行ったところ(2/17〜)

ホッパーズ・クロッシング図書館

メルボルン都市圏内のウィンダム市にある1。サービス対象人口は33.7万人で,物理資料の貸出点数は160万点,来館者数は98.9万人であった。貸出密度は,物理資料が4.8,電子資料を含めると5.4である。フルタイム換算の職員数は80.4人である。図書館は,パシフィック・ウェリビーという巨大ショッピングモールにある。モール内にはユニクロも入っていた。

図書館は2階にある。ワンフロアであるが,かなり広い。平日午後に訪問したが,館内に滞在する利用者は多かった。入口を入ると,自動貸出機が3台設置されている。訪問時は旧正月の時期だったため,中国に関する図書や中国をテーマとした展示が行われていた。入口近くには総合カウンターとインフォメーションカウンターがあり,新刊図書や予約資料もこの周辺にあった。

コレクションは,カウンター付近からフィクションが並ぶ。そのうち,ロマンスや犯罪小説は別置されていた。その奥にノンフィクションがある。ノンフィクションは他の図書館と同様,テーマ別排架であった。ここではその中をさらに細かく分類している。たとえばビジネス & ITというテーマでは,マネージメント & リーダーシップ,マーケティング,キャリアなどに分かれている。テーマ内はDDC順であった。左奥にはTEENコーナーがあり,フィクションとグラフィックノベルが排架されている。このコーナーも多くの利用者がいた。

フロア中央には雑誌,新聞,大活字本,DVD,オーディオブック,多言語図書がある。ここは赤いソファーも多く置かれている。多言語図書は,中国語とイタリア語であった。右側にはPC,プリンター,コピー機,ドキュメントスキャナーなどが設置されている。図書館資料をコピーする利用者は見かけなかったが,PCで作業したものを印刷する人は多かった。この館には北欧でよく見たHubletも設置されていたが,訪問時に利用はされていなかった。部屋としてはコミュニティ・ラーニング・ルームと静寂室があり,いずれも開放され,多くの利用者が利用していた。書架はここも4段で,一番上の段は面陳用である。図書には裏表紙の内側にRFIDが貼付されていた。OPACで検索すると,サム・メリフィールド図書館と同様に,他自治体の図書館蔵書も一括して検索できる仕組みになっていた。

児童コーナーには,キッズフィクション,ジュニアフィクション,ジュニア・グラフィックノベル,バイリンガル・ストーリー(2言語併記の図書),ラーニングリソース,絵本などが排架されている。ノンフィクションは一般向けと同様にテーマ別排架であり,「おもしろ事実」(Fun Facts),「つくってやってみよう」(Things to make & Do),「動物」,「おはなしと言葉遊び」(Tales & Rhymes),「環境と科学」などのテーマが設定されていた。さらにその中は細分化されており,たとえば「つくってやってみよう」では,クッキング,レゴ,芸術,絵,工作,マインクラフト,スポーツなどに分かれている。DDCに必ずしもこだわっていない。

ラーニングリソースの棚には,文字を習い始めたばかりの子ども向けのDecodable関連資料が充実している。ABC Reading Books,Decodable Readers,Era Phonics Decodables,Fitzroy Readers,Little Learner Loves Literacy,Handwriting Practiceといったシリーズが並んでいた。この図書館でも,就学前までに1,000冊読むことを目標とした「1,000冊チャレンジ」が実施されていた2

右奥にはローカルヒストリールームがあり,系図データベースの「ファミリーサーチ」も利用できる。マイクロフィルムがキャビネットに収められており,ビクトリア州だけでなく,オーストラリア各州,さらにはニュージーランドの資料も含まれていた。内容も多様で,遺言,第一次世界大戦,エドワード朝等に関する資料などがあり,充実している。図書館では毎月1回,ライブラリアンが主催するファミリー・ヒストリー・グループが開催され,新しい情報源を学んだり,知識を共有している。

館内での過ごし方を見てみると,読書をしている人,スマートフォンをじっくり見ている人,眠っている人,PCで作業している人,知り合いと会話をしながら作業している人など,さまざまであった。意外と多かったのが電話をしている利用者である。オフィスのように使っている人もいるようであった。館内は常にざわざわしており,会話をしていてもあまり気にならない雰囲気であった。

プログラムとしては,第二言語話者向けの英会話,麻雀,若者の夜(Youth Night),浜辺でのライムタイムなどがあった。若者の夜(18:30〜20:30)は13歳から18歳が対象で,フォトブース,ミニゴルフ,ゲーム,ダンジョンズ&ドラゴンズ,宝探し,占い,有名人そっくりさんコンテストなどをやるとのことである3。なかなかおもしろそうである。浜辺でのライムタイムは,ウェロビー・サウスビーチで30分ほど,お話しやダンスを楽しむ内容である。また,英語を読むサークルもあった。

最後に,興味深かった点を二つ挙げたい。一つ目は,ボランティアの募集である。チラシによると活動内容は排架に限らず,イベントの企画,さらにはコーディングやチェスまで含まれている。特に若者のボランティアを募集しており,チラシには,若者の経験を広げることや,図書館の裏側を知る機会になるよう設計されていることが記されていた。ボランティア活動を教育的機会に位置づけているように感じた。

二つ目は,ホームラーニングの学習者向けセッションである4。ビクトリア州では,登録制であるが学校に行かず家庭で子どもを教育するホーム・ラーニングが認められている5。そうした子どもを対象に,学期中に2〜3回,セッションを実施している。直近では,5歳から7歳を対象に,「お話しとクラフト」の会が開かれる。また,メーカースペースを備えた図書館では,8歳から14歳を対象にSTEAMラボを活用したセッションも行われている。そうした家庭に他の子どもと接するよい機会になるように感じた。

ギズボーン図書館

メルボルンから北西に約50キロ離れた,マセドン・レンジズ・シャイアという自治体にある6。運営主体はノースセントラル・ゴールドフィールズ地域図書館法人である。グレーター・ベンディゴ市,ロッドン・シャイア,マセドン・レンジズ・シャイア,マウント・アレクサンダー・シャイアの4自治体が参加している。この法人は10館の図書館と,Agenciesと呼ばれる7つのサービス拠点を運営している。

統計によると,サービス対象人口は20.8万人,職員数はFTE換算で54人である。物理資料の貸出は96.1万点,電子書籍の貸出は58.6万点,来館者数は85.9万人である。電子書籍の貸出比率が高い。また,来館者数が物理資料の貸出点数に近く,来館利用も活発である。貸出密度は物理資料が4.6点,電子書籍を含めると7.4点である。

この図書館システムがカバーする面積は12,979km²で,東京都の約6倍である。広大で人口が希薄なため,Agenciesが設けられているわけである。Agenciesには定期的に職員が訪問し,予約資料を提供したりしている。職員が常駐するのは週,曜日ともに限られている。電子書籍利用が多いのもこうした地域性と関係していると考えられる。

図書館は,地域の商業施設が集まるエリアの近くにある。メルボルンの中心街では,アジア系,インド系,アラブ系などを多く見かけ,多民族都市的な雰囲気があるが,ここではそうした背景を持つ人はあまりみかけない。建物は1980年に建設され,2009年に改装されている。さらに2026年4月からは,リビング・ライブラリー・インフラ・プログラムによるリノベーションが予定されている。このことは別途述べたい。

平屋建ての小規模な図書館で,系図資料を集めた部屋への入口が別にある。訪問時は閉まっていた。ここではギズボーン系譜学グループが活動している7。館内では親子連れ3組とPCを利用している人が2人おり,それ以外にも利用者が頻繁に来館していた。入口を入ると正面にカウンターがある。自動貸出機も2台設置されていた。入口周辺には予約資料,パズルの交換コーナー,特集展示,種の図書館がある。また,「We welcom everybody」と書かれた歓迎のポスターと,館内の行動ルールを示す Code of conduct のポスターが掲示されている。あらゆる人を歓迎する一方,館内で禁止する行為を明示することはヨーロッパ,北米でも多く見られた。

入口を背に左側には大人向けのフィクションが並び,奥に新聞・雑誌,さらにTEENコーナー(グラフィックノベルとフィクション)がある。TEENコーナーにはビーズソファが置かれていた。手前にはPCコーナーがあり6台設置されているが,訪問時は2台が使用されていた。奥にはブラウジングコーナーがある。キッチンも併設され,利用者が自由に使える。サム・メリフィールド図書館では,冷蔵庫が置かれていたが,こうした設備があるのは興味深い。

面陳されている図書の中には,職員の名前付きの staff pick (推薦図書)がある。書棚は移動式の4段または5段で,最上段は面陳用が多い。装備は,ハードカバーには特に何もしておらず,ペーパーバックにはブッカーがかけられていた。RFIDタグは裏表紙の内側に貼付されている。OPAC は Spydus が使われていた。

入口から見て右側には,大活字本,ノンフィクション,伝記,視聴覚資料(オーディオブック,DVD)が並んでいる。児童用資料としては,ボードブック,絵本,簡単な読み物,児童向けフィクションとノンフィクションなどが排架されている。児童コーナーの奥には屋外の中庭があり,遊び場として使われていた。壁で他の空間と区切られた安全な場所で,ベンチも設置されているため,子どもを安心して遊ばせることができる。実際に2組の親子が利用していた。

興味深い点を2点挙げたい。1点目は,ノースセントラル・ゴールドフィールズ地域図書館法人についてである8。複数自治体が法人を設立して図書館運営を担う方式は,ジーロングの図書館でも見られたものである。ここでは4自治体が参加していた。運営を担う委員会は,各自治体から議員と行政の幹部職員(マセドンは議員のみ),さらに図書館のCEOで構成されており,予算は人口比で配分されている9。2025年の住民一人あたりの負担額は28.0豪ドルであった。建物は各自治体の資産であり,運営が法人に委ねられている。

2点目は,「自動更新」(Automatic Renewals)というサービスである10。ちょうど,開始されたばかりであった。これは,資料が返却されない場合,一定の条件を満たせば自動的に貸出期間が更新されるという仕組みである。予約資料でないことや,更新回数の上限に達していないことなどが条件である。図書の場合は最大5回まで更新できる。この図書館では延滞料が廃止されており,延滞になっても料金や罰則は科されない。いちいち貸出更新の手続きをしなくてよいので利用者にとって利便性が高い一方,図書館側にとっても督促業務が不要になる利点がある。また,更新を貸出回数としてカウントすれば,統計上のアウトプットは増える。ただし,資料が書棚に戻りにくくなり,貸出中のものを借りようとしても予約から受取までに時間がかかるなど,資料アクセス面での影響も考えられる。

  1. https://www.wyndham.vic.gov.au/services/libraries ↩︎
  2. https://www.wyndham.vic.gov.au/services/libraries/early-years/1000-books-school ↩︎
  3. https://www.wyndham.vic.gov.au/whats-on/library-youth-night ↩︎
  4. https://www.wyndham.vic.gov.au/services/libraries/kids/home-learners ↩︎
  5. https://www2.vrqa.vic.gov.au/home-education ↩︎
  6. https://www.ncgrl.vic.gov.au/ ↩︎
  7. https://www.ggg.org.au/home ↩︎
  8. https://www.ncgrl.vic.gov.au/about-us/ ↩︎
  9. https://www.ncgrl.vic.gov.au/wp-content/uploads/2025/11/GLC-Annual-Report-2024-25-WEB.pdf ↩︎
  10. https://www.ncgrl.vic.gov.au/autorenewals/ ↩︎