図書館・情報サービス従事者向けスキル・知識・倫理のALIAフレームワーク

ALIAは,図書館・情報サービス従事者向けスキル・知識・倫理のALIAフレームワーク(ALIA Framework of Skills, Knowledge and Ethics for the Library and Information Services Workforce: the Framework)を策定している1。これは,図書館・情報サービス分野において,効果的に業務を遂行し,質の高い図書館情報サービスを提供するために必要なスキル,知識,倫理を示したものである。2023年11月に初版が公表され,2025年7月に改訂・更新されている。

このフレームワークの目的の一つは,図書館・情報サービス分野において基礎となる知識,スキル,倫理的行動を提示する点にある。また,LISコミュニティが有する専門性や価値を,目に見える形で示している点にも意義がある。日本には,専門職としての知識の範囲や倫理を体系的に示した枠組みは存在しない。しかし,専門職のあり方を理解するためには,本来不可欠なものである。たとえば,専門職とそれ以外の職との間で業務を分担する際の判断基準になるし,図書館情報専門職を養成する教育課程において何を教授すべきかを示す指標にもなる。

フレームワークは,大きく三つの要素から構成されている2。コア領域,専門分野の知識,実践的プロフェッショナリズムである。単に知識だけを列挙するのではなく,倫理的側面や実践において不可欠な要素を示している点は興味深い。以下では,説明を簡略にしてその概要を見ていく。

まず,コア領域は,すべてのLISコミュニティに関わる人に不可欠な知識,スキル,倫理とされている。ここには三つの領域があり,環境とコンテクスト,アボリジニ等の知識,文化,国に対する尊敬と承認,倫理と価値がある。このうち,環境とコンテクストは,図書館・情報サービスを取り巻く現在および過去からの環境についての知識と理解を指す。また,倫理と価値は,ALIAおよびIFLAが定める倫理綱領,コアバリュー,行動規範などを遵守することを意味している。これらは他 2 領域の基盤に位置づけられている。

次に,専門分野の知識は 8 領域から構成されている。専門職会員のうち,Associate やTechnician は,これらの分野全体について,ある程度の知識を持っていることが求められるとされている。それぞれの内容は主なキーワードで表すと以下のとおりである。

  • 情報サービス:情報ニーズ,情報探索行動,ユーザーエクスペリエンス,情報検索・評価,レファレンスサービス,研究コンサルテーション,インフォメトリクス,研究支援,
  • 情報マネージメント:情報資源の選択・評価,目録,分類,メタデータ,デジタルリポジトリ,研究データ管理,データの分析・評価・キュレーション,ライセンス供与,知的財産,著作権法,知的財産権
  • リテラシーと学習:識字,早期識字,教育,情報リテラシー,デジタルリテラシー,メディアリテラシー,文化的プログラム,ニーズ評価,コミュニティに即したプログラム
  • 技術:ILS,学習・研究データ,リポジトリ,ウェブ,eResource Management,情報プライバシーとサイバーセキュリティ,人工知能,機械学習,生成AI,ソーシャルメディア
  • アボリジニ等に関する専門知識:先住民に関する知識・情報,植民地化の歴史と遺産
  • コミュニティと利害関係者:関係者との協働に関わる倫理的問題,コミュニティの文化的・歴史的・現代的課題,インクルージョン,パートナーシップ
  • 研究活動:エビデンスに基づく情報実践,量的・質的方法,研究プロジェクト,データの解釈,オープンアクセス,オープンサイエンス
  • リーダーシップとマネージメント:革新的サービス,プログラム,プロジェクト,チェンジ・マネージメント,物理・デジタルの図書館空間設計,コミュニケーション,マーケティング,PR,データとエビデンス,ガバナンス,アカウンタビリティ,多文化,リスクマネージメント,戦略,予算

最後が,実践的プロフェッショナリズムである。ここもそれぞれの内容を主なキーワードで表すと以下のとおりである。仕事をする上での姿勢に関わるものといえよう。

  • プロフェッショナリズム:図書館コミュニティにおける道徳的・文化的・倫理的原則と責任,アドボカシー,継続的な専門能力開発,メンタリング,コーチング,研究と出版
  • 行動とスキル:自己管理,コミュニケーション能力,対人関係スキル,協働,共感,知的好奇心,反省的実践,創造的思考,クリティカルシンキング,レジリエンス

では,このフレームワークはどのように使われるのか。個人にとっては,「スキル開発とキャリアの道のりを計画するためのコンパス」と位置づけられている。自らのキャリアを切り開いていく際に,図書館・情報サービス分野のどこに力点を置くのかを考える判断材料になる,ということであろう。また,「スキルギャップ分析ツール」としての役割もあり,自分ができている部分と,そうでない部分を把握する手がかりにも活用できる。

このフレームワークは,専門職の領域を示すものであり,極めて重要である。図書館で働く人が,何を知っておくべきであり,何ができるのかを具体的に示している。ALIAが提供する研修でも,この枠組みとの対応関係が明示されている。

日本の公共図書館界では,1950年に「司書及び司書補の職務内容」が通達として出された。これによって,かつては司書の職務内容が示されていたが,現在は廃止されている。そのため,現在では,専門職として何を担当するのかが必ずしも明確に示されていない。本来であれば,JLAなどがこうしたフレームワークを示すことが求められる。しかし,その影響範囲を考えれば,非常に大きなプロジェクトとなり,容易でないことも事実である。

  1. https://www.alia.org.au/Web/Web/Careers/LIS-Framework-Pathways-Project/LIS-Workforce-Framework.aspx ↩︎
  2. https://www.alia.org.au/common/Uploaded%20files/ALIA-Docs/2025/Revised_Framework_July_2025[7].pdf ↩︎