張りのスタディールームがある。これらは2017年のリノベーション時に整備されたものである。また,新型コロナウイルスの検査キットや「Form1040」と書かれた小冊子が置かれていた。後者は確定申告に使用されるもので,他の図書館でもよく見かけるものであった。
2階は中央にカウンターがあり,大きく2つのスペースに分かれている。入口を背にして左側は,イベントなどが開催されるスペースで,絵本が排架されていた。訪問時にはお話し会が行われており,かなり多くの親子連れが参加していた。赤ちゃん向けと未就学児向けに分けて実施されており,いずれも非常に人気が高い。予約制で,直近の回は全て満席になっていた。毎回テーマが設定され,異なる内容で実施されている。図書館スタッフが子どもを上手に巻き込みながら進行していた。
右側の部屋には,児童向けのノンフィクション,フィクション,Vox Books,児童向けDVDなどが排架されている。このスペースには個別指導(チューターリング)と宿題支援を行う机が置かれている。個別指導用の机が3つ,宿題支援用が1つであった。その前の窓際にはソファーが置かれている。子どもの送り迎えに来た保護者が,そこで子どもの学習の様子を見守ることもあるという。パソコンはAWEのものと通常のものがあり,AWEの端末はインターネットには接続されていない。
興味深かった点を2点述べる。1点目はリノベーションについてである20。図書館は,約1,260万ドルを投じて2024年にリノベーションを行った。家具,書棚,床材が新しくなり,ティーン,児童,成人の各コーナーが現代的な利用に対応する形に更新されたという。以前の姿を知らないので比較はできないが,1階中央付近や2階の窓際などに,ゆったりとした閲覧スペースが多く設けられている点が印象に残った。リノベーションでは書棚を減らし,閲覧や活動のためのスペースを増やしたとのことである。これは利用者の利用形態が以前と変化してきたことと関係しているという。実際,訪問時も,多くの利用者が個人やグループで来館し,さまざまな形で使っていた。図書を減らしたにもかかわらず貸出点数は増加しているという。それは,必要な資料を探しやすくなったことが一因であると分析していた。資料を予約して借りるケースも増えているという。
2点目は個別指導プログラムである21。これは2026年1月から開始されたものである。少人数の対面による個別指導で,読解力と算数の学力向上を目的としている。対象は1年生から6年生で,春のセッションは1月から5月までである。児童は,週1回,60分のセッションに参加する。講師1名につき生徒は最大3名までである。講師は StudentNest 社から派遣される。教材は図書館が提供する。基本的には学校の授業についていけるようにする補習である。ここまで図書館が学習支援に深く関わっているのある意味ですごい。






アーケイディア公共図書館
アーケイディア市の公共図書館である22。ロサンゼルスのダウンタウンから見て北西に位置する。図書館は1913年に設立された。当初はカウンティの図書館であったが,その後,市立図書館となった。現在の建物は1961年に設置され,1995年から1996年にかけて改築されている23。館内にはやや古さを感じるところもあり,TEENコーナーでは水漏れで一部立ち入り禁止になっていた。この地域は中国系住民が多く,図書館スタッフにも中国系の職員が多かった。2020年の国勢調査によると人口の64.9%がアジア系である24。
サービス対象人口は約5.6万人で,市内の図書館は1館である。図書館スタッフは24.25人で,うちALA-MLSは11.5人と,比較的ライブラリアンの比率が高い。物理資料の貸出点数は46.9万点で,貸出密度は8.4と高い。電子資料の貸出は52.2万点で,物理資料を上回っている。電子資料のうち,最も貸出が多いのは e-Audio で29.9万点であった。e-Audio には,オンラインでアクセスするオーディオブックや音楽が含まれている。来館者数も34.1万人と多く,全体として利用が非常に活発である。
入口を入ると,友の会が運営する書店がある。友の会では,eBayでもブックストアを開設している25。その近くに集会室があり,各種イベントやTEEN向けの活動に使われている。毎週月曜日には英会話教室が開催され,小グループに分かれて会話と発音の練習が行われている。2025年6月の図書館委員会の議事録によれば,各回平均44人が参加する人気のイベントであるという26。
ゲートを通ると,左手に比較的大きなカウンターがある。自動貸出機もある。カウンター前のフロアには,新刊図書,CD,DVD,オーディオブックが並んでいる。但し,図書館委員会の2025年5月の議事録によれば,CDと後述するPLAYWAYの購入は需要を考慮して停止されたとのことであった。新刊図書の展示には中国語図書が一画を占めている。コピー機も設置されており,スキャナーによる電子的複製も可能である。スキャン料金は1枚5セントであった。日本でも,著作権法第31条の範囲内であれば,デジタル複製は可能なのではないだろうか。
コピー機の横では「Travel Train」と題された展示がされていた。そこには,アーケイディア歴史コレクションから写真,図書,皿などが展示されていた。かつてこの地域を走った汽車に関する特集である。その近くにはキャリア・ジョブ・インフォメーションの書棚があり,働く上で役立つ資料がまとめられている。壁には「You are never too old to set another goal or to dream a new dream」という言葉が掲げられていた。また,市民寄贈によるメイフラワー号の精巧な模型が展示されていた。プラモデルではない! デンマークから移民として来た市民によるものであるという。右奥には,PCが並ぶコミュニティ学習・技術センターがある。左奥には,フィクション,大活字本,多言語図書(韓国語,スペイン語,中国語)が並び,閲覧スペースも設けられている。その前には,1969年までのLIFE誌やTIME誌が合冊され排架されていた。
フロアの中央にインフォメーションカウンターがある。その前の書棚には地域のチラシコーナー,回想法のキット(メモリー・ケア・キット),地域の学校の卒業アルバムなどが置かれていた。近くには読書会用の資料が集められており,各タイトルが複数冊そろえられている。2004年以降,読書会で扱われた図書のタイトルリストもファイリングされており,読書会で取り上げる図書の参考になっている。さらに,アーケイディア市の行政資料の棚があり,シティ・カウンシルや図書館委員会のアジェンダと議事録,学校区の資料,地域計画に関わる委員会資料,条例集,予算書などが並んでいる。シティ・カウンシルについては会議を録画したDVDの貸出も行っていた。ウェブでの公開も案内されていたが,物理資料として閲覧できるのも便利である。
OPACはAspen Discoveryであり,請求記号はDDCと著者の姓の頭文字1文字という簡単な方式であった。フィクションには請求記号が付与されていない。フィクションの複本はそれほど多くないが,タイトルによっては3冊あるものも見られた。資料にはRFIDが付与されている。レファレンス資料は混配され,「Library Use Only」と表示されていた。
インフォメーションカウンターの先にはノンフィクションが排架されている。奥にはTEENコーナーがあり,PCが4台設置されていた。ソファや机も多く,滞在しやすい。TEENコーナーにはフィクション,ノンフィクション,グラフィックノベル,テスト準備用資料が排架されている。テスト準備の棚にはCliff’s Notesのシリーズが並んでいた。これは文学作品などを要約した学習ガイドである。資料の傷み具合から,よく利用されていることが分かった。試験対策資料は大人向けコーナーにもあり,大学院向けのGMAT / MCAT,大学進学向けのGED / TOEFL / TOEIC,さらに職業関連のASVASなどこちらも充実していた。
児童コーナーへ向かう通路には,英語学習資料や大人向けのグラフィックノベルが排架されている。アメリカ建国250周年の展示も行われていた。パスポートサービス用の部屋があり,市民が手続きを行っていた。隣にはアーケイディア歴史室があり,第二次世界大戦中に日系人が収容されたサンタアニタ競馬場に関する写真など,貴重な資料が保管されている27。
その奥に大きな児童コーナーがある。ここはジェリー・ブロードウェル児童室と呼ばれている。地域に貢献のあった人物の名前である。児童コーナーには Vox Books や PLAYWAY のオーディオブック,学習用タブレットがあり,特に VoxBook は人気が高いという。展示ケースでは,市民による子ども向け展示が行われている。「子ども向け」であることを条件に自由に展示できる。アヒルの人形,アメリカンフットボールの選手カード,キティちゃんのぬいぐるみなど,自由な感じの展示である。
児童向け資料は,フィクション,ノンフィクション,ポピュラーキャラクターブック(ポケモンなど),絵本,DVD,おとぎ話などがある。フィクションは学年別に幼稚園から2年生,3〜4年生,5〜6年生と分けられていた。ノンフィクションの棚差しには,文字とともに絵が描かれているのがよい。シリーズものは同一著者の作品がまとめられて並んでいた。こうした細かな配慮が随所に見られる。奥には読み聞かせ用の部屋があり,子どもが座る席には段差がついていた。カウンターには「ブラック・ヒストリー月間アクティビティ・キット」が置かれていた。月ごとのテーマに合わせて作成されている。今月のものには,特集の解説,図書リスト,CDリスト,工作キットが含まれており,無料で配布されていた。図書だけでなく,多様なメディア紹介や工作が組み合わされている点がとてもよい。
児童コーナーの一画には家庭学習法やその教材(教科書や問題集)などがまとめられていた。教材はコピーして使ってもらうことを前提としているとのことであった。ホームスクール用の資料も含まれている。PCやAWE端末もあり,AWEは人気が高いが,定期的なバージョンアップが必要とのことであった。
最後に,興味深い点を二つ挙げたい。一つ目はメモリーケアキットである28。図書館には全部で8セットあり,介護者向け,認知症の初期・中期・最終段階,1940年代,1950年代,1960年代といったテーマがある。このうち,例えば1950年代のセットには,図書3冊,CD3枚,DVD5枚,ゲームセット1つが含まれていた。図書には当時の写真が多く掲載されており,エリザベス女王の戴冠やマリリン・モンローの写真などが収録されている。この図書は回想法に用いる図書として販売されているもので29,図書館ではそれらを購入し,組み合わせて提供しているという。
二つ目は補助サービスである。日本で言う障害者サービスに相当するが,ここでは「補助サービス」(Assistive Service)と呼ばれている30。視覚障害者向けの支援が中心であるが,来館困難者も含まれている。この図書館では,サービスがチラシに整理されていたので紹介したい。まず,館内のPCにはMerlin Eliteという拡大読書機が導入されている。これにより拡大表示に加えてOCRによる文字認識とText-to-Speechによる読み上げができる。さらに,ADA(Americans with Disabilities Act)準拠のPCが設置されている。これにより,画面拡大や読み上げなどが可能である。これらの設備は州立図書館とIMLSからの助成により整備されたという。ほかにも,大活字本,PLAYWAY,オンラインで利用できる電子書籍やオーディオブックが紹介されている。来館できない利用者には,ボランティアが図書を届けるサービスもある。また,図書館を介してBraille Institute Library から録音図書を借りて提供している。このように,日本のような対面朗読はないものの,州の機関と連携しながら充実した支援が行われていた。
それほど大きくなく,また施設としては多少,古くなってきている図書館だが,様々なサービスを丁寧に提供していたのが印象的だった。よい「歳」の取り方をしている図書館であった。






- https://www.glendaleca.gov/government/departments/library-arts-culture ↩︎
- https://www.laconservancy.org/learn/historic-places/glendale-central-library/ ↩︎
- https://www.glendaleca.gov/Home/Components/News/News/9207/16 ↩︎
- https://www.reflectspace.org/about-the-gallery ↩︎
- https://www.eglendalelac.org/makerspace ↩︎
- https://www.eglendalelac.org/childrens-space ↩︎
- https://www.eglendalelac.org/teen-space ↩︎
- https://californiarevealed.org/ ↩︎
- https://www.eglendalelac.org/writerscorner ↩︎
- https://indieauthorproject.com/iap-select/ ↩︎
- https://libraryc.org/glendalelibrary ↩︎
- https://libraryc.org/ ↩︎
- https://library.santaclarita.gov/ ↩︎
- https://lpadesignstudios.com/projects/old-town-newhall-library ↩︎
- https://www.tataviam-nsn.us/community/yawayro/,https://www.alsc.ala.org/blog/2020/02/yawayro-book-kits/ ↩︎
- https://signalscv.com/2018/01/council-unanimously-votes-take-back-library-operations/ ↩︎
- https://www.hometownstation.com/santa-clarita-news/community-news/santa-clarita-public-library-re-hiring-for-all-positions-in-preparation-of-city-takeover-238531 ↩︎
- https://www.latimes.com/local/lanow/la-me-ln-santa-clarita-homeless-laws-20180627-story.html ↩︎
- https://lacountylibrary.org/location/west-covina-library/ ↩︎
- https://lacounty.gov/2024/06/04/la-county-library-unveils-12-6-million-renovation-at-west-covina-library-with-special-open-house-celebration-featuring-supervisor-hilda-l-solis/ ↩︎
- https://lacountylibrary.org/star-tutoring/ ↩︎
- https://www.arcadiaca.gov/government/library/index.php ↩︎
- https://www.arcadiaca.gov/government/library/about_us/general_information/index.php ↩︎
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2_(%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%A2%E5%B7%9E) ↩︎
- https://charity.ebay.com/charity/i/Friends-of-the-Arcadia-Public-Library/393084 ↩︎
- https://www.arcadiaca.gov/government/boards_commissions/library_board_of_trustees.php ↩︎
- https://en.wikipedia.org/wiki/Santa_Anita_Assembly_Center ↩︎
- https://discovery.arcadialibrary.org/Union/Search?q=memory+care+kit ↩︎
- https://www.barnesandnoble.com/w/1950s-memory-lane-hugh-morrison/1126676515 ↩︎
- https://www.arcadiaca.gov/government/library/services/assistive_services.php ↩︎