以前紹介した califa では,教育・研修部門としてInfo Peopleという部門がある1。ここでは,カリフォルニア州に限らず北米の図書館スタッフに対して,継続教育と専門能力開発の機会を提供している。提供されているプログラムは,対面とオンラインで実施されている。予定されている講座を見ると,図書館サービスの基礎,レファレンスサービス,図書館の健康関連プログラム,ティーンサービス,図書館経営など,基礎的な内容が多い。それぞれの講座は6週間にわたって開講される。受講料は200ドルであるが,カリフォルニア州の図書館スタッフには一定数の無料枠が設けられていた。これらの講座のうち,「図書館サービスの基礎」はLSSCの認証を受けている。このLSSCという制度が興味深かったので,ここで紹介したい。
LSSCの正式名称はLibrary Support Staff Certificationである2。ライブラリアンではない図書館スタッフ(MLSを持たない)を認証する仕組みである。図書館支援スタッフが質の高いサービスと効率的な運営に貢献することを目的としている。実施主体はアメリカ図書館協会(ALA)のAllied Professional Association(ALA-APA)である。この制度はIMLSの助成金によって2010年に開始されている。認証を受けると認証図書館支援スタッフ(CLSS)になる。認証は直接就職に結びつくとは限らないようだが,認証を受けていること自体が一定の評価につながる可能性が指摘されている3。
認証を受けるには,高等学校卒業資格またはそれと同等の資格を有していることが必要である。それに加えて,過去5年以内に最低1年間(1,820時間)図書館で勤務またはボランティア活動を行った経験が求められる。その上で必修3科目と,選択7科目の中から3科目を修了することで認証を受けられる。必修科目は「図書館サービスの基礎」「コミュニケーションとチームワーク」「テクノロジー」である。選択科目は,「アクセスサービス」,「成人向け読書相談サービス」,「目録作成と分類」,「コレクション」,「レファレンス資料および情報サービス」,「管理と経営」,「青少年サービス」である。6科目を履修するにはおおむね4年程度かかるとされている。それぞれコンピテンシーが明示されている。
LSSC自体は教育プログラムを直接提供しているわけではない。その代わり,図書館関係の教育機関が提供する講座を承認する仕組みである。申請希望者は承認された講座を自ら受講する。提供機関にはコミュニティカレッジが多く,Library TechnicianやLibrary Assistantを目指す学生向けに開講されている科目が多い。コミュニティカレッジではLSSCの承認を受けていることをアピールしている例も見られる。最初に紹介したInfo Peopleのような研修プログラムも承認対象になっている。受講費用は1科目800ドルを超える場合も見られ,比較的高価なものもある。実施形態はオンラインが多いが,対面形式も存在する。コミュニティカレッジで Library Technician 等の修了証を取得している場合は,勤務要件を満たすことで認証申請が可能になる。ただし,これは「認定協定」を結んだ教育機関に限られる。
登録料は350ドルで,ALA会員の場合は325ドルである。また,認証の有効期間は4年間である。更新にはその間に研修などの学習活動を32時間受講する必要があり,そのうち4時間以上はテクノロジー関連の研修が求められる。現在有効の認証者は355名である。カリフォルニア州では54名であった。訪問した図書館の中ではサンフランシスコ公共図書館やサンタ・フェ・スプリングス・シティ図書館などがあった。
アメリカではALAによるアクレディテーション制度が存在する。このことは専門職制度の代表例として語られることが多い。しかし実際には,多くの図書館でライブラリアンは職員全体の2〜3割程度であり,残りの7〜8割は特定の資格を求められていないことが多い。この制度は,そうした状況を補完する試みの一つとして位置づけることもできる。特に,求められるコンピテンシーを明示している点は興味深い。必要な能力を制度側が具体的に示しているわけである。また,科目を承認する仕組みによって教育内容の標準化が図られている点も特徴的であった。一方で,認証者が355名というのは物足りない。この制度はライブラリアン資格への接続がない。そのため,LSSC認証に時間と労力を費やすことの意義をどの程度見いだせるかが,制度の普及に影響しているように感じられた。