ゴールドフィールズ地域図書館のギズボーン図書館を訪問した際,来月から図書館の改築が始まると聞いた。現在,壁で仕切られている系図資料のスペースを図書館とつなげ,あわせて多機能スペースを新設する計画であるという。さらに,ウェブによるとアクセシビリティ向上やテクノロジーのアップグレードも行われる予定とされている。この改修には州から45.75万豪ドルが補助されている1。
この改築は,ビクトリア州政府の助成制度であるリビング・ライブラリー・インフラ・プログラムによるものである2。「リビング・ライブラリー」と聞くと「人」を貸出すプログラムを連想してしまうが,ここでの living は「活気ある」といったニュアンスであろうか。図書館を施設面から現代化することを目的としたプログラムである。カリフォルニア州でも州政府の補助金により図書館の改築を進めていたが,図書館を現代的な要請に合わせて作り替えることは,その魅力を高めるうえで重要である。ここでは,ビクトリア州の取組を紹介したい。
このプログラムの目的は,ガイドラインによると地域参加の機会を促進し,地域社会を強化することにある。2024年から始まっている3。そのために,地域社会のニーズに応える図書館施設を提供することが掲げられている。州の地方政府大臣による挨拶文では,図書館は単に図書を貸出すところではなく,コミュニティ内で人々を歓迎する場となることが重要であると強調されている。また,2025年の「公共図書館大使」である児童文学作家アンドレア・ロウ氏は,図書館はコミュニティで人々がつながるためのハブであると表現している。図書館をこうした新しい姿に変革していくため,州全体として取り組むわけである。
助成金のガイドラインを見ると,具体的な支出対象として,施設のアクセス改善,地域の長期的ニーズに柔軟に対応できる空間づくり,学習機会やプログラムを増やすためのスペース整備,持続可能な施設整備などが挙げられている。助成金は,小規模枠と大規模枠に分かれており,前者は1万〜20万豪ドル,後者は20万〜100万豪ドルである。州からの助成に加え,自治体側も規模に応じた自己負担(マッチングファンド)が求められている。さらに,助成を受けた事業については,一定期間後に,運用状況を報告する義務が課されている。改築が実際に効果を発揮したかを検証することも求められているわけである。
個々の自治体が,図書館施設を新しくするための資金を単独で確保することは容易ではない。一時的に大きな支出を必要とする事業に対して,上位政府がマッチングファンドの形であっても資金を提供することは,施設更新を進める上で大きな意味を持つ。日本では,公共施設等総合管理計画に関連する事業ついて,一部で助成が行われているが,それらでは施設面積の縮減や複合施設化が求められており,図書館の将来像を描いたうえで進められているわけではない。本来であれば,目指す図書館像を視野に入れた助成が,求められるのではないだろうか。
- https://www.mrsc.vic.gov.au/About-Council/Projects-and-works/Projects/Gisborne-Library-meeting-space-upgrade ↩︎
- https://www.localgovernment.vic.gov.au/public-libraries/public-library-programs/living-libraries-infrastructure-program ↩︎
- https://www.localgovernment.vic.gov.au/__data/assets/pdf_file/0032/218768/2025-26-Living-Libraries-Infrastructure-Program-Guidelines.pdf ↩︎