行ったところ(11/18〜)

リッキング・カウンティ図書館 ダウンタウン・ニューアーク

リッキング・カウンティ図書館の中心館である1。リッキング・カウンティはコロンバスを含むフランクリンカウンティの東側にある。人口は約18万人弱である。郡都はニューアークにあり,この図書館もそこにある。図書館は2000年に開館した。なお,リッキング・カウンティ内には独立した5つの図書館システムがあり,カウンティが全域をカバーしているわけではない。しかし,この図書館システムは圧倒的に多くの地域にサービスを提供している。分館は4館で,移動図書館も運営している。

館内は2階建てで,地下を含めて3フロアである。各階にカウンターがある。書棚は木製で重厚であった。図書の購入はベイカー&テイラーだが,その事業縮小に伴い,INGRAM等に切り替える予定とのことであった。1階はフィクション中心である。入口を入ると,大きく立派なクリスマスツリーがある。すぐ左には展示コーナーがあり,訪問時は Jane Austen の展示が並んでいた。かなり力の入った展示である。フィクションのほか,大活字本,ペーパーバック,オーディオブック,グラフィックノベル,CD,DVDもある。DVDコーナーでは「Fall Flicks」という秋の映画特集が組まれており,日本のジブリアニメがいくつか並んでいた。

地下1階は児童コーナーである。一番奥はTeenコーナーであった。この階にはガレージ風の壁がある。この壁面はガレージシャッターのように上に巻き上がる仕組みになっていた。その奥にはイベント用のスペースがあり,お話し会などが開催されている。児童コーナーでおもしろかったのは,VoxBooksである。絵本などは,親が読み聞かせることが多いが,この絵本には小さな再生装置が付いており,ボタンを押すと,音声で読み上げてくれる。また,ガラス張りのゲームができる部屋があり,Play Station 4などを楽しむことができる。かつては大人気だったが,最近は利用が減っているとのことで,PodCast制作のスペースなどへの改修を考えているとのことだった。さらに,メーカースペースである「ライブラリーラボ」もあった2。ここには,3Dプリンタ,デジタル顕微鏡,クリカット,プログラミングで動かすロボットなどがあった。ここは一般には公開しておらず,教育関係者を中心に公開しているとのことである。

2階はノンフィクションのフロアで,DDC順に資料が並んでいる。この階にも大きなクリスマスツリーが飾られていた。特集コーナーは「リメンバー・ベテランズ・デー」を特集していた。レファレンスカウンターとICT関連の質問を受け付けるAsk a Techspertのカウンターが置かれていた3。後者は,PCの使い方やSNSの始め方などを相談できるものである。実際に相談している利用者もいた。レファレンスカウンターの上には「?」のマークがある。かつてはカウンター近くにレファレンス資料コーナーがあったが,現在は閲覧席に置き換えられていた。レファレンス資料の多くがデータベースに移行しているという。この階にはダイカッターがあり,利用者が使っていた。種の図書館やスマホ充電ボックス,雑誌,新聞もこの階にある。階段を上がった場所には,高齢者支援団体と連携し,ポストカードに高齢者へのポジティブなメッセージを書いてもらう企画が行われていた。

移動図書館も運営している4。リッキングカウンティの面積は約1,780平方キロメートルで香川県とほぼ同じである。そのため,移動図書館は欠かせないとのことである。訪問頻度は月1回で,30〜45分ほど滞在する。移動図書館はトラックを改造した車両で,約3,000冊を積むことができる。後部には車椅子用の昇降機があった。小さな子どもが座れる椅子や,階段部分に手すりとともに子ども用のボルダリングホールドが付いているなど,楽しみながら利用できる工夫がされていた。図書を自宅に届けるhome deliveryサービスはバンで行っている。

以下は印象に残った点である。まず,プログラムの実施についてである。図書館にはプログラム実施を担当するセクションがあり,5名ほどの職員が分野ごとに分担していた。また,外部専門家がプログラムの企画実施を担当することもある。分館でも一定割合のプログラムの企画実施を担当してもらっているという。専門知識は外部講座で習得したり,新しい企画の調査を行ったりして実施しているという。図書館以外でも,こうしたプログラムを実施しているところがあるか尋ねたところ,そうしたものはあるが料金が発生するものが多いとのことだった。実施主体としては,YMCA,コミュニティセンター,教会,ユダヤ教団体などとのことだった。日本では,プログラムというと公民館との役割分担が意識されるが,多少の重複があっても図書館でやることは考えられるのではないだろうか。

ホームスクーリングのサポートも行っている。アメリカでは家庭で子どもを教育するホームスクーリングが認められており,この図書館ではそうした家庭向けに特別のカードを発行している。このカードは一般の利用券と利用条件が異なる。図書館のニュースレター「Check It Out」にも関連情報を掲載しており,12月号ではホームスクラー対象の2日間のイベントや,同図書館でのライティング教室の案内が載っていた。ライブラリーラボもそうしたプログラムで利用されるとのことである。

全体にトラディショナルな雰囲気を漂わせながらも,ライブラリーラボやTechspert,Library of Thingsなど新たな取組も充実していた。移動図書館のボルダリングホールドになど,細かな気遣いも見られ丁寧な仕事ぶりが感じられた。

メアリーズビル公共図書館

ルーツは1867年にさかのぼるが,直接的には1895年にWomen’s Parliamentという団体の女性たちが設置に向けた運動を始めたことによる5。1910年にはカーネギー財団の資金によってカーネギー図書館が建てられた。オハイオ州にも各地でカーネギー図書館が建設されているが,この図書館もその一つであった。その後,1988年に現在の図書館が新たに設置された。かつてのカーネギー図書館は紆余曲折の末,その後,取り壊された。図書館員はそのことをとても残念そうに語っていた。

この図書館はユニオン・カウンティにある学校区に設置されており,分館がもう1館あるほか,移動図書館も運行されている6。貸出密度は物理資料が11.9,電子資料を含めると16.0と高い。建物は長方形で,中央部の両側に入口がある。通り側から入ると左側にソファが4つ並ぶ小さなスペースがある。そこには「寛大な人々により図書館が与えられた」と書かれ,寄付額ごとに寄付者名が掲示されていた。他に椅子と飲料の自動販売機が置かれたちょっとしたスペースもある。近くには新刊図書とテーマ展示が並び,1週間貸出の図書も置かれていた(このことは後述する)。図書館員によれば,切り口を変える(another view)展示により,少し古くなった資料の利用も促すことができるという。

図書の販売コーナーもあった。ここに並ぶのは主に廃棄図書である。この図書館は書庫がないため,ウィーディング後の資料は一旦事務室で保管した後,さまざまな施設へ送ったり,ここで販売されたりする。販売は友の会が担っており,図書館自身は行わない。図書館は,収益を生み出してはいけないためである。

1階は左側がフィクション中心,右側が児童コーナー中心になっており,それぞれにカウンターが設置されていた。フィクションはジャンル分けはあまりしていなかったが,「インスピレーション」というコーナーがあった。これは,キリスト教の世界観に基づく道徳的・精神的な小説,アーミッシュの小説などを集めたものである。スターウォーズのコーナーもあった。関連図書だけでなく脚本執筆に関わった著者の小説も並んでいた。他に大活字本,グラフィックノベル,ペーパーバックスなどがあった。奥にはローカルヒストリーのコーナーがあった(後述)。

児童コーナーには絵本(著者名順),Talking Book(音声再生装置付き図書),DVD,LaunchPAD,厚紙絵本,ノンフィクション,読み物などが充実していた。Decodablesやアーリーリーダーズもある。Decodablesは科学的根拠に基づく識字資料であるが,利用は4歳頃からが多いとのことだった。iPadが専用ケースに入って机に置かれており,ゲームを楽しめるようになっていた。ダイカッターも置かれていた。よく目立つ壁面には,幼稚園入学までに1,000冊読もうというキャンペーンの達成状況が掲示されていた7。100冊ごとに名前を書いたシールを貼る仕組みである。1,000冊達成者も多くいた。読書の動機づけのためであり,数えるのは保護者で,同じ本を1,000回読んでも構わないとのことである。「ジャンル・クエスト」という企画があり,さまざまなジャンルの図書を読むことも促していた。

自動貸出機も設置されているが,ここもRFIDは導入されていない。Library of Thingsを含めて利用者を「信頼」しているとの説明だった。そもそも図書館は警備員も配置していない。利用者との強い信頼関係が感じられた。Library of Thingsは種類が多く,子ども向けのものもあり興味深かった。

Library of Thingsの近くには Yorii Collection と書かれた書棚があった。よく見ると,埼玉県寄居町に関する資料や絵本,さらに布の絵本が並んでいた。メアリーズビルは寄居町と姉妹都市協定を結んでいるためで,館長さんも2年前に訪問したそうである。館内にはお話し会などのアクティビティが行える部屋がいくつかあり,ある部屋にはメアリーズビルの街を描いた絵があった。

地下にはTeenの部屋,PCコーナー(7台),DVD,オーディオブックなどがあった。PCは以前はもっと多かったが,スマートフォン普及に伴い台数を減らしているという。Teenスペースはフィクションとグラフィックノベルが中心で,ノンフィクションは大人の資料と一緒に排架しているとのことである。オーディオブックはオンライン化が進み,物理資料の貸出は減っているという。奥には電車のボックス席のような閲覧席があり,窓の部分には絵が飾られていた。

興味深かったことをいくつか挙げたい。まず,ロビーにあった1週間貸出の図書(Lucky Day books)の展示である。これらは,実は予約が多数入っている人気図書である。この一部をILS上,別扱いにしているものである。この図書館は,コンソーシアム(CLC)に加盟しているため,通常の扱いでは利用者は加盟館利用者と利用が競合し,長く待たなければならない。そのため,一定部数については,来館者だけに借りられる図書を設けているとのことだった。ただし貸出期間は1週間で延長は不可である。こうした設定により,自館の来館者を優先しているわけである。

また,Library of Things がかなり充実していた8。提供しているのは,ボードゲーム,カードゲーム,パズル,楽器,バドミントンなどのスポーツ用具のほか,プロジェクター,料理道具,バードウォッチングキット,釣り道具,ラドン測定器,金属探知機などである。高価なもの(オーバーヘッドプロジェクターなど)はカードが置かれており,カウンターに持参して借りるようになっている。サービスは2年ほど前に始められている。開始後は関連する「もの」が寄贈されるようになったという。目録スタッフのスペースにはそれらが所狭しと置かれていた。中には数十年前に流行したボードゲームもあった。子ども向けの Library of Things には,カードゲームなどがあったが,中には,あるテーマ(ペット,動物,食べ物)に関する図書数冊と関連する道具・遊具を一つのバッグにまとめて貸し出すものもあった。バーコードは一つである。アイデア次第で,おもしろいセットを作れそうであった。

さらに,ローカルヒストリーのコレクションが充実していた。近隣学校の卒業アルバム(Year Book),家系調査(genealogy)のための文献,墓地記録,南北戦争・第二次世界大戦の兵士名簿,地域のディレクトリーなどが排架されていた。また,地域新聞もマイクロフィルムで所蔵されていた。出生,結婚,遺言,死亡記事の記録などもある。地域の写真や名前(Mary Jones等)ごとのフォルダもあった。資料の多くは新聞などからの切り抜きを収めたものである。フォルダはキャビネットで管理されていたが,実は,その中心的担い手は図書館員ではない。オハイオ州の系譜学協会のユニオン・カウンティ支部の人々であり,彼らが毎月集まって活動しているとのことだった。キャビネットの上には FamilySearch International による「ファミリーサーチセンター」の認証証明書が掲げられていた。個人情報保護について尋ねたところ,やはり,そうした配慮をしているとのことだった。例えば,卒業アルバムは5年間公開しないという。資料の多くはデジタル化されている。

子どもの資料のアクセスについても話しを伺うことができた。どの資料にアクセスできるかは保護者の申請に基づいてコントロールできる仕組みがあるという。あくまで保護者の選択によるもので,厳しく制限することも,全く制限しないことも可能である。図書館員はその判断に関与せず,仕組みだけを提供している。例えば17歳以下向けの Smart Card では DVD やゲームは借りられない。しかし,保護者の許可があれば,通常のカードも作ることができ,そちらではDVDなども借りられる。何か問題が生じた場合の責任は保護者にあるという考え方である。

目録データについても尋ねた。この図書館は2000年から,コロンバス・メトロポリタン図書館も参加しているセントラル図書館コンソーシアム(CLC)に加盟している。ILSは共有せず,目録のみを共有している。ちょうど目録作業を見ることができたが,データがない場合はOCLCからコピーカタロギングを行っている。CLCが加盟館の負担金からOCLCに使用料を支払っているとのことである。ただし,Local HistoryとLibrary of Thingsについては独自に目録データを作成する必要がある。ちなみに,目録担当者は最近 MLIS を取得して半年前にテクニカルサービスの管理者になったそうである。実は,長年この図書館に勤務してきたが,働きながら学位を取得したとのことであった。

盗難防止装置がないこと,警備員を置いていないことなど,地域との強い信頼関係を感じた。また,ローカルヒストリーについて住民の強いサポートを受けていることも印象的だった。図書館の業務に関してとても丁寧な説明を受けることができ,学ぶことの多い図書館だった。

サウスイースト分館

コロンバスの南西の端にある。図書館は1階建てだが天井が高く,ゆったりとしている。入口を入ると,図書の販売コーナーがある。自動貸出機,返却ボックスもあった。RFIDは導入されていない。館内には絵画が飾られており,中にはYasue Sakaokaと書かれた日本人アーティストの作品も掲示されていた9

入口付近にはスタンディングのカウンターがある。カウンター前では,多くの図書の展示があった。ネイティブアメリカンヘリテージウィークや新刊書などである。右手にはソファーの置かれたブラウジングコーナーがあるが,排架されているのは雑誌や新聞ではなく最近のフィクションであった。

児童コーナーには木の汽車の遊具やPIXELPEGSという光る遊具もあった10。これらは他のCML分館でも見かけたものである。PIXELPEGSは,色のついた透明ガラスの円筒のピースをはめると発色するもので,これで模様を作ったりして遊ぶようである。子ども用PCは6台あり,さらに自閉症協会が提供するセンサリーピックの貸出案内も置かれていた。そのバックにはノイズキャンセリングヘッドホン,サングラス,消毒,深い呼吸を促すカードなどが入っている。図書館での滞在を支援する道具である。

大人用ノンフィクションの棚は児童書やTEENの蔵書が混配されている。場所的な制約による,との説明であった。ノンフィクションの中には複本も見られた。例えば,『The Good Life』は4冊並んでいた。奥には新聞・雑誌のコーナーがあったが規模は小さい。隣のグラフィックノベルは比較的充実していた。図書館の中央にはPCが20台ほど並んでいる。利用者は文書作成やゲームなどをしていた。ゲームをしている利用者はキーボードやマウス操作がかなり激しかった。他に,コピー機,プリンター,大型スキャナー,ドキュメントスキャナーなどが揃っている。

この分館にはスタディールームはないが,ガラス張りの「ホームワークヘルプセンター」があった。大学のペナントが掲げられているのは,他のCML分館と同様である。室内にはホワイトボードなど,学習を支える環境や関連資料が整っていた。訪問日は木曜日だったが,夕方以降,スナックタイム,宿題支援,ブレインブレイキングなど,児童,生徒を迎えて以降のスケジュールが19時頃まで書かれていた。

ティーンコーナーもある。ティーンブックレビューではティーン同士で図書を紹介できるよう,推薦図書を紙に書いてボードに張り出せるようになっていた。周辺にはフィクションのほか,DVD,オーディオブック,予約図書が並んでいる。予約図書は300〜400冊ほどであった。

いくつか興味深かったことを述べる。まず,メーカースペースである。メーカースペースというと,3Dメーカーなどをイメージするが,ここはもっとアナログである。児童コーナーに「Kids Maker Space Table」と書かれたテーブルがあり,テーブルの下に素材・用具を収容するスペースがある。そこに色鉛筆,クレヨン,ぬり絵,画用紙,週の文字,紙パック,トイレットペーパーの芯,アイスキャンディーの棒,梱包紙,紙袋などが入っていた。「週の文字」とは,毎週,アルファベット(W w等)を一つ取り上げ,その文字と単語を書いた1枚もののシートで,文字を学ぶきっかけとしているものである。机には「今週の工作」が掲示されており,訪問した週は「七面鳥の操り人形」であった。ティーンのコーナーにも同様に「Teen Maker Space」があり,引き出しには色鉛筆,ペン,塗り絵,折り紙,トランプやUnoなどのカードゲームが入っていた。こうしたちょっとしたスペースでも,創造力を育てるにはよいのかもしれない。

また,児童コーナーには絵本や初級読者向けの読み物があったが,Decordableも所蔵していた11。これは,6段階にレベル分けした小冊子で,脳が文字を学ぶ過程を踏まえて作られたものである。レベル1は文字の名前と音(例.C),2は文字の音と簡単な単語(cat and dog),3はより難しい単語の音(chair),4は子音連結(clown),5は母音連結(care),6は接頭辞や接尾辞を含む長い単語(happiness)という具合で,それぞれの段階に応じて短い文章と絵が書かれている。その裏側の書棚には「ガイド・リーディング・プログラム」というシリーズがA〜Lに分けられていた。それらは,文章の長さ,単語のレベル,物語の複雑さなどでレベル分けされていた。「Reader」というシリーズはA〜Wにランク付けされている。図書館員によると,読書レベルに応じて分類されている。このように,児童コーナーには,読む力を科学的に獲得できるようにした資料が充実していた。

ダブリン分館

フランクリン・カウンティのダブリンにある図書館である。ダブリンは独立した市だが,コロンバス・メトロポリタン図書館(CML)がサービスを提供している。人口はおよそ5万人ほどで,コロンバス北西に位置している。図書館界では,OCLCがあることでよく知られている。汎用メタデータ標準のDublin Coreの名称は,ここで最初に議論されたことに由来している。

図書館は傾斜地に建てられており,3つのフロアに分かれている12。建物の外壁はほとんどがガラスで,屋内は白を基調として開放感があった。一番下のフロア(Lower Level)には道路からの入口があり,カフェも設けられている。そこから1階へ上がる途中には,傾斜を活かした閲覧席(Reading Terraces)がある。

1階にはメインエントランスとスタンディングのカウンターがある。周辺には,図書販売のほか,新しく入荷した図書,Quick Pick,スタッフピックなど,多くの図書がきれいに展示されていた。ラウンジには雑誌や新聞もある。雑誌はバーコード以外,装備されていない。予約図書の棚もあった。かなり多く並んでおり,おおよそ2000冊ほどあった。このフロアの大部分は児童コーナーである。ラーニングステーションと呼ばれる部屋があり,宿題などの支援も行っている。壁には大学のペナントも掲示されていた。

2階は大人向けのフィクションとノンフィクションが中心である。ESOL(語学の図書),レファレンス資料などもある。学習参考書も置かれていた。マンガやグラフィックノベルが充実している。他にQuiet Room,PCコーナー(10台),スタディールーム(5部屋)などがある。閲覧スペースも多くあり,よく利用されていた。

TEENのコーナーもある。TEENのコーナーの前には「Play Pokemon」という立て看板があった。ポケモンゲームを楽しむイベントの告知である。この部屋の寄付者としてHondaの名前が掲示されていた。近くのメアリーズビルにホンダの北米工場があるため,この図書館にも寄付をしているようである。PCは6台あり,話しやすいようにカウンター式のテーブルも置かれていた。TEENコーナーはフィクション中心で,ノンフィクションは少ない。BookTokの図書も展示されており,ここにも学習参考書が置かれていた。

興味深かった点を三点述べる。まず一つ目は書棚の使い方と複本である。書棚の天板と一番下の段を有効に使っている点が興味深かった。天板には表紙が見えるように図書が並べられており,一番下の段は幅を狭めて図書などを平積みしていることが多かった。書棚が比較的低いため,こうした使い方ができるのであろう。並べられているのはともに複本である。CML一般の傾向だが,複本はフィクションに限らずノンフィクションでも多かった。ざっと見た限り,複本で最も多いものは8冊が書架に並んでいた(テッサ・ベイリー著『The Au Pair Affair』)。

二つ目は学習支援である。これもここに限らないが,CMLは学習支援や進学支援が充実している。先ほど述べたように1階にはラーニングステーションがあり,ボランティアが宿題の支援を行っている。また,ACT,AP,SAT,PSATなどの問題集を所蔵しており,いずれも2022年から2025年の最近のものだった。ACTなどは大学入学試験に関係するものである。中を見ると,ほとんど書き込みはなかったが,一部,選択問題に鉛筆で丸がついているものもあった。また,CMLでは,オンライン(Zoom)によるACT/SATの学習セッションも提供していた。以前はここでACTなどのクラスを運営していたという。

三つ目はリーディング・バディの取組である。幼稚園から5年生までを対象に,バディ(相棒)と図書を一緒に読むという取組である。ボランティアが,子どもが図書を読むのを聞いてあげて,読むことの支援や理解の手助けを行う。読書スキルを高め,読書を楽しめるようにすることが目的である。ラーニングステーションで開催されており,1セッション15分である。月,火,木の16時半から17時半まで実施されており,多く参加すると景品があたる。

グランドビューハイツ公共図書館

グランドビューハイツは,周囲をコロンバスに囲まれた市である13。統計によるとサービス対象人口は0.9万人ほどだが,利用登録者は1.6万人と人口を上回っている。登録要件がオハイオ州在住であるため,市外からの登録者が多い。そのこともあって貸出密度は高く,物理資料で46.1,電子資料を含めると62.3とかなり多い。CLC(コンソーシアム)の創設メンバーであり,現在もコンソーシアムに加盟している。

図書館は住宅街の中にあり,1階建ての平屋であった。建物の前には小さな芝生の広場があり,舞台として使われるスペースもあった。日曜日に訪問したが,図書館の前にはキッチンカーが1台止まっていた。図書館は1920年代に創設され,現在の場所に移転した後,1988年から89年にかけて改修と増築が行われた。

入口は大きな通り側と裏側の二つがある。オハイオでは日曜日は午後から開館するところが多く,ここも13時開館であった。館内は地下と1階に分かれている。中央部分は天井がガラスになっており,自然光が入り開放感がある。この図書館では各コーナーにカウンターが設置され,1名から2名の職員が配置されていた。利用者対応にはホスピタリティがあふれている。地下には児童コーナーと「Grade 4-12」と書かれた若者向けスペースがあった(若者向けスペースについては後述)。

1階の片方には,HOLDS,フィクション,DVD,ビデオゲームソフト,オーディオブックのコーナーがある。DVDが充実しており,スターウォーズの映画のポスターも貼られていた。CDは奥の目立たない棚にある。また,ここでは非伝統的資料,つまりLibrary of Thingsのコレクションが充実していた。ポータブルバッテリー,ブルーレイDVDプレイヤー,エレクトリックギターとアンプ,麻雀セット,ジェンガなどである。他に回想法で使う「記憶構築」の袋が1950年代,1960年代といったように時期ごとに並んでいた。

1階のもう一方には,レファレンスとノンフィクションのコーナーもある。奥へ進むと閲覧スペースが広がっていた。肖像画の掛かった落ち着いた雰囲気の閲覧室にはテーブル席が多くある。そこにはPODも3つあったが,天井部分が開いているため完全な個室ではない。一番奥には地域資料があり,「Columbus Citizen-Journal」や「The Columbus Dispatch」など地方紙のマイクロフィルムが並んでいた。PCは10台ほど設置されている。

興味深かった点を挙げたい。まず,地下の若者向けスペースである。ここはかなり広く,対象は4年生から12年生までである。日本でいえば小学校4年生から高校3年生に相当する。蔵書はTEENとJUVENILEの二つに分かれており,JUVENILEは4年生から6年生,TEENは7年生から12年生とのことであった。コミック,グラフィックノベル,フィクション(小説,歴史小説,科学小説,ミステリー,ファンタジー)などに分けられている。JUVENILEの扱いは図書館によって異なるが,児童コーナーに置かれることが多い印象がある。しかし,ここではTEENと同じ場所にあった。

もう1点興味深かったのはノンフィクションの扱いである。ここではノンフィクションを二つの場所に分けて排架していた。一つはソファーが置かれたゆったりした,かなり大きな部屋である。ここには,多くのノンフィクションが書店のように表紙が見える形で並んでいる。DDC順ではなくテーマごとであった。テーマは,トラベル,スポーツ&フィットネス,教育&コンピュータ,科学技術,ビジネス,政治,音楽,歴史,ガーデンなどである。請求記号をよく見るとDDCの上にテーマ名が書かれていた(教育ならEDU)。図書館職員によると,ここに並べられるのは1年間で,その後,通常の書架に移されるとのことであった。新鮮なノンフィクションを魅力的に見せることで,利用を促進しているように感じた。

ベックスリー公共図書館

コロンバス市中心部からそれほど離れていない場所にある14。ベックスリーは地理的にはコロンバス市に囲まれているものの,独立した「市」であり,比較的高所得者層が多い地域といわれている15。コロンバス・メトロポリタン図書館とは別組織である。人口は約1.3万人で,図書館は1館のみである。ベックスリー公共図書館は,学校区(School District)が設置主体である。オハイオ州在住者であれば利用券を作れる。そのためか,登録者は2.8万人と,人口の2倍以上である。貸出密度は物理資料が28.0,電子資料を含めると36.5と非常に高い。職員数は35人で,MLSを持つ職員は8人である。

建物はトラディショナルな造りで,高級感がある。壁には絵画や写真が額縁に入って飾られていた。元々の図書館は1924年に開館している。入口や館内には100周年を祝うポスターや垂れ幕が掲げられていた。現在の建物は1929年に開館しており,その後,増築や改修を重ねている。入口には天井が高くゆったりとしたロビーがある。ここにはカウンターがあり,他にコミュニティ掲示板,自動貸出機(Self Checkout),図書販売コーナーが置かれていた。販売されている図書は市民が持ち寄ったもので,友の会が関わっている。ロビー奥には予約図書の受取があり,その近くにはボードゲームがかなりの数並べられていた。ノンフィクションの棚にもパズル類が置かれていた。入口右側には高級感あふれる閲覧室(静寂室)がある。革張りのソファーが置かれ,大型活字本が並んでいた。

少し進むと「トランスジェンダー・アウェアネス・ウィーク」を特集した展示があった。アメリカでは蔵書に対する保守派の撤去要求が増加していると聞いていたので,やや意外である。バンス副大統領はオハイオが選挙区である。左側には広いブラウジングルームがあり,新聞,雑誌,地域資料(Bexley History),ものの貸出(Unique Items)などがある。ものの貸出では楽器,VHSコンバータ,ピックルボールセットなど多様なものを貸出しているほか,フランクリン・カウンティの芸術家による絵画等のオリジナル作品もあった。奥には大人と子ども向けの視聴覚資料(CD,DVD,オーディオブック)をかなり多く所蔵している。ここの閲覧室は高い天井と落ち着いた雰囲気が印象的である。中二階には閲覧席が設けられていた。

図書のコーナーは伝統的な図書館らしい雰囲気で,高めの書棚が並んでいる。棚は5段で,ノンフィクションはDDC順,伝記は別置していた。著者記号はラストネーム3文字で,コロンバス・メトロポリタン図書館(CML)と同じ業者を使っているとすれば,背ラベルを図書館ごとに変えていることになる。フィクションはミステリーのみ分け,その他は著者名順で並べている。装備はCMLとほとんど同じで,RFIDも付いていなかった。図書は詰め込みすぎず,表紙を見せる展示も多い。図書館システムはPolarisで,BibloCommonsは使用していない。カウンター近くにはグラフィックノベルが排架されていた。種の図書館があり,ここでも目録カードケースが活用されていた。

地下は子どもとティーン向けのスペースで,大人向けエリアとは完全に分離されている。今月のイベント一覧を見ると,日曜日を除きほぼ毎日,幼児向けストーリータイム,ライムタイム,アニメクラブ,映画など様々なプログラムが実施されていた。奥には講堂がある。同じく地下にはテクノロジーセンターと呼ばれるコンピュータ室があり,職員が常駐していた。PCは約15台で,半分ほどが利用されている。この図書館には,メモリーラボやクリエーションステーション(メーカースペース)もあった。メモリーラボでは,写真,ビデオテープ,カセットテープなどを利用者がデジタル化できる設備が整っている。2階は事務室と図書館委員会の部屋である。

この図書館では興味深いことが二つあった。第一に,「パーソナライズドピック」というサービスである。これは,利用者に好みを入力してもらい,図書館員が図書を選んで用意するものである。まず,Email,名前,生年月日,電話番号を入力してもらう。そして,読書傾向を回答してもらう。選択肢には,歴史的創作,グロテスクな状況,幻想的世界,恋愛,秘密,現実世界に超自然的現象が流入,なじみのある世界,などが挙げられており,そこから3つ以上,選択してもらう。同様に,関心のあることとして,冒険,現実の歴史,はるか遠くの銀河,話題の図書,壊滅的戦争後の架空世界,実在する人物の話,政治と国家,異なる国や文化,芸術,古典,笑ってしまう話など,についても3つ以上選択してもらう。さらに,ゾンビに対する意見,図書の表紙の好み(12の選択肢),読みたくない図書(自由回答),好きなムードの写真(8つの選択肢),希望する冊数なども尋ねている。こうして得た情報をもとに,図書館員が検索して図書を用意している。機械学習などは使っていない。ただし,図書館は様々な探索ツールがあるため,図書館員にはそれらの活用能力が求められていると感じた。これがどの程度有効に機能しているか分からないが,それは図書館員も同様のようで,サービスを受けた人にフィードバックを求める掲示が出されていた。

第二に,OPACの仕組みである。ベックスリーは地域の17自治体とともにCLC(Central Library Consortium)というコンソーシアムを構成している。OPACもCLCの検索ページになっていた。これにより,ベックスリー利用者は470万点の資料にアクセスできる(ベックスリー自体は図書を約12万点所蔵)。資料は無料で取り寄せすることができ,利用者は直接予約をかけられる。但し,予約の優先順位は所蔵館利用者が最上位に来るようになっていた。つまり,ベックスリー所蔵資料については,ベックスリー市民があとから予約をしても優先される仕組みである。さらに,SearchOhio(44館のネットワーク)とOhioLINK(120大学図書館のコンソーシアム)の資料も借りることができる。日本でもILLにより県内公立図書館の資料を借りられるが,大学図書館の蔵書にも広くアクセスできる点や,他館資料にも直接予約をかけられる点は大きな違いである。予約の優先システムは,利用者が直接予約できるようにする上で,有効な仕組みかもしれない。

マリオン・フランクリン分館

コロンバスの分館で,市の南側に位置している。近隣地域から移転したばかりで,10月18日の開館から約1ヶ月後に訪問した16。以前の図書館は400㎡弱であったが,現在は1,000㎡弱と大きくなった。外壁はシルバーで窓が大きく現代的な建物である。建物はワンフロアで,天井の一部からも自然光が入る。図書館内には抽象画などの絵画が飾られ,よいアクセントになっていた。

入口のすぐ近くにカウンターがある。カウンターは児童コーナーにも一人用のものが置かれていたが職員はいなかった。利用状況に応じて柔軟に配置しているようだった。カーペットが敷かれている。カウンター前にはスキャナー,プリンター,コピー機などが集まっている。通常のスキャナに加えてドキュメントスキャナーもあった。PCコーナーには6台のPCが並び,うち2台が使用されていた。

奥には児童コーナー(CHILDREN’S)とTEENSのコーナーが設けられている。さらに諸室として学習センター(learning center),学習室(study room,5室),ミーティングルーム(2室)がある。規模に比してこうした部屋が多い印象である。学習センターには4人用の机が4つあり,ホワイトボードもあった。学習室には2〜4人用の机が置かれ,訪問時は2室が使用されていた。ミーティングルームは会議などが可能な少し大きめの部屋である。これらの部屋の入口には当日の使用予定がディスプレイに表示されている。部屋はすべてガラス張りで,内部が見えるつくりになっている。こうした部屋の構成や造りは他のCMLの分館とほぼ共通であり,規模によって数が異なる。

書棚は白色,4段で低い。フロア中央には大人向けのフィクションとノンフィクションが並ぶが,全体として蔵書数は日本の図書館と比較して少ない。スタッフの推薦図書には,付箋にスタッフの名前が書かれて貼られている。コミュニティ情報の掲示や図書のSALEも行われていた。人気図書が複本で集められていた。Emily Henryの『Great Big Beautiful Life』は3冊が並んでいる。この図書をCLC(Central Library Consortium)のOPACで検索すると全体で467点であった。CML(コロンバス・メトロポリタン図書館)に限定すると292点である。他に,電子書籍347点と電子オーディオブック289点もあり,相当な点数である。ただし,電子資料はコンソーシアム全体で購入されているものである。それでも90万人の利用者に対して膨大な資料が提供されている点は興味深い。試しに人口がほぼ同様の世田谷区で東野圭吾の『架空犯』を検索すると55点である。複本購入ではボルティモア公共図書館の例が日本でもよく知られているが,そこに限られないことが分かる。

児童コーナーには円形の書架があり,木製の汽車の遊具,ブロック,チューブをつなげてボールを通す遊具などが置かれていた。書棚にはグラフィックノベル,漫画(Manga),Readers,Decodables,First Chaptersなどが並ぶ。DecodablesとFirst Chaptersはいずれも読書初心者向けの読書材である。絵本,多言語児童書もあった。絵本の排架順は著者順であった。児童向けのフィクションとノンフィクションは大人向けコーナーに置かれていた。児童コーナーに入りきらなかったのであろうか。TEENSのコーナーには手前にグラフィックノベルと小説が並ぶが,蔵書は少ない。PCが4台配置されていたのと,ゲーム用のディスプレイがソファの前にあった。訪問時には若者が二人おり,日本人と分かると「どんな漫画を読むの?」と話しかけられてしまった。

全体として蔵書数は少ない一方,学習室やミーティングルームなどの諸室が充実していることが印象的であった。図書館員によると,近年は図書館に求められる役割が変化しており,その変化に合わせて図書館のつくりも変化しているという。電子書籍サービスとしては,Libby(電子書籍・電子オーディオブック・コミック・雑誌),Kanopy(映画・ドキュメンタリー),PressReader(新聞・雑誌)が中心である。LibbyはKindleで読むことができる。

オハイオ州立図書館

オハイオ州の州立図書館である。コロンバス中心部から比較的近いところにあった。ワンフロアの建物である。州立図書館は電子的な資料の提供や,州内図書館員への支援,LSTAの資金配分,州職員への情報提供など,様々な機能を担っている。そのため,ここで紹介する内容は,あくまで州立図書館の役割の一部に過ぎない。

入口を入ると,1817年以降の「State Librarian」(州立図書館長)の肖像や記録が並んでいた。一人一人,詳しい解説がある。入口の左手には「Board Room」と記された部屋があった。ベックスリーの図書館と同様,図書館委員会専用の部屋が独立して設けられている。その先には1809年から始まる州立図書館の歴史に関する展示があった。英米の公共図書館は1850年頃が制度開始時期といわれるが,それ以前からルーツとなる機関は存在していたことが分かる。

通路右側にはFloyd’s Pick図書賞のポスターが掲示されていた。この賞はオハイオ州の児童文学作品に与えられるもので,州立図書館員でもあったフロイド・ディックマン氏を顕彰している。選考と授与は「Choose to Read Ohio(CTRO)」諮問委員会が行っている。2021年には日本出身の池上愛子氏が受賞していた。

ここには「Choose to Read Ohio(CTRO)」というリーフレットも並んでいた。これはオハイオ州の著者などに焦点を当てて,その作品を紹介するものである。内容としては,図書の紹介,入手方法,著者の紹介,議論すべき点,詳しく理解するための情報源,次に読むべき図書などが載っている。「議論すべき点」は,読書会で取り上げる場合の論点をまとめたものであった。この取組は2009年から始まっており,2025年までに175冊が紹介されている。

資料エリアは,大きく三つに分かれている。入口から見て左側は州立図書館のコレクション,右側は政府資料で,その大部分を占めるのが連邦政府の刊行物である。右端には集密書架があり,政府資料のうち保管用コレクションなどが収蔵されていた。

左側の州立図書館コレクションを見ると,「Library of Congress(LC)」と「Dewey」という二つの分類で図書が分かれていた。これは,1970年代以前はデューイ十進分類法を使っていたが,その後LC分類に変更したためである。現在まで統合されずに分かれて排架されている。デューイ分類の図書が古く,LC分類の図書が新しいわけである。他に,入口付近にはディックマン氏のコレクションや,Floyd’s Pick図書賞の受賞作,各種索引,地図帳,City Directories(電話帳),雑誌などが排架されていた。古い図書の中にはビニールに入れられて保存されているものもあった。

中央の職員エリア背後にはレファレンスブックがあり,「Ready Reference」と書かれたレファレンスブックの棚と,通常のレファレンス資料の棚が続いている。また,「United States Code」「United States Code Annotation」「Ohio Revised Code」「Ohio Administrative Code」など連邦及び州の法律に関わる資料が並んでいた。

右側は連邦政府および州政府の文書が並んでいた。特に連邦政府の資料が多い。連邦政府資料が多いのは,この図書館がFDLP(Federal Depository Library Program)に基づく寄託図書館としての機能を持っているためである。これらは「Federal Documents Ready Reference」「Federal Documents Reference」「Federal Documents Circulating Collection」などに分かれていた。たとえばReady Referenceには『U.S. Census』などが,Referenceには『Executive Journal』などがあった。Referenceと名のつく棚の資料は貸出不可で,Circulating Collectionは貸出可能である。

右側の入口近くには「OHIO DOCUMENTS」の棚がある。これはオハイオ州政府の公式刊行物を集めたところである。州立図書館は,オハイオ州政府刊行物の行政資料室的機能を持つ機関としての位置づけを持っている(Ohio government documents depository)。ここでは独自の分類体系が採用されており,州法,上下両院の会議録,州最高裁の判決,統計書,各種機関の報告書などが揃っていた。他に,ERICや米国エネルギー省などの連邦政府機関による資料や新聞類もマイクロフィルムとして所蔵されていた。

こうした特徴的な蔵書構成は,資料選択指針を見ると納得する。資料選択指針では,選択の主要な目的として「オハイオ州政府の出版物の図書館として機能すること」「州政府および連邦政府の出版物の地域保管庫として機能すること」「州政府のリソースとして機能すること」「図書館員に対して最新情報を提供すること」などが挙げられていた。地域住民へのサービスについても触れられていたが,あまり優先順位は高くないようだった。

全体として,館内には多くの書棚が並び資料も多く排架されていた。閲覧席やソファーが広々とした空間に豊富にあり,書棚も低い最近の図書館とは異なる。政府刊行物を中心とするそのコレクション構成も,一般的な図書館と大きく異なる。しかし,連邦政府,州政府の資料を確実に収集し保管していくこと,州内の著作者に焦点を当てることなどは一見,地味に見えても重要な役割である。

パーソンズ分館

コロンバスの分館の一つで,比較的市内中心部に近い場所にある。2016年に開館した図書館で,約1,800㎡である17。建物は長細いワンフロアで,天井も高く,工場のような造りでもある。ところどころ,絵画が飾られている。また,カーペットが敷かれている。全体としてCML(コロンバス・メトロポリタン図書館)の分館に共通する空間の作りである。

入口は通り側と駐車場側の2箇所にあり,どちらも建物の中央にある。入口を入るとすぐにカウンターがあり,通り側から入ると右手が大人向けコーナー,左手が児童向けコーナーであった。訪問したのは夕方だったが,学校帰りの児童や生徒が非常に多く,にぎわっていた。通り側の窓際には4人用の机が並び,仕事をしたりお話をしたりしている利用者が多く見られた。

カウンター付近にはスタッフピック(推薦)があった。その先に一般書と文学書が並んでいるが,蔵書数は多くない。一般書では旅行と伝記が別置されていた。大人向けの図書は5段の棚が5つ集まって,それが背中合わせになっている書架が5列であった。多く見積もっても約5,000冊程度であろうか。あるウェブページによると,この分館全体の蔵書は3.7万点(児童書なども含む)とされていたが,2,000㎡弱の図書館としてはかなり少ない18

大人向けコーナーの奥にはPCコーナーがある。PCが6台内側を向いており,そうした「島」が6つ並ぶ。おおよそ半分程度が利用されていた。ガラス張りのミーティングルームは2室あり,一つは後述するスナックタイムで使われていた。ティーンスペースには6台のPCがあり,子どもたちがおしゃべりをしながら使っていた。他にゲームができるディスプレイがあり,サッカーゲームを3人で遊んでいた。スナックタイムを目的に滞在している子どもも一定数いるような印象である。

入口左側には児童コーナーがある。他に予約図書の棚,ラーニングセンターがある。ラーニングセンターではグループで作業している利用者や,一人でPCを使っている利用者がいた。蔵書はかなり少ないものの,予約資料は一定数用意されており,予約してピックアップする利用スタイルが定着しているのかもしれない。児童コーナーは広く,カウンター前には恐竜やネイティブ・アメリカンの図書の特集コーナーがあった。

興味深かったのは,スナックタイムである19。16時になるとミーティングルームでスナックタイムが始まった。軽食をもらうため子どもが列を作っていた。この分館では月曜日から土曜日の16時にスナックタイムが実施されている。チルドレンズ・ハンガー・アライアンス(CHA)と連携した取組である20。軽食の袋を受け取った子どもたちはミーティングルームでわいわい食べていた。スナックといってもスナック菓子ではなく「軽食」で,説明によればタンパク質,穀物,牛乳,野菜,果物などが入っているとのことであった。実際には,カットフルーツ,牛乳やフルーツジュース,ソーセージ,ナッツ,クッキーなどである21

もう一つ興味深かったのは,分館同士,図書館のつくりがよく似ている点である。このことについては,その理由を説明する文書が存在する。「INVESTING IN OUR COMMUNITIES WITH 21ST CENTURY LIBRARIES」である22。これは,近年のコロンバスにおける図書館整備の基本原則をまとめている。そこでは,方針として,透明性,柔軟性,象徴的なデザイン,持続可能性,テクノロジー,革新的プログラミング,顧客体験,若者の心(Young Mind),コレクションのショーケースが示されている。そこの説明と,これまで訪れた分館を照らし合わせると,以下のような特徴を指摘できる。

「透明性」について,少なくとも物理的な透明性という点では,図書館はガラス張りで外から見やすい。内部は書架が低く,空間にゆとりがあり,見通しがきく。個室も全てガラス張りで,内部が見える。「柔軟性」については,壁で仕切られた部屋は少なく,フロアが連続的につながっている。「象徴的なデザイン」については,少なくとも日本の公共施設という雰囲気ではなく,デザイン性にこだわっていることがよく分かる。「革新的なプログラム(事業)」については,図書館では多様で,またインクルーシブな興味深いプログラムを実施している。「若者の心」(Young Mind)については,若者を重視し,若者にとって居心地のよい空間であることを目指していた。「コレクションのショーケース」について,CMLは多くの蔵書を持ち,州内からも提供できる体制を整えている。コレクションはショーケース的なもので,利用者は必要なものを予約して利用したり電子書籍で利用したりするスタイルになっているのかもしれない(これは推測)。

こうしたスタイルの図書館で,実際図書の利用はどうであろうか。2024年のオハイオ州の図書館統計によると23,CMLの物理資料の貸出は,大人が456万点,子ども(Juvenile)が493万点で合計949万点である。子ども向けが多い。貸出密度はほぼ10である。これに電子書籍などのダウンロード可能な資料を含めると1,379万点になる。この場合の貸出密度は14を超える。いずれも非常に多い。ちなみに電子書籍と電子オーディオブックの貸出点数は375万点なので,全体の3割弱を占めている。

  1. https://www.lickingcountylibrary.org/ ↩︎
  2. https://events.lickingcountylibrary.org/reserve-room/library-lab?selected_date=2025-11-28#lc-openings ↩︎
  3. https://www.lickingcountylibrary.org/services-research/ask-a-techspert/ ↩︎
  4. https://www.lickingcountylibrary.org/locations-hours/mobile-library/ ↩︎
  5. https://marysvillelib.org/history/ ↩︎
  6. https://marysvillelib.org/ ↩︎
  7. https://marysvillelib.org/1000-books-kindergarten/ ↩︎
  8. https://marysvillelib.org/services/library-of-things/ ↩︎
  9. https://cfs.osu.edu/archives/collections/ohio-heritage-fellows-collection/yasue-sakaoka ↩︎
  10. https://www.pixelpegs.shop/ ↩︎
  11. https://justrightreader.com/ ↩︎
  12. https://mvsuriano.com/cml-dublin-library-nbbj ↩︎
  13. https://www.ghpl.org/ ↩︎
  14. https://www.bexleylibrary.org/ ↩︎
  15. https://en.wikipedia.org/wiki/Bexley,_Ohio ↩︎
  16. https://www.columbuslibrary.org/press-releases/library-announces-grand-opening-date-for-new-marion-franklin-branch/ ↩︎
  17. https://moody-eng.com/parsons-avenue-branch-library ↩︎
  18. https://librarytechnology.org/library/12883 ↩︎
  19. https://spectrumnews1.com/oh/columbus/news/2025/08/27/columbus-metropolitan-library-offering-snacks ↩︎
  20. https://childrenshungeralliance.org/ ↩︎
  21. https://www.youtube.com/watch?v=CvXV3XjVQT8 ↩︎
  22. https://www.columbuslibrary.org/wp-content/uploads/2025/07/InvestingInOurCommunities.pdf ↩︎
  23. https://library.ohio.gov/libraries/ohio-public-library-statistics/stats-and-reports ↩︎