ANGEL CITY PRESSは,スコット・マコーリーとパディ・カリストロによって1992年に設立された出版社である1。ロサンゼルスを拠点として,南カリフォルニアの文化,歴史,建築に焦点を当てたノンフィクションを刊行してきた2。出版物の中には,日系作家であるNaomi Hiraharaの著作も含まれている。
ANGEL CITY PRESSの事業は,2023年以降,ロサンゼルス公共図書館(LAPL)が引き継いでいる3。このことはカレントアウェアネスでも紹介されている4。創業者が引退を考えた際,事業をLAPLに寄附するというアイデアが浮かび,図書館長に打診した結果,実現に至ったという。現在の名称は「ANGEL CITY PRESS at LAPL」である。
同社の出版物の中には,これまでもLAPLの所蔵資料をもとに制作されてきたものがある。その意味では,出版社と公共図書館との関係は以前からあったとも言える。事業は今後,図書館委員会のもとで運営されるが,事業方針はこれまでと変更せず,編集の責任者も引き継がれることになっている5。事業にかかる経費は年間30万ドルから50万ドル程度と見積もられているが,引き継いだ既刊書の売上と,今後の新刊による収入で経費を補う計画とされている6。今後は,ロサンゼルスおよび南カリフォルニアに関する図書を,年間およそ8冊刊行していく予定とされている。
日本でも大学出版と大学の連携はこれまでも耳にしてきたが,公共図書館が地域の出版社の事業を引き継ぐ例は聞かない。地域の出版文化を守るという点で,きわめて直接的な取組であり,注目される。近年は地方出版社を取り巻く環境は厳しさを増している7。税金による単純な救済は難しいにしても,地域の出版物を将来にわたって守っていくために,図書館がどのような役割を果たし得るのか,改めて考える必要もあるだろう。
- https://acp.lapl.org/ ↩︎
- https://en.wikipedia.org/wiki/Angel_City_Press ↩︎
- https://www.latimes.com/entertainment-arts/books/story/2024-01-08/the-l-a-public-library-is-getting-into-book-publishing-why-it-makes-total-sense ↩︎
- https://current.ndl.go.jp/car/208819 ↩︎
- https://www.lapl.org/angelcitypress/about ↩︎
- https://www.csmonitor.com/Books/2024/0228/An-indie-publisher-finds-its-future-with-a-public-library ↩︎
- https://nagacle.net/topics-9565/ ↩︎