サンタ・フェ・スプリングス・シティ図書館
サンタ・フェ・スプリングス市の図書館である1。サンタ・フェ・スプリングス市はロサンゼルス市の東側にある。統計(2023–2024)によると,サービス対象人口は約1.9万人で,図書館スタッフは17名,うちALA-MLS取得者は5名であった。来館者数は約10.5万人,物理資料の貸出は約12.7万点,電子資料の貸出は約1.5万点である。物理資料の貸出密度は6.8で,カリフォルニア州内では比較的高い。
図書館は市役所やシティー・ホール,プールなどの公共施設が集まる一角にある。図書館正面には,「世界は私の手の中に」と題する寝っ転がって読書する少女のブロンズ像がある。建物はワンフロアである。入口を入ると,内部は細かく区画されておらず,広々とした空間である。館内では仕事,勉強で比較的長時間滞在していると思われる利用者が多く見られた。入口すぐの右側には閲覧や勉強ができるテーブルとソファーのあるスペースがあり,その裏側にも閲覧席が設けられていた。少し進むとカウンターがあり,左側にはブックセール,新刊図書,雑誌,新聞が排架され,ブラウジングスペースもある。ソファでゆったりできそうである。この図書館では,日本の図書館同様,雑誌にカバーが付けられていた。また,Library of Thingsで貸出される「もの」が展示ケースに入っていた。
フロア中央にはTEENのコーナーがあり,近くにはDVD,オーディオブック,グラフィックノベルなどがある。右奥には大人向けのフィクション・ノンフィクションがあり,多言語資料としてスペイン語のフィクション / ノンフィクションもある。書棚には「Don’t want to ask」という張り紙があり,尋ねにくいトピックのDDC番号を案内していた。虐待 / 近親相姦,ニキビ / スキンケア,死などのトピックが挙げられていた。一番奥には行政資料がファイルにまとめられて排架されている。
図書にはRFIDが貼付されている。複本は多くないが,2冊程度のタイトルはちらほら見られた。レファレンス資料は一般図書と混配されている。しばしば別置される大学受験用のSATやACTなどの問題集もDDC順で並んでいた。図書館システム(ILS)はSirsiDynix社である。児童コーナーには,フィクション,ノンフィクション,絵本,グラフィックノベルがあり,スペイン語資料も充実していた。
興味深い点を2点紹介したい。一点目は貸出と予約についてである。通常の図書以外にも多様な機器やものを貸出していた2。Chromebookは4台,モバイルホットスポットは12台用意されている。貸出期間はいずれも6週間である。訪問時点では,どちらも利用可能なものは1台のみで,人気がある。Library of Thingsでは,望遠鏡,太陽観測双眼鏡,CDプレーヤー,ボードゲームなどを貸し出している。州立公園パスの貸出も行っていた。また,図書館に所蔵がない資料についてはILLを案内しており,その際は1点につき5ドルが必要とされている。検索ツールとしてWorldCatが紹介されていた。さらに,カリフォルニア州のZip Booksプログラムに参加している。これは利用者が読みたい図書をAmazon経由で入手し読み終わったら図書館に返却する仕組みである。このことは別に紹介したい。
もう一点は宿題支援である3。サンタ・フェ・スプリングス市では,児童とティーンを対象に宿題支援を行っている。児童は図書館で,ティーンは近隣のティーンラウンジで行われている。訪問時,ちょうど児童向けの宿題支援が行われていた。児童コーナーの入口付近で,図書館スタッフが2人の児童にワークシートを使って教えていた。図書館スタッフがワークシートの答えを問いかけながら進めていた。子どもたちの受け答えはとてもフランクかつ元気で,「教わっている」という雰囲気はなかった。



バーバンク中央図書館
バーバンク市の中央図書館である4。バーバンク市はロサンゼルス市の中北部に位置し,サービス対象人口は約10.5万人である。図書館は中央館と分館2館で,2026年以降は移動図書館を運行する予定である。来館者数は49.5万人,物理資料の貸出は63.2万点,電子資料の貸出は13.8万点であった。物理資料の貸出密度は6.0で,ロサンゼルス周辺では多い。図書館スタッフは66.28人で,うちALA-MLSは20.11人であった。なお,バーバンク市は群馬県太田市の姉妹都市である。
歴史的には,この地域の図書館は当初カウンティー図書館であったが,市の発展に伴い1938年に市立図書館として独立した。その際,蔵書をすべてカウンティに返却したため,書棚が空っぽになったという。現在の中央館は1963年に開館した建物である。現在,図書館では新たな図書館建設に向け,2025年10月以降,住民との対話を始めている5。建設のため,州立図書館から995万ドル(約16億円)の補助金を獲得している。
図書館には,バーバンク市条例に基づき図書館委員会(Board of Library Trustees)が設置されている6。委員は7名で任期は4年である。図書館に関する調査研究と提言,規則の策定と議会への提案,土地取得の勧告,議会に対して図書館全般について意見を述べることなどが権限として定められている。最終的な決定は議会であるが,重要な事項について意見を反映することができるようになっている。
入口を入ると総合カウンターがあり,2階へは左右の階段から上がることができる。1階は主に大人とティーン向け,2階は基本的に児童向けである。1階中央にはインフォメーション・カウンターがあり,その前にPCや閲覧席が並ぶ。いずれもよく利用されていた。入口から見て右側には,予約図書,新刊図書,大活字本,難易度を調整した図書(イージーリーダー,3段階),新聞,雑誌,多言語図書(スペイン語,韓国語,アルメニア語,ペルシャ語,ロシア語),フィクション(ミステリーのみ別置),視聴覚資料(DVDやBlu-ray,CDなど)がある。一番奥には友の会が運営する書店があった。左側にはローカルヒストリー,ノンフィクション,TEENコーナー,種の図書館などがある。また,大型図書は壁面に沿って別置されていた。
雑誌は同一タイトルをバックナンバーも含めて面陳しており,雑誌架はにぎやかな印象であった。フィクションの複本は多くないものの,2冊程度のものは比較的よく見られた。ノンフィクションの最初には「テキストブック」と「公務員」と書かれた書棚があり,大学入学試験や公務員試験の参考書・問題集が並んでいた。テキストブックの中には,「Library Assistant」 や 「Library Director」 など,図書館関連の職の対策本も含まれていた。ノンフィクションの著者記号はDDC / カッター・サンボーンの著者記号 / 著者姓の三段構成である。分かりやすさのためであろうか。TEENコーナーはフィクション,グラフィックノベル,マンガが充実していた。また「Blind Date with a Book」と題した企画展示も行われていた。図書は,包装され中身を分からないようにし,ジャンルと簡単な図書の内容を手書きで書いたメモが付けられている。種の図書館は,目録カードボックスを活用していた。「貸出」の際は,日付と種の種類を記入する仕組みである。
書棚は7段で,最上段と最下段は使用されていなかった。ノンフィクションでは面陳されている図書が比較的多かった。図書にはRFIDが貼付され,館籍シールも貼られていた。OPACからILSはSirsiDynix社であった。
館内にはスタディールームが2室あった。他にデジタルメディアラボ「Spark」が設けられている7。但し,訪問時は閉まっていた。実施プログラムは非常に充実しており,1月分のプログラム案内の冊子は11ページに及んでいた。ティーン・グラフィック・ノベル・クラブ,月の観察会,実物大のキャンディランドで遊ぶ会,各自が静かに読書を楽しむ会など,興味深い内容が多い。また,利用者が自らプログラムを提案できるウェブフォームも用意されていた8。
2階は児童室で,フィクション,ノンフィクション,グラフィックノベル,多言語図書(フランス語,アルメニア語,スペイン語),ボードブック,ピクチャーブック,音声付き絵本,DVDなどが排架されていた。イージーリーダーやGrade 3/4向けのアーリーチャプターブックなど,読書レベルに応じた資料も別置して排架されている。オハイオ州でよく見た「幼稚園に入る前に1000冊読もう」キャンペーンも行われていた9。さらに,リテラシー会議室があり,英語の読み書き能力向上や英会話を学ぶことができる。これはロサンゼルス市の図書館と同様に,カリフォルニア州立図書館の支援を受けて実施されていた10。一対一の指導を無料で受けられる。
注目すべき点を三つ挙げたい。一つ目は,キャリア支援である。1階には「ジョブ・コネクト・ルーム」という部屋が設けられており,職を探している人が利用することができる11。求人検索,履歴書作成,印刷などが可能である。連邦政府関連機関の施設の位置づけである。カウンター近くには過去4か月分の求人票をまとめた分厚いファイルも置かれていた。訪問時,実際に利用している人がいた。さらに,12週間の「ジョブ・コネクト・プラス」というプログラムを実施している12。これは,グループセッションや面談を通じて参加者の個別ニーズに応じたトレーニングを提供するものである。
二つ目は,ソーシャルワーカーを雇用し,社会的包摂に関わる取組を行っている点である。1階には「The Link」という部屋が2024年に設けられていた13。ここでは,シェルター,食料,健康管理,経済的・法的支援などについて相談することができる。ソーシャルワーカーを配置した際の新聞記事から推察すると,図書館に来ている利用者に積極的に声をかけているようである14。
三つ目は,視覚障害者向けサービスにおいて専門機関との接点となっている点である15。入口近くにデジタル再生機器とメモリーが置かれていた。サービスの実施主体はバーバンク市の図書館ではなく,Braille Institute Libraryである。バーバンク市立図書館では,このサービスの紹介に加え,利用登録や機器提供の窓口として機能している。オハイオ州ではクリーブランドにある図書館(OLBPD)が主に対応していたが,カリフォルニア州は州域が広いため,LCのNLS(National Library Service for the Blind and Print Disabled)に基づくRegional LibraryとSubregional Libraryが4館設けられている。それらの間では地域分担がなされている。Braille Institute Libraryは,ロサンゼルスを中心とする南カリフォルニアを担当している。利用者の身近な場所で再生機器の紹介や登録支援を行う接点の存在は,非常に重要である。
四つ目は,専門的業務に従事するライブラリアンの職について,ALA-MLSの資格を不要とする動きが報告されている点である。これは,図書館管理者(library manager)によって進められており,必須要件としないことが検討されていると言う。ただし,バーバンク公共図書館からは,このことに関する情報は出ていない。これに対して,ロサンゼルス周辺の労働組合から反対の声明と署名活動の呼びかけが出されている16。






アップランド公共図書館
サンバーナーディーノ・カウンティにある17。サン・ガブリエル山脈がきれいに見える。図書館は1913年,カーネギー図書館として開館している18。その後,1969年に現在の建物が建設された。建設から時間は経っているが立派な建物で,古さはそれほど気にならなかった。図書館の前には市役所と退役軍人記念碑がある。
サービス対象人口は約7.8万人であるが,図書館は1館のみである。人口規模に比べると図書館数は少ない。スタッフは12.25人で,ALA-MLIS保持者は2人であった。ライブラリアンは少ないという印象である。物理資料の貸出は16.2万点,電子資料は3.6万点で,物理資料の貸出密度と2.1とあまり高くない。州の図書館統計では人件費が示されているが,この図書館は該当する数字が記載されていなかった。図書館は2014年以降,Library Systems & Services(LS&S)にアウトソーシングされている19。図書館委員会(Board of Trustees)は通常どおり設置されており,議事録を見ると,LS&S社から派遣されている図書館長が委員会に出席していた20。
建物は1階と地下1階の構成である。中央部分が吹き抜けになっており地下へ降りる階段があった。天井には円い窓が9つあり,光が入って館内は明るい。入口を入るとすぐ左側に総合カウンターがあり,EnvisionWareの自動貸出機も設置されている21。1階は入口を背にして右側が児童コーナー,左側がフィクションと友の会の書店などがある。訪問したのは土曜日である。児童コーナーには何組かの親子がおり,遊具コーナーで子どもたちが楽しそうに遊んでいた。児童コーナーにはフィクション,ノンフィクション,グラフィックノベル,絵本,厚紙の図書などが排架されている。プログラム用の部屋もあるが,この日は閉まっていた。全体にサインが少なく,棚差しもないため,資料はやや探しにくい印象であった。図書館は全体に空間が区切られていないため,遊具のあるスペースで遊ぶ子どもの声は館内に響いていた。
カウンター左側のフィクション近くには,スペイン語図書,予約図書,新刊図書,大活字本,DVDが並んでいる。フィクションはサイエンスとミステリーが別置されていた。棚は7段で一番下は使われていない。複本はそれほど多くないが,2~3冊程度あるものははいくつか見られた。RFIDは貼付されておらず,ILSはPolarisであった。近くでは,州立公園のパスの貸出に加え,トレッキングポール,双眼鏡,蚊帳など,ハイキングに必要な道具をまとめたバックパックも貸出していた。友の会の書店(Friends of the Upland Public Library Bookstore)は館内で最も人口密度が高かった。主に寄贈本を販売していたが,ミステリーなどは図書館の廃棄図書が中心であり,価格は75セントが最も多かった。
地下1階は,入口を背にして右側を中心に書架がある。一人用の閲覧席もあり,多くが埋まっていた。この閲覧席の机は少し古い印象である。棚は6段で一番下は使われていない。奥にはTEENコーナーがあり,フィクションとグラフィックノベルが排架されている。日本のコミックもここに置かれていた。ノンフィクションの請求記号はDDC/著者の姓/著者名の頭文字1文字であった。スタディールームは2部屋あり,ほかにリテラシーの部屋がある。ここでは識字教育やESLの個別指導をボランティアから受けることができる22。カリフォルニア州全体で行われているプログラムである。訪問した当日も1対1の指導が行われていた。
階段の左側には地図ケースや種の図書館があった。種の図書館は目録カードケースではなくステンレス製のケースが使われていた。横にはフォルダが置かれ,種をいつ,どこに,どのように植えるかといったメモが,種ごとに書かれていた。近くにはアニマルシェルターの犬や猫の写真も掲示され,飼い主が見つかったものには「Adopted」と書かれていた。PCは4台あった。閲覧スペースでは,読書する人,仕事をする人,PCで作業する人,ボーとする人など,さまざまであった。利用者ではアジア系の住民が多い印象を受けた。
プログラムは多様で,ライムタイムと「家族でお話会」は平日,交互にほぼ毎日実施されている。十代を対象としたガーデニングやブッククラブも開催されている。地域の歴史については,カリフォルニア州立大学や州立図書館などと連携し,デジタル化を進めている23。
この図書館はアウトソーシングされた図書館であるが,顕著に他館と異なるかどうかはすぐには判断できない。日本の委託・指定管理図書館のように,職員がそろいのユニフォームを着ているわけでもない。見た中で気になった点としては,棚差しがなく資料探しが難しそうなこと,閲覧席などの設備が古くの更新が十分ではないこと,などを挙げられる。統計データを見ると,ALA-MLS比率や貸出密度はいずれも低い。ただし,貸出密度の低さについては,人口に対して図書館が1館しかないことも影響しているであろう。
そもそもこの図書館は,市が図書館予算として支出している金額が少ない。カリフォルニア州の統計で人口6万人以上9万人未満の30館を対象に一人あたり予算を算出してみると,ここは25番目で24.4ドルであった。アウトソーシングの効果と見ることもできるかもしれないが,しっかりしたサービスを維持するには十分な予算が必要である。一方で肯定的な側面もある。友の会の書店は賑わっており,市民との連携はうまくいっているようであった。また,種の図書館の工夫や展示には,細かな配慮も感じられた。






アーバイン公共図書館 ヘリテージ・パーク図書館
オレンジ郡アーバイン市の公共図書館である24。アーバイン市の人口は約30万人で,人種としては白人が40.1%であるのに対して,アジア系が39.8%とほぼ同じである25。ロサンゼルスとサンディエゴの間に位置し,日本企業も多く進出している。
この図書館は,2025年7月にオレンジ・カウンティからアーバイン市へ移管され,8月に新たに開館した。開館にあたっては施設をリノベーションしている。現在はヘリテージパーク図書館とユニバーシティパーク図書館の2館体制であるが,3月にはケイティ・ウィーラー図書館が加わる予定である。将来的には,住民が自宅から2マイル以内で図書館にアクセスできるよう,配置を検討しているという26。
訪問したのは平日の夕方であった。入口を入ると市の議員を紹介するディスプレイがある。また,ブックトラックがあり,友の会の書店の本が販売されていた。入口左側には友の会の書店があった。小さいながらよく整理されている。その横の集会室では,ティーンがボードゲームをしていた。図書館はワンフロアで,仕切りはほとんどない。
中に入ると利用者が多いのに圧倒される。ロサンゼルスでこれほど利用者の多い図書館は初めてであった。ざっと数えても120人ほどが館内に滞在していた。なお,この図書館は昨年開館したため,2024–2025年のカリフォルニア州図書館統計にはまだデータが掲載されてない。利用者は若者が多く,アジア系の割合も高い印象であった。利用者が多い理由を尋ねると,通常の図書館利用に加え,周辺に大学やコミュニティカレッジが多いこと(カリフォルニア大学アーバイン校もある),Wi-Fiを含むネット利用などを挙げていた。ただし,もともとこの館は,オレンジ・カウンティの中でも特に利用の多い図書館であった27。
入口前に総合カウンターがあり,入口を背にして右側には貸出・利用者登録用のカウンターがある。ほかにもノンフィクション付近と児童コーナーにカウンターがあったが,貸出・利用者登録用以外は一人の席であった。フロアには10人ほど座れるテーブルが3つ並び,その奥にも1つ置かれている。事務室を挟んだ左側にも同様のテーブルが2つあった。このうち2つのテーブルにはPCが設置されている。ほかのテーブルは低めの仕切りで対面と区切られている。学習机やソファ席も充実していた。利用者は,一人や友人同士で勉強する人,PCで仕事をする人,動画を見ている人,読書をしている人など,様々であった。
入口の反対側には,ヘリテージ・コミュニティ公園とつながるテラス席があり,訪問時には10人ほどが勉強していた。ロサンゼルス周辺は1月でも日中は20度を超える日が多く,このテラスはとても気持ちのよい空間であった。
資料は,入口を背に右側から見ていくと,まず予約資料がある。量はかなり多い。その先に多言語図書が並ぶ。ベトナム語,スペイン語,タガログ語,ロシア語,ペルシア語,韓国語,日本語,中国語,アラビア語などがある。続いて大活字本,グラフィックノベル,ノンフィクション,視聴覚資料がある。新聞・雑誌コーナーもあるが,規模は非常に小さい。中央の事務室を挟んで反対側にティーンコーナーと児童コーナーがある。今回,児童コーナーを詳しくは見ていないが,親子連れの利用が多かった。ティーンコーナーの図書は Younger Teen(対象は日本の小六から中三)と Older Teen(高校生)というシールで区別されていた。
自動貸出機は3台あった。アップランド公共図書館と同様, EnvisionWare の製品であった。RFIDは付いている資料と付いていない資料が混在している。カウンティから引き継いだ資料には付いておらず,市で購入した資料には付いているとのことであった。現在は移行途中である。OPACは SirsiDynix の製品で,iPadのような小型ディスプレイのみのOPACもあった。
各コーナーには「Display」と書かれた書棚があった。そこでは,図書を表紙が見える形で展示されている。複本はかなり多い。たとえば フィクションのDiana Palmer の Law Breaker は5冊,ノンフィクションでもIsabel Wilkerson の Caste は4冊並んでいた。予約が多くても来館者のみが借りられる「Its your lucy day」というコーナーもあった。ニーズを踏まえた選書をしているようであった。図書には館名シールが貼られていたので,館籍があるようであった。
興味深いのは,この図書館の移管の経緯である。カウンティから市への移管は,アーバイン市がカウンティに多額の資金を拠出していたにもかかわらず,十分な図書館サービスを受けられていなかったことが背景にあるとされている。カウンティへの運営費負担は全体の28%を占めていたにも関わらず,市内の図書館施設面積は11%にとどまっていたという28。アーバイン市の脱退は,オレンジ・カウンティにとっても大きな影響を与えるものであろう29。当たり前のことではあるが,負担と受益のバランスが適切でなければ,連携は長続きしない。図書館のコンソーシアムや協力体制を設計する際には,こうした点への配慮が不可欠であろう。






オレンジ市公共図書館及び歴史センター
オレンジ・カウンティのオレンジ市にある図書館である30。カウンティ図書館ではなく,オレンジ市が設置運営する図書館である。サービス対象人口は約13.9万人である。図書館は市内に3館ありここは中央図書館である。
図書館スタッフは40.95人で,ALA-MLS保持者は14人である。物理資料の貸出は46.4万点,電子資料は19.1万点であった。電子資料の比率が比較的高い。物理資料の貸出密度は3.3である。図書館には図書館委員会(Library Board of Trustees)が設置されており,地域社会の意見を反映する役割が期待されている31。諮問機関であり,方針や規則,計画の策定を支援する。
図書館は1916年にカーネギー図書館として設置された。現在の建物は3代目である。初代のカーネギー図書館は残っていないが,土台のみが残っているとのことだった。図書館は市の中心部にあり,道路を挟んだ向かいには市役所がある。訪問時には,そこでミネソタ州でのICEと市民との衝突を受けたトランプ政権への抗議デモが行われており,通行する車が賛同のクラクションを鳴らす音が図書館内に響いていた。
入口を入ると,まず建物が立派である。左手にはフィクション,多言語図書(ベトナム語,スペイン語など),TEENコーナーがあった。TEENコーナーにはフィクション,ノンフィクション,グラフィックノベルが並び,奥にはTeen Innovation Labo も設けられている32。ここはティーンの自習スペースも兼ねている。中央にはブラウジングコーナーがあり新聞や雑誌が置かれていたが,雑誌架はやや寂しい。CloudLibrary の電子雑誌サービスが紹介されていた。自動貸出機は Bibliotheca のものが4台設置されている。
右手には大きな貸出カウンターがあり,その奥に視聴覚資料コーナーがある。DVD,CD,オーディオブックなどが並んでいる。さらに奥にはホームワークセンターが設けられていた。火曜日から木曜日に,ボランティアが1年生から6年生までの宿題を支援している。そのさらに奥には児童コーナーがあるが,今回は見ていない。貸出カウンター前には米国250周年をテーマにした展示が行われていた。オレンジ市が所有する「独立の鐘」(Liberty Bell)のレプリカも展示されていた。この鐘はアメリカ独立を象徴するものとされている。
貸出カウンター前の階段を上がると2階である。天井は高く,照明も美しい閲覧室がある。中央にはPCが20台ほど並び,ノンフィクションの書架もある。奥に「リテラシー」と書かれた部屋がある。カリフォルニア州の助成事業である。ここでは,職業スキルに関するワークショップが行われており,求人情報の探し方や面接戦略を学ぶ。また,英語学習の会も開かれている。事前に3本の記事を読んできて,それをもとにディスカッションを行うというものであった。他にスタディールームが2部屋ある。壁際には伝記が排架されていた。電子書籍サービスとして Palace プロジェクトがポスターで紹介されていた。OPAC は Aspen Discovery を使用していたが,これはインタフェース部分である。ILS は Symphony 系のようであった33。書棚は7段で,一番上と一番下は使われていない。複本は比較的多く見られた。
2階奥には,元市長 Joanne Coontz を顕彰したリーディングルームがある。小さな閲覧室であるが,部屋を取り囲むようにさまざまな「もの」が展示されている。スライドプロジェクター,バケツ,タイプライター,野球のグラブとボール,土器など多岐にわたる。若干脈絡がない。一部には解説が付けられていたが,解説のないものもある。そこには「ゆかりをご存じの方はお知らせください」と書かれていた。なるほど。
その近くには「歴史センター」がある。これは2007年の改修時に設置されたものである34。職員不足のため通常は閉まっているが,予約があれば対応してくれる。中を見せてもらうと,貴重そうなコレクションが排架されていた。主に1871年以降のオレンジ市の歴史資料である35。卒業アルバムなども多く所蔵されており,一部は展示されていた。室内には「もの」を多く所蔵しており,衣服などがマネキンで展示されていた。中には約100年以上前の女子バスケットボールのユニフォームもあった。現在のものとはまったく異なるのがおもしろい。図書館の近隣にはいくつかの歴史協会があり,そうした団体とも連携しているとのことであった36。この階には他に種の図書館や,求職情報を集めたファイルが置かれていた。
いくつか興味深いサービスを2つ紹介したい。一つが「ポップアップライブラリー」である37。これは地域の集まりなどに図書館が出向く取組である。日本でも移動図書館などで似た活動が行われているし,他国・地域では自転車を使った例も見られる。ここでは事前に団体からの申し出を受けて実施する。図書館側はキャノピー(テント),机,椅子,テーブルクロスなどを持参する。現地では利用券の発行,資料の貸出,プログラムの広報,賞品付きのゲームなどを行う。図書館の存在を知ってもらう方法として,有効な取組と感じられた。
もう一つはアルツハイマー病・認知症キットの貸出である38。日本でも近年,日本図書館協会などが認知症関連のサービスに取り組んでいる39。この図書館では関連資料や「もの」をまとめたキットを貸出していた。キットはいくつかの種類に分かれており,認知症の人向けの記憶に関するアクティビティ用具や図書のキット,介護者向けの図書や情報のキット,回想法に用いるキットなどがある。たとえば後期認知症の人向けのキットには,関連図書3冊,DVD1点,ぬいぐるみ1点,アクティビティキット4点が入っている。日本では展示中心の取組が多いようだが,こうしたキットも有効かもしれない。






- https://sfslibrary.org/ ↩︎
- https://sfslibrary.org/collections___resources/lending_library.php ↩︎
- https://sfslibrary.org/children/homework_help.php ↩︎
- https://burbanklibrary.org/ ↩︎
- https://newburbanklibrary.com/ ↩︎
- https://www.burbankca.gov/web/city-clerks-office/boards-commissions-and-committees-information ↩︎
- https://burbanklibrary.org/spark ↩︎
- https://burbanklibrary.org/i-want/learn-more-about-library/program-proposal ↩︎
- https://burbanklibrary.org/1000books ↩︎
- https://burbanklibrary.org/literacy ↩︎
- https://burbanklibrary.org/jobconnect ↩︎
- https://burbanklibrary.org/jobconnectplus ↩︎
- https://burbanklibrary.org/socialservices ↩︎
- https://outlooknewspapers.com/burbankleader/news/city-s-social-worker-connects-public-with-aid/article_8c18a382-9ca6-57f1-adb4-40a50a551b12.html ↩︎
- https://burbanklibrary.org/books-on-demand ↩︎
- https://afscme36.org/news-0/support-city-burbank-library-staff ↩︎
- https://www.uplandca.gov/library ↩︎
- https://www.uplandca.gov/local-history ↩︎
- https://www.lsslibraries.com/, https://www.pressenterprise.com/2014/08/24/upland-a-new-era-for-public-library/ ↩︎
- https://uplandca.gov/library-board ↩︎
- https://www.envisionware.com/ ↩︎
- https://www.uplandca.gov/literacy ↩︎
- https://www.uplandca.gov/local-history ↩︎
- https://cityofirvine.org/irvine-public-library/irvine-public-library-hours-locations ↩︎
- https://en.wikipedia.org/wiki/Irvine,_California ↩︎
- https://cityofirvine.org/irvine-public-library/library-future-planning ↩︎
- https://voiceofoc.org/2024/06/oc-library-visits-climb-as-irvine-looks-to-leave-county-library-network/ ↩︎
- https://cityofirvine.org/community-services-department/irvine-public-library-project-background ↩︎
- https://voiceofoc.org/2024/06/oc-library-visits-climb-as-irvine-looks-to-leave-county-library-network/ ↩︎
- https://www.orangepubliclibrary.org/home-library ↩︎
- https://cityoforange.granicus.com/boards/w/9a0b81cf65362b7c/boards/40916 ↩︎
- https://www.orangepubliclibrary.org/kids-and-teens/teens/teen-lab ↩︎
- https://librarytechnology.org/library/13649? ↩︎
- https://orangereview.com/article/638/orange-public-library-history-center ↩︎
- https://www.orangepubliclibrary.org/local-history/contact-or-visit ↩︎
- https://www.historicalorange.org/ ↩︎
- https://www.orangepubliclibrary.org/visit/popuplibrary ↩︎
- https://www.orangepubliclibrary.org/books-and-more/special-collections/alzheimer-s-dementia-kits ↩︎
- https://www.jla.or.jp/committees/ninchisho/ninchisho-jirei/ ↩︎