図書館は人生を変える

サンデンハム図書館で説明したLove your Library in Your Languageで使われているポストカードの下には,Public Libraries VictoriaのロゴとともにLibraries Change Livesのロゴが入っていた。これはビクトリア州で展開されている図書館のキャンペーンであり,公共図書館を社会に対してどのようにアピールしていくかという点で興味深い取組である。ここで簡単に整理しておきたい。

この取組は,州立図書館とPublic Libraries Victoriaが2018年から共同して実施しているものである1。2018年から2019年にかけて活発に展開されたが,現在も継続している。ウェブページでは「図書館は進化している」として,最近の図書館の動向が紹介されていた。そこでは,オンラインのプログラム,乳幼児にとっての最初の社交の場,読書会などの社交の場,アート・ギャラリー,劇場,ストリーミングサービス,録音スタジオ,学習の場,会議室,ラウンジ,サイエンスラボなどが写真とともに示されている。実際にビクトリア州の図書館を見てきた印象として,これらは特別なものではなく日常的な活動として確かに定着していた。

「もっと詳しく知る」というページでは,活動に関する定量的な実績とともに,図書館の中核的役割が四つ示されていた。すなわち,「あらゆる種類の識字能力を育成する」「健全なコミュニティを創造する」「文化と創造を支援する」「公共空間を提供する」である。このように,キャンペーンでは新しい図書館像とその役割が整理されている。

文献によれば,このキャンペーンには四つのねらいがあるとされている2。一つ目は,公共図書館を社会的団結,生涯学習,集団的レジリエンスを支える社会・市民インフラの一形態として再定義することである。図書を貸出す,情報を提供するといった活動の先を述べているわけである。二つ目は,図書館の経済的価値を強調し,政策決定や資金配分に影響を与えることである。このことは特に重要とされている。その根拠としてしばしば引用されるのが“Libraries Work!”という報告書であり,図書館への1ドルの投資によって4.3ドルが地域にもたらされるとされている3。三つ目は,事例や物語を通じて利用者の生活体験を可視化することである。このことは,数字だけでは捉えにくい図書館の価値を示すことに寄与する。最初に述べたLove your Library in Your Languageもその一例であり,多様な言語的背景を持つ利用者の声をストーリーとして伝えるものである。四つ目は,州の図書館政策(健康,包摂,生涯学習)と密接に関わり,その実現に寄与することである。

このような州全体での取組に加えて,各図書館でも独自に展開している。たとえばジーロング図書館では,「図書館は人生を変える」というウェブページを設けており,市民に対してキャンペーンへの参加が呼びかけられている4。具体的には,「図書館は人生を変える」というポストカードにメッセージを書くこと,ソーシャルメディアで#LibrariesChangeLivesのハッシュタグを付けて図書館への思いを書くこと,図書館のフォームにエピソードを入力すること,そして図書館に行って図書を借りることが挙げられている。利用者が入力したエピソードはウェブ上で公開されている。同様のウェブページはビクトリア州内の他の図書館にも設けられていた。また,ある図書館では,栞に「図書館は人生を変える」と入れていた。

図書館の新たな姿を強調すること,その活動が経済的価値を生み出していること,物語に着目して社会に訴えていくこと,さらに多様なチャネルを通じて浸透を図ることなど,図書館の活動をアピールする方法として参考になる点が多い。そして最終的に政策の実現につなげようとしている点も重要である。

  1. https://www.plv.org.au/libraries-change-lives/ ↩︎
  2. https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/01616846.2026.2614911 ↩︎
  3. https://www.slv.vic.gov.au/sites/default/files/Libraries-work.pdf ↩︎
  4. https://www.grlc.vic.gov.au/learn/libraries-change-lives-page ↩︎