公共図書館プログラムの実施

欧米の図書館では多くのプログラムが実施されていることはこれまでも繰り返し述べてきたところである。ビクトリア州では,公共図書館ビクトリア(PLV)が州内図書館のプログラム実施状況をまとめている(2024/2025)1。ここではそのデータと図書館へのインタビューで聞いた内容をあわせて,ビクトリア州の状況を整理したい。手元にはホワイトホース・マンニンガム図書館法人の秋期(3月から6月)のプログラムをまとめた冊子もあるため,それらも参考にした。

まず,どのようなプログラムが実施されているかである。統計によると回数として多いのは,大人向けプログラム(34%),幼児向けプログラム(31%),児童向けプログラム(18%)の順である。これを参加者数で見ると,幼児向けプログラムが55%と最も多く,次いで児童向けが19%である。子ども向けは1回あたりの参加者が多く,大人向けはそれと比較すると参加者が少ない。

内容別に見ると,統計では「経済的成長」「インフォームドシチズンとつながり」「強く創造的なコミュニティ」「健康と幸福」「個人の成長」「デジタルインクルージョン」「リテラシーと生涯学習」という区分で整理されている。回数で多いのは,リテラシーと生涯学習(46%),デジタルインクルージョン(17%),個人の成長(12%)である。参加者数で見ると,リテラシーと生涯学習(70%),個人の成長(8%),強く創造的なコミュニティ(8%)の順でなる。図書館らしくリテラシー関連のプログラムが多い。これはおそらく児童関連のプログラムがこの区分に含まれていることと関係している。デジタルインクルージョンは1対1で実施されることが多いため,参加者数で見るとそれほど多くないとのことである。

図書館でプログラムについて話を聞いたときにも,やはりリテラシーや読書など教育目的を持つものが多いとのことであった。一方で近年では,コミュニティの多様な人々を集めること,人々の交流を促すこと,孤独を解消すること,コミュニティのつながりを強めることなども重視されているという。パンフレットを見ると,図書を介して話をするもの(Book Chat)や,コーヒーやお茶を飲みながら会話するものなどは確かに多い。縫い物や麻雀など,人が集まって何かをしながら交流するプログラムも見られた。

次に,どのくらいの実施されているかである。ビクトリア州全体の公共図書館では,2024年から2025年にかけて112,597回のプログラムが実施され,2,141,151人が参加した。週末は閉館していたり開館時間が短くなる館もあるため,それを考慮すると1日あたり約374回のプログラムが行われ,約7,113人が参加している。ビクトリア州の人口は約700万人である。日本では同様の統計ではないが,社会教育調査報告書の「図書館における事業実施状況」のうち「読書会・研究会」および「鑑賞会・映写会」(2023年度)のデータが参考になる2。それを見ると,実施回数は72,554回,参加者は1,300,094人である。日本の人口はビクトリア州の17倍であることを考えると,ビクトリア州では非常に多くのプログラムが実施されていることが分かる。

次に連携についてである。統計によると,図書館職員が図書館で実施するプログラムが84%と最も多い。次いでパートナー機関が図書館で実施するものが7%,図書館外で実施されるものが8%となっている。これだけ見ると図書館職員が中心になって実施しているように見えるが,図書館員との話では外部機関との連携が強調されていた。図書館員はコミュニティのニーズを把握し,適切な専門家や団体につなぎ,彼らの知識や技能を活用してプログラムを実施することが重要とのことであった。統計上,図書館員実施プログラムが多く見えるのは,乳幼児や児童サービスのプログラムが回数として多く,それらを図書館員が担当していることも関係していると考えられる。

統計では連携相手や資金についての詳細なデータは示されていないが,図書館員の話ではいくつかの典型的な連携先が挙げられていた。例えば市の部局(高齢者支援部門や環境・サステナビリティ部門)や,州レベルの図書館団体であるPublic Libraries Victoria,州機関との共同プロジェクトが挙げられていた。実際,連携機関が載っているホワイトホース・マンニンガム図書館法人のプログラム冊子を見ると,州政府,障害者支援機関,ALIA,PLV,出版社,州関連機関,アニマルシェルター,ホワイトホース市,マンニンガム市など多様な機関と連携していた。連携では,市(Council)の政策目標に合わせてプログラムを実施することも重要とのことであった。ビクトリア州では図書館が組織的に市(Council)と近い関係にあることも関係していると考えられる。

では組織としてどのようにプログラムを実施しているのか。プログラムの企画やパートナーシップ構築のノウハウは,必ずしもLISの伝統的な教育を受けた職員だけでは担いきれない。そのため話を聞いた自治体では,プログラムと連携を担当する連携及びプログラムコーディネーターを配置していた。彼らは地域のニーズを把握し,それに基づいてプログラムを企画し,場合によっては関連機関と共同設計(co-design)を行い,さらに資金調達を行うなど,プログラム運営の中核的な役割を担っているとのことだった。

  1. https://www.plv.org.au/resources/ ↩︎
  2. https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040300598&fileKind=0 ↩︎