ドイツのいくつかの公立図書館を見ていた際,海外に背景を持つ人たち,特に移民・難民へのサポートを重視していると感じた。ハンブルクの図書館では,「Dialog in Deutsch」という言語支援プログラムが展開されていたし,ハノーファーでは地域館でも外国語の図書を豊富に所蔵していた。そこでは,館内でドイツ語を学んでいたイスラム圏から来たと思われる二人組も目にした。他にも多くの図書館で,外国語の図書やドイツ語を学ぶための教材,辞書類を集めたコーナがあった。移民・難民に対する「言語カフェ」は北欧の事例がよく知られているが,ドイツでも同様の取り組みがある。ここでは,その状況を見てみたい。なお,筑波大学の小林果愛氏による論考(卒業論文)もあるが,抄録しか確認できなかった1。
ハンブルク市の図書館では,「Dialog in Deutsch」が活発に実施されている2。中央図書館だけでなく分館でも開催されていた。このプログラムのミッションステイトメントは,会話,意見交換,交流の場と機会を提供し,習得したドイツ語を実際に使い,さらに深めることをサポートするとある3。北欧と比較すると,ドイツ語の習得を重視しているように見える。時間は1時間である。ドイツ語の基礎知識を前提としたグループと,そうでないグループがあり,若者,女性など,対象者に合わせたものもある。さらにZoomを利用したオンライン形式のものも提供されていた。図書館はプログラム実施にあたり,成人教育機関であるフォルクスホッホシューレと連携している。
EBLIDA(2022)4やIFLA(2019)5の資料によると,ハンブルク市の図書館33館で109のグループが運営されており,270人のボランティアが話題提供などのモデレーターとして関わっている。年間の参加者は4万人にのぼる。「Dialog in Deutsch」はドイツの他地域にも広がっているという。EBLIDAなどの資料によると,ハンブルクでは183万人の人口に対し,2015年から2017年にかけて6.6万人の移民や難民がやってきたという。彼らがドイツで生活していくうえで言語習得は不可欠であるが,語学講座は高額であったり,移民を対象としていなかったりするという課題があった。
ハノーファーでは,地域館の外国語資料が充実していたことが印象的であった。さらに,プログラムを見ると図書館友の会が中心となって,移民を対象としたドイツ語ディスカッションの会を毎週開催している。ハンブルクと比較するとプログラムの実施回数は少ないが,他機関で同種のプログラムが実施されているようであった。このように自治体ごとに実施状況は異なるものの,図書館を拠点とした支援が広がっていることが分かる。
公立図書館がこうした活動の場として適している理由はいくつかある。公的機関であること,政治的・宗教的に中立であること,非営利であること,学習リソースが豊富であること,住民が集まりやすい場所であること,そして実施するための場所があること,などである。外部機関との連携や,重視することがら(学習的要素,社会的・文化的統合,相互理解等)など,将来の日本でも参考になることが多いと感じた。
- https://klis.tsukuba.ac.jp/current-students/pdf/thesis/2024/202110633a.pdf ↩︎
- https://www.buecherhallen.de/ehrenamt-dialog-in-deutsch.html ↩︎
- https://www.buecherhallen.de/ehrenamt-dialog-in-deutsch-leitbild.html ↩︎
- https://www.eblida.org/Documents/Second-European-Report-on-SDGs-in-Libraries_Full-Report2022.pdf ↩︎
- https://librarymap.ifla.org/stories/Germany/DIALOGUES-FOR-INTEGRATION%3A-HAMBURG-LIBRARIES-HELP-REFUGEES-FIND-THEIR-WAY/131 ↩︎