行ったところ(3/3〜)

クレイギーバーン図書館

ヒューム市の図書館である1。ヒューム市はメルボルンから見て北にある自治体で,面積は504平方キロメートルとかなり広い。東京都内で最も面積の大きい奥多摩町の約2.2倍である。図書館は5館あり,これに加えて移動図書館が運行されている。他に「キヨスク」と呼ばれる予約資料や人気資料を自動で貸出す機器が3か所に設置されている。統計によるとサービス対象人口は約27.2万人であり,職員数はFTE換算で53.6人であった。物理資料の貸出は年間100.9万点,電子資料は21.7万点であり,物理資料の貸出密度は3.7点,電子資料を含めると4.5点となる。サービス対象人口や面積を考えると,図書館数はやや少ない印象である。

クレイギーバーン図書館は,郊外型の商業施設がある地域にある。図書館は,会議室や多目的室などを備えたグローバル・ラーニング・センターの1階に入っている。ワンフロアだがスペースはかなり広い。この図書館は2014年にシュミット・ハマー・ラッセン・アーキテクツの第1回Library of the Yearを受賞している2。この賞は,いわゆるIFLA Library of the Yearとして知られている賞である。また,同年,ガーディアン紙が選んだ「オーストラリアの美しい図書館10館」にも選ばれている3。記事で取り上げられた多くが州立図書館(ビクトリア州立図書館など)であったが,基礎自治体の図書館としては,メルボルン市の「ドックの図書館」も選ばれていた。

館内のフロアは大きく三つに分かれている。入口側から順に,雑多な資料や機能が集まるスペース,中央に大人向けコレクション,奥に児童向けコレクションがある。いずれもそれなりに広いが,とくに入口側のスペースが最も広い。図書館の外壁はガラス張りで,開放的である。

入口を入るとカウンターが設けられている。カウンターはここだけである。その横には,市の情報提供や支払いに対応するカウンターが置かれていた。入口側のフロアには,雑誌,PC約20台,DVD,オーディオブック,大活字本と伝記,ティーンコーナー,Library of Things,予約図書などがある。カウンター前にはイベント案内と関連図書が一緒に展示されている。ファーストネーション・ピープル・オブ・オーストラリアに関する特集展示も行われていた。Library of Thingsの「もの」はガラスの棚に収められている。アップル・ペンシル,セルフィー・スティック,スキャン・リーダー・ペン,サーマルカメラなどがあった。その棚の上には,VCE(Victorian Certificate of Education)関連の図書が置かれていた。これはビクトリア州の高校修了・大学進学資格に関わる資料であり,高校生にとっては重要な資料である。予約図書の棚では,ワンピース,NARUTO,ブルーロックといった日本のコミックが目についた。

TEENコーナーでは,オンラインサービス「COMIC PLUS」を利用できることが大きく掲示されていた。木製の曲線的な書棚によって囲まれ,隠れ家のような空間になっている。訪問当初は利用者がいなかったが,しばらくすると二つのグループがソファでお話しをしていた。夕方は生徒の利用が多く,館内の他の閲覧席も占拠していた。TEENコーナーにはディスプレイがあり,PS5で遊ぶことができるが,注意書きとして Fortnite や Roblox は使用しないようにと書かれていた。

中央のフロアでは,壁際にノンフィクションが並び,内側にフィクションが排架されている。ノンフィクションはテーマ別で,ビジネス&キャリア,ホーム&ガーデン,フード&クッキングなどに分かれていた。書棚の各所には,図書を紹介するパウチされた小さな掲示があり,フィクションの「Kawa」周辺には,川口俊和氏の『コーヒーが冷めないうちに』も紹介されていた。そこには「すぐ読める」「美しい文章」「心温まる」「キャラクター中心」といったコメントが書かれていた。このフロアにはQuiet Roomと書かれたガラス張りの部屋が二つあった。外が騒がしいので,静かな空間を求める利用者には便利だが少し狭い印象である。多言語資料としては,タミール語,アラビア語,パンジャブ語,ウルドゥー語,シンハラ語などがあった。英語学習用にはEAL(English as an Additional Language)のコーナーが設けられている。ここではESLとは言わないようである。

ハードカバーは装備されており,ペーパーバックは装備されていなかった。RFIDタグが貼付され,入口付近には自動貸出機が3台設置されていた。フィクションの複本は排架されているものでも2冊程度でそれほど多くない。書棚は比較的低い4段の移動式であった。表紙を見せる展示が多かった。OPACはSirsiのシステムが使われていた。

奥は児童コーナーである。蔵書が非常に充実している。ジュニアフィクション,ジュニアノンフィクション,ジュニア・イージー,ジュニア・グラフィックノベル,絵本,ボードブック,育児関連資料,先住民族関連図書,多言語図書(ネパール語やタミール語など),DVDなどがあった。リテラシー関連資料もあり,ステージ1からステージ7までに区分され,プラスチックケースに複数冊収められていた。何冊も一緒に借りられる。この扱いはコロンバスの図書館と似ている。訪問時には,窓際のスペースでクラフト関連のプログラムが実施されていた。厚紙でキャラクターを作るというものであった。小学生約15人が参加していた。このスペースは,こうしたプログラムを開催するスペースとして使われている。近くには,ニューロダイバース・ラーナー向けの資料コーナーがあった。ADHD,自閉症,失読症などの児童に関連した資料が排架されていた。

この図書館はプログラムが充実している。興味深いものの一つが Library After Dark である。毎週木曜日に22時まで開館し,ゲストスピーカーの講演,映画,ゲームなど様々なプログラムを行っている。直近では,ムービーナイトとして18時半から20時半まで映画を楽しむ企画があった。別の日にはレバノン,トルコ,ベトナムなどのコーヒーを味わう「コーヒー・アラウンド・ザ・ワールド」も実施されていた。子ども向けには,就学前に1,000冊読もうキャンペーンが行われており,公共図書館ビクトリアが実施する「ビッグサマー読書」も宣伝されていた。オンライン実施される,一対一のテックサポートは1週間先まで埋まっていた。

興味深い点を2点述べたい。一つは Library After Dark である4。これは,ポーカーで夜を過ごす代わりに,安全でフレンドリーな環境で過ごす機会を提供するものとされている。ウェブページでは,ギャンブルのリスクが強調されるとともに,孤独の軽減やつながりの創出も目的として挙げられていた。この取組は以前から実施されており,2019年から2023年はギャンブル財団の支援を受けて行われた。2025年から2026年はビクトリア州の支援を受けたLibrary After Dark 2.0が実施されている。2.0には26館が参加している。参加図書館は少なくとも週1回,20時まで開館時間を延長し,創造的なプログラムを実施することになっている。ある図書館で話しを聞いた中では,必ずしもギャンブラーが図書館に来館するようになったとはいえないかもしれないが,人を集める活動として意義があるし,そうした図書館の役割を外部に発信する意味でも意義があるとのことだった。

もう一つは,Talpa SearchというAI検索についてである5。これはLibraryThing社が開発したもので,自然文を入力すると,該当する図書を検索してくれる。たとえば「ビクトリア州の歴史について知りたい」と入力すると,関連する資料が提示される。こうしたことは日本でもすでに実装され始めているが,もう一つ興味深かったのは表紙検索である。これは表紙の絵柄やトピック,カバーの色を指定して検索できるものである。表紙は覚えているがタイトルを忘れてしまった場合などに,役立つかもしれない。

メルトン図書館 & 学習ハブ

メルトン市にある図書館である6。メルトン市はメルボルンの中心から北西の位置にある。面積は528平方キロメートルとかなり広い。図書館は2館で,他にアクセスポイントと呼ばれる小規模コレクションのある拠点が4箇所ある。サービス対象人口は22万人で,利用登録者は5.6万人である。職員数はFTE換算で46.4人であった。物理資料の貸出は60.0万点,電子書籍貸出は7.1万点で,貸出密度は物理資料が2.7点,電子資料を含めると3.1点である。対象人口や面積に比べると図書館数が少ない印象である。この図書館は2013年に開館している。環境に配慮したグリーンライブラリーとして建設されている7。入口側は全面ガラスの壁で,木材がふんだんに使われている。ガラスの窓側は2階まで吹き抜けになっており,開放感があった。

グラウンドフロアには,カウンシルサービス(市の支所),スタンディングのカウンター,PC(10台),自動貸出機などがある。資料としては,大活字本,DVD,予約資料,特集展示などがあり,奥に児童コーナーがある。1階には大人向けのフィクションとノンフィクション,PC(8台),ティーンコーナーなどが配置されている。2階にはテーブル席やソファ席が多く,閲覧スペースが充実していた。児童コーナーには,ジュニアフィクション,ジュニアノンフィクション,絵本,トーキングブック,幼児絵本,DVDなどがある。初期読者向け図書は4色に分けて排架されていた。子ども用のテーブル,ソファなども置かれている。テーマごとに絵本を5冊にまとめて貸出す取組も見られた。ユニコーン,犬,海の生き物など様々なテーマでまとめられていた。児童コーナーの横には母子保健センター(Maternal and Child Health Centres)がある。

1階は,手前にコミュニティ・ヘリテージのコーナーがあり,地域の歴史資料,ディレクトリ,カウンシルの資料などに分かれていた。展示ケースではオーストラリア婦人補助空軍(WAAAF)に関する展示が行われている。その横にはコミュニティ・ヘリテージ・ハブがある。ここでは住民が自らアナログ資料をデジタル化できる機器が設置されていた。映像(ビデオテープやDVD)のデジタル化機器,マイクロフィルムのスキャナー,ドキュメントスキャナー,オーバーヘッドスキャナーなどである。PCコーナーの横には「デジタルサポートブース」が設けられ,職員が常駐していた。予約不要でメール,印刷,フォーム入力などのサポートを受けることができる。

ティーンコーナーにはフィクションとグラフィックノベルが置かれていた。日本のコミックが多い。ティーン向けフィクションも児童書と同様,テーマごとにまとめて展示されていた。「凍えるような寒さ」「多様な短編小説」「すぐ読めるスリリングな読み物」などのテーマである。ここにはビデオゲーム(PS5)用のディスプレイが3台置かれていた。子どもがお母さんとの勉強の合間にゲームをしていたり,大人が話しをしながら二人でゲームをしたりしていた。

この階にはテーブル席やソファ席があり,よく利用されていた。会議室も多く設けられている。また,スタディー・ハブと呼ばれる部屋もあった。これはオーストラリア政府,近隣大学,市などが共同して設置した施設である8。オーストラリアの大学に在籍している学生などが利用できる。学生を支援するアカデミックサポートや学習アドバイスを行うスタッフも常駐している。オーストラリアではオンラインやハイブリッドで学ぶ学生が多く,そうした学生の学習拠点として各地に設置されている施設である。

グラウンドフロアには人気図書がHot Picksとして別に置かれていた。予約なし,延長なし,貸出期間7日で貸出される仕組みである。ここには複本も多く置かれていた。ある図書は複本が5冊あった。書棚は4段または5段のものが多く,多くの図書が表紙が見えるように排架されている。図書はハードカバー,ペーパーバックともに装備されていた。ペーパーバックは装備されていないと思ったが,外側だけきれいにブッカーが貼られていた。RFIDは裏表紙の裏側に貼付されている。Bibliothecaの自動貸出機も設置されていた。OPACはSirsiであった。ノンフィクションは基本的にDDC順で並べられており,歴史,趣味,ホビーが別置されていた。

興味深い点を2点述べておきたい。1点目は,この図書館は Libraries Victoria に参加している。OPACで検索する際,対象図書館を「全て」に指定すると,Libraries Victoria 全体の蔵書を検索できる。図書を依頼する場合は,OPACから利用券番号を入力して直接リクエストをかける。他館の資料であっても,図書館員に依頼する必要はなく,自分自身で予約をかけられるので便利である。

もう一点はストーリーウォークである9。これは公園などに図書館が絵本のページを順番に掲示し,利用者は歩きながら絵本を楽しむというものである。絵本は拡大して掲示している。今年は2箇所で実施され,一箇所は図書館から直線距離で1.5キロメートルほど離れた公園で行われていた。メルトン図書館では夏休み期間中に実施している。利用者は実施期間中であればいつでも参加でき,アンケートに答えると景品がもらえる。

ベンディゴ図書館

ゴールドフィールド図書館会社(Goldfields Library Corporation)が運営している10。サービス対象地域はグレーター・ベンディゴ市,ロッドン・シャイア,マセドン・レンジズ・シャイア,マウント・アレクサンダー・シャイアである。図書館はグレーター・ベンディゴ市にある。この市はメルボルンから北西約130キロのところにある。地方都市ではあるが,歴史を感じさせる街並みがある。

図書館は,以前訪問したギズボーン図書館と同じ運営会社によって運営されている。ギズボーン図書館とは直線距離で約85キロほど離れている。かなり広い地域の運営を担っている。建物は2014年にリノベーションされており,ビクトリア建築賞などいくつかの賞を受賞している。実際に訪れてみると,確かにいろいろな工夫の見られる建築物である11

入口を入るとゲートが設置されている。グラウンドフロアには児童コーナー,YAコーナー,ラウンジ&カフェ(Red wall cafe),フィクション,ノンフィクションなどがあった。階段を昇った1階にはPCが16台置かれている。他に歴史研究サービスのコーナーやミーティングルームなどがある。1階のガラス壁側には「ランタン」と呼ばれている大きなオブジェがあり,天井からの光を遮っていた。

グラウンドフロアには大活字本やオーディオブックなどもあった。カフェ周辺に新聞や雑誌が置かれており,ブラウジングコーナーになっている。この図書館ではTEENコーナーをYAコーナーと呼んでおり,書棚で囲んで小さな空間を作っていた。書架では表紙が見えるような展示の工夫が多く見られ,ノンフィクションでは近藤麻理恵氏の『Joy at Work』などが展示されていた。基本的にはDDC順で並んでいる。フィクションは請求記号が著者名のみであった。簡単である。読書会用の図書がバッグに入って大量に準備されていた。児童コーナーでは写真のように図書展示の工夫が見られた。ここには大きな水槽もある。

グラウンドフロアにはアクティビティ・スペースとして段差のあるステージが設けられていた。また,ヨーロッパでよく見かけたPODもあった。4人用のものと1人用のもの(4台)があり,訪問したときには1人用のものが利用されていた。書架は移動式である。側面には箱のように出っ張りがあり,そこに図書を展示できるようになっていた。ガラスで囲まれたミーティングスペースは一般利用者に開放されていた。

興味深かったのは1階の歴史研究サービスの2つのコーナーである12。一つは「ゴールドフィールド研究センター」と呼ばれている。ここは地域の歴史資料を集めている。過去の地域新聞のほか,出生記録,婚姻記録,死亡記録,乗船者名簿,墓地記録,金鉱採掘記録などがある。また,系図研究を行うグループが2つ活動しており,利用者への支援も行っている。

もう一つはベンディゴ・リージョナル・アーカイブズ・センター(BRAC)である13。ここにはリーディングルームが設置されており(最後の写真),部屋の奥に公文書を収めた書庫がある。開室しているのは水曜日と木曜日のみであった。これらはグレーター・ベンディゴ市,ビクトリア州公文書館,ゴールドフィールズ図書館協会のパートナーシップで運営している。この施設は1973年ビクトリア州公文書法に基づき,Class A Place of Deposit (POD) に指定されていた。地域の永久保存公文書を保管する施設である。以前訪問したGeelong Heritage Centreも同じ指定を受けていた。ウェブページを見ると,さまざまな資料の索引が整理されている。リーディングルームの前には,オーストラリアの「歴史」に関する古い資料も開架で置かれていた。かなり古い資料も含まれていたが,貸出可能となっていた。

サイデンハム図書館

ブリムバンク市にある図書館である14。ブリムバンク市はメルボルン北西に位置する自治体である。サービス対象人口は19.8万人で,利用登録者数は8.5万人であった。図書館職員はFTE換算で65.9人である。物理資料の貸出は84.9万点,電子書籍は13.6万点であり,貸出密度は物理資料のみで4.3点,電子書籍を含めると5.0点となる。来館者数は82.5万人で,物理資料の貸出数にほぼ近い。ブリムバンク市は人口の半数以上が外国生まれとされており,多文化的な地域である15。図書館の周辺にはウォーターガーデン・タウン・センターと呼ばれる巨大ショッピングモールがあった。図書館自体も商業施設やコミュニティーセンターなどとの複合施設の中にある。

図書館はワンフロアで,入口付近にカウンターがあった。カウンターの横には種の図書館が設置されている。フロアは左側からTEENコーナー,ガラスで囲まれた学習室,その奥に児童コーナーが,中央部にはDVD,フィクション,その奥にノンフィクションが並んでいた。右側にはブラウジングコーナー,オーディオブック,大活字本,多言語図書,伝記,教科書,英語学習用図書などが置かれている。訪問したのは平日の夕方であったため,学校帰りの生徒が多く滞在していた。

ノンフィクションの排架はDDC順であったが,伝記,教科書,英語学習用図書は別置されていた。PCはフロア奥などにあり24台と多めであった。実際によく利用されていた。多言語図書はクロアチア語資料が置かれていた。図書館ごとに各言語を分担して収集しているようである。MARCを確認すると,クロアチアのザグレブ国立大学図書館で作成されていた。英語学習用図書は移住や就労の際の英語力証明でよく用いられるIELTS関連資料が充実していた。またESL READという難易度が調整された図書も置かれていた。

カウンター横には「Love your library in your Language」のポストカードが掲示されていた。この点は後で触れる。雑誌や新聞も置かれており,新聞のうち人気のあるタブロイド紙Herald Sunはカウンターで利用を申し出る必要があった。書棚は4段または5段の移動式であり,表紙が見えるように展示されているものも多かった。TEENコーナーにはフィクションやComic & Mangaの書棚が並んでいた。日本のMangaが多く,予約資料を見ても『Toukyou Ghoul』や『鬼滅の刃』などが目についた。このエリアは若者を中心に混雑しており,トランプをしているグループも見られた。またビデオゲームができるディスプレイもあり,PS5などのソフトの貸出も行っていた。

児童コーナーにはジュニア・フィクション,ジュニア・ノンフィクション,絵本が並び,他にランチパッドや子ども向けDVD,ビギナー・リーダーズが置かれていた。ビギナー・リーダーズは難易度が調整された図書で,4段階に分けられている。難易度ごとに色分けされ,シリーズ毎にプラスチックケースに入れて排架されていた。シリーズには,WINGS,Rising Stars,Red Rocket Readers,Reading Champions,PM Readers,Oxford Reading Tree,National Geographic Readers,MultiLit Readers,Little Learners,I Can Read!,Fitzroy Readers,Decodable Readers,Dandelion Readers,Collins Big Catなどが見られた。また児童コーナーには遊具やPCも設置されていた。

図書には裏表紙にRFIDが取り付けられており,装備もされていた。イベントでは「Libraries After Dark」が宣伝されていた。また,日本でも時折行われている「Dying to talk conversations」というイベントも実施されていた。これは死について,終末期ケアの専門家と一緒に話し合うイベントである。

興味深かった点を3点挙げたい。1点目は児童コーナーのPCに入っていたソフトである。PCは4台あり,6種類のソフトが利用できるようになっていた。読書関連としてTumbleBooks,Story Online,LOTE4Kidsが入っていた。TumbleBooksはアニメーション付きの音声付き絵本,Story Onlineは俳優が絵本を朗読するサービス,LOTE4Kidsは多言語の絵本を提供するサービスである。学習関連としてBusy Thingsがあり,読み書きや数学,芸術などを学ぶことができる。また,数学関連としてMath Worldがあり,数学をインタラクティブに学べるようになっていた。さらにプログラミングのコーディング関連としてBusyCodeがあり,プログラムの基本を学べる。これらの多くはオンラインで利用できるが,児童コーナーにあることで,サービスの存在に気づかせる効果がある16

2点目はイベントなどの情報の掲示方法である。これはこの図書館に限ったことではないが,北米やオーストラリアの図書館ではフライヤー(チラシ)やポスターをとてもきれいに掲示している図書館が多い。この図書館では,建物の入口と図書館入口の間にコミュニティ情報や図書館に関する情報を主に3種類の方法で掲示していた。A4のフライヤーは,アクリル製の透明ケースに入れられ,天井から床まで張られたステンレスのワイヤーに複数取り付けて掲示されていた。フライヤー自体もカラー写真などを使ったきれいなデザインのものが多い。他にAフレームと呼ばれる自立型の看板や,バナースタンドと呼ばれるこちらも自立型のディスプレイも設置されていた。これらは比較的長期間掲示する情報に使われているようであった。

3点目は「Love your library in your Language」である。これはPublic Libraries Victoriaが中心となって実施しているキャンペーンで17,他の図書館でも最近よく見かける。多文化共生に関わる取組の一環として毎年行われている。図書館には葉書より少し大きめの厚紙が置かれており,そこに言語名とともに「あなたの言葉で,図書館への愛を書いてください」と書かれている。回収後はビクトリア州の多文化交流大臣に結果が報告されると説明されていた。この図書館ではツリーのような展示にカードが飾られており,スペイン語,イタリア語,ペルシア語,タミル語,クロアチア語,インドネシア語,タガログ語,マレー語などで書かれたカードが見られた。さまざまな言語的背景を持つ人が図書館を実際に利用していることを改めて感じさせる取組であった。

ナンアワディング図書館

ホワイトホース市にある18。運営はホワイトホース・マンニンガム図書館法人である19。同法人はホワイトホース市とマンニンガム市に図書館サービスを提供しており,図書館は8館ある。サービス対象人口は31.5万人で,利用登録者数は8.5万人である。職員数は79.9人(FTE換算)であった。物理資料の貸出は244.4万点,電子書籍の貸出は101.1万点であり,貸出密度は物理資料が7.8点,電子書籍を含めると11.0点である。貸出点数が多い。来館者数は98.1万人であった。

図書館はホワイトホース市の市役所と同じ建物にある。1976年に建設され,その後何回かリノベーションされており,最近では2011年に改修されている。建物に古さは感じない。入口を入ると比較的大きなスタンディングのカウンターがある。前の展示スペースには中国のお皿や壺が飾られていた。中央には光取りの窓が設けられている。

入口を背に左手には大活字本,グラフィックノベルとマンガ,フィクションが並び,ロマンスやスリラーなどは別置されていた。児童コーナーが一番奥にある。中央にはブラウジングコーナー,予約資料,ノンフィクションがあり,右手にはローカルヒストリー,CD,DVD,多言語図書,中国語図書,トーキングブック,PCコーナー(15台),静かな閲覧スペース(Quiet Study Space)などがあった。児童コーナーにはジュニアフィクション,ジュニアノンフィクション,ジュニアグラフィックノベルのほか,ペーパーバックス,インデペンデントリーダー,童歌(Junior Rhymes),ボードブック,DVDなどがあった。窓のある場所にソファや机が置かれ,右奥の閲覧スペースにはまとまって配置されていた。

図書には裏表紙裏にRFIDが取り付けられている。装備はされていた。OPACはSpydusである。書棚は移動式で4段または5段のものが使われ,一番下の段は上向きに排架されていた。表紙が見えるように展示している書棚もある。蔵書は全体に充実している。書庫はないが,これは多くのオーストラリアの図書館共通のようであった。複本は2冊または3冊ほど並んでいた。ブームの去った図書は定期的に除架しているという。伝記は混配していおり,蛍光ピンクのシールで分かるようにしていた。ローカルヒストリーのコーナーにはファイルキャビネットがあり,アルファベット順のテーマごとにエフェメラ資料(パンフレット,新聞の切り抜き,小冊子)がフォルダに収められていた。このほか Library of Things もあり,ボードゲーム,バードウォッチングのセット,ディスクゴルフ,エネルギー消費測定セットなどがあった。

図書の購入は基本的に共同入札(collaborative tender)の審査済み企業から,図書館が多様な側面を評価し,分野ごとに契約しているという。一般の図書のほか,中国語図書やグラフィックノベルなども購入しており,それらは別の契約になるとのことだった。オーストラリアでもベイカー&テイラーの影響はあったようである。装備とMARCは図書とセットで購入している。MARCが入手できない場合にはTROVEやLCから入手することもあるとのことであった。

興味深かった点をいくつか述べる。まず,児童・乳幼児向けに複数のプログラムが実施されている点である。「Baby Karaoke」は生後12ヶ月までの子どもを対象に,歌や童謡を歌うものである。「Tiny Tots」は3歳までの子ども向けの読み聞かせや童謡,工作などのプログラムであり,「就学前お話会」はもう少し年齢が上の子ども向けの同様のプログラムである。他にもレゴクラブなどが開催されていた。年齢に応じて細かくプログラムを分けている点が興味深い。

次にプログラム実施と空間の使い方である。普通の図書館では静寂室や学習室などの部屋を設けることが多いが,ここにはそうした部屋はなく,イベントはオープンなスペースで行われていた。訪問時にはボランティア活動と「ブックチャット」が閲覧スペースで実施されていた。ボランティアの活動は児童コーナーで行われていた。空間の使い方が柔軟である。

これとも関連するがメーカースペースの取組も興味深い。ここではメーカースペースに関わるプログラムが各種実施されている20。児童向けではレゴロボットをプログラミングして動かすもの,シーケンサーとサンプリングを使って音楽制作をするもの,Chompsawを使って段ボール工作をするものなどがある。大人向けではミシンを使って作品を作るもの,Bitsyというツールを使ってビデオゲームを作るもの,クリカット(カッティングマシン)で作品を製作するものなどがある。しかし一般的な意味でのメーカースペースの部屋はない。必要な機器はプログラムが開催されるときに倉庫から出したり,車で移動しているという。メーカースペースが移動式であるのは初めて見た。図書館によってはメーカースペースが倉庫のようになっていることがあるが,プログラム中心で運営するのであればこうした方法も合理的かもしれない。ニーズを見極めながら必要であればスペースを作るということもできる。

四つめは電子書籍サービスの共同構築である。ここではヤラ・プレンティー地域図書館とYour Libraryと連携してBoobook Digital Libraryを構築している21。2024年から開始されたもので,ベンダーはOverDriveである。これによって利用できる資料は10万点を超えたとされている。オーストラリアでは電子書籍のコンソーシアムをあまり見なかった。珍しい存在である。

五つめは図書館の利用動向である。毎年の報告書から22,何の利用が増え,何が減っているかが分かる。2023/24と2024/25を比較すると,5%以上伸びているのは,利用者数(5.7%),来館者数(5.0%),人口あたり来館者数(5.3%),電子書籍貸出(11.3%),デジタル資料(12.3%),プログラム参加者数(6.8%),大人向けプログラム参加者数(14.8%),児童青少年プログラム参加者数(5.4%),ウェブサイトアクセス数(6.2%),PCセッション数(10.3%)などである。この図書館では物理資料の貸出も2.2%伸びているが,それ以上に電子資料関連やプログラム参加者数,PC利用などの伸びが大きいことが分かる。

バララット図書館

Central Highlands Libraries(CHL)によって運営されている23。CHLは「共同サービスモデル」と呼ばれる運営形態で図書館サービスを提供している(後述)。対象自治体は,City of Ballarat,Ararat Rural City,Central Goldfields Shire,Hepburn Shire,Moorabool Shire,Northern Grampians Shire,Pyrenees Shire,Southern Grampians Shireである。

CHLの対象人口は23.9万人で,ウェブページによると17館を運営している24。利用登録者は5.1万人,職員数はFTE換算で66.9人である。来館者数は57.8万人であった。貸出点数は99.1万点,電子書籍は24.0万点であり,貸出密度は物理資料が4.1,電子書籍を含めると5.1である。バララット図書館は,メルボルンの中心地からおよそ100km北西に位置する。図書館はバララット市の中心部にある。図書館のすぐ近くには市のコンサートホールもあった。建物は1994年に建てられ,2024年に大規模に改修された25。館内にいると新しい建物のように感じるが,外から見ると外壁のタイルの様子から以前に建てられたものであることが分かる。

図書館の建物は少し複雑な形状である。入口は道路に面した側と,中庭のような公園に面した側の二つがある。道路側の入口から入ると左手にドーム型のスペース(ロタンダ)があり,ここに主にノンフィクションが排架されていた。まっすぐ進むとアトリウムがあり,その先にフィクションを中心にしたスペースがある。ここはライブラリー・ラウンジと呼ばれていた。アトリウムを左に進むと通路の先に児童コーナーがある。また,1階に上がる階段もあり,ミーティングルーム,TEENの部屋,キッチンのある多目的室,メーカースペースなどがあった。建物全体は白を基調としており,床,壁,天井すべて白である。館内ではアジア系と思われる利用者をよく見た。

入口には兵庫県猪名川町から贈られたコレクションが並んでおり,少し驚いた。姉妹都市のようで,日本人形,団扇,兜,太鼓,壺,盃などが展示ケースに入っていた。ロタンダは大きなドーム型で天井が高く,ガラスの壁のため開放感がある。気持ちのよい空間である。ノンフィクションはDDC順ではなく,旅行,伝記,食べ物,家庭などのテーマごとに並べられていた。先住民関連図書やローカルヒストリーの図書も排架されていた。書棚は移動式の4段のもので,L字型やコの字型に並べられていた。移動式であるため配置は柔軟である。木の台を使った展示も見られた。窓に沿って座席が配置されていた。

フィクションの部屋(ライブラリー・ラウンジ)は四角形の空間で,スタンディングのカウンターがあった。ここでは千代田区立図書館のように「コンシェルジュ」と呼んでいる。予約図書,大活字本,DVD,PC,ブラウジングコーナー(雑誌・新聞)などもここにあった。書棚は4段で,一番上の段では表紙が見えるように展示されている。図書は装備されており,RFIDも付いている。複本は2冊から3冊程度並んでいるものが見られた。木の長い閲覧席やソファ席などがあった。特集展示として3月末の「近所の人とつながる日」(Neighbour Day)関連の図書が紹介されていた。

児童室は通路で隔てられており,音への配慮がされている。途中のアトリウムは通常は通路として使われているが,カーテンで仕切ることもでき,イベントに使える。階段状のソファも設けられていた。児童室へ向かう通路には東チモールの絵画が飾られていた。これは定期的に入れ替えられる。児童室には絵本,ジュニアノンフィクション,ジュニアフィクション,グラフィックノベル,ボードブックなどが並んでいた。久しぶりに木製の知育遊具を見た。カナダの図書館でよく見かけたものである。子ども用のPCが3台置かれており,子どもが遊んでいた。段差のあるソファで作られたお話の部屋(ストーリー・ドーム)もあった。

階段を昇った1階には様々な機器が置かれたメーカースペースがあった。3Dプリンター,ビニールカッター,ヒートプレス,ミシンなどが設置されている。ただし訪問時は閉まっていた。その奥には少し広い多目的室(Co-Lab)があった。キッチンがあったり,ボードゲームが置かれている。実際に子どもが遊んでいた。ビデオゲームもできるようである。TEENの部屋にはフィクションとグラフィックノベルがあり,日本のマンガも多く並んでいた。一人用のソファもあり人気がある。TEENの部屋の前にはミーティングルームがあり,訪問時にはScratchを使ったプログラミング教室が行われていた。参加者は10人ほどであった。

この図書館で興味深かったのは,まず運営体制である。最初に述べたようにCHLがバララット図書館を含む複数の自治体の図書館サービスを担っている。ただし,これはこれまで見てきたような法人型の運営ではない。バララット市でも以前は法人型の図書館運営であったが,現在は変更されている。現在のCHLはバララット市の図書館の一部であり,他の自治体が契約(shared service agreements)を結んでCHLからサービスを提供してもらう形になっている26。これは「共同サービスモデル」と呼ばれている。独立した法人を設けずに運営している点が特徴である。

法人の運営は現在,岐路を迎えている。これまでは地方自治法第196条にRegional Library Corporationに関する規定があり,複数自治体が図書館法人を設立して運営することができた。しかしこの規定は2020年に廃止されている。ただし10年間の経過措置があり,既存の法人はその間は存続できる。経過措置後は自治体直営にするか,CHLのような契約型のモデルに移行することが想定されている。また一般の法人を設立することも可能ではあるが,コスト面で課題があるとされている。その意味では,CHLは「移行済み」ということになる。

もう一つ興味深かったのはHot Pick Collectionである。これはこれまで欧米の多くの図書館で見てきたものであるが,改めて考えてみると興味深い仕組みである。この図書館の「CHL蔵書構築ガイドライン2024-2027」によると27,このコレクションはベストセラー,翻訳図書,ニッチなフィクションを厳選したものとされている。貸出期間は1週間で予約はできない。同じタイトルの図書は通常のコレクションとしても購入するとされている。

日本では複本購入は大量の予約を処理するために行われることが多い。オーストラリアの図書館でも予約と所蔵の比率を見ながら買い増しをすることは一般的である。しかしHot Pick Collectionがあると予約を効率的に解消することができる。日本の場合,予約図書は取り置き期間と貸出期間を含めると3週間程度で1回転することになる。一方,Hot Pick Collectionは貸出期間が1週間であるため,単純に考えると3倍程度の速度で回転することになる。もちろんこの仕組みは出版界の図書館への不満を解消するものではないが,場合によっては年単位で予約待ちをしている利用者の不満を和らげる可能性はあるし,試し読みしたものを購入するといった行動につながるかもしれない。

フランクストン図書館

メルボルン中心部から南東へ約40キロほどの場所にある28。フランクストン市の図書館は3館で構成されており,サービス対象人口は14.5万人である。来館者数は25.9万人で,職員数はFTE換算で31.3人であった。貸出点数は物理資料が68.5万点,電子書籍が19.4万点であり,貸出密度は物理資料のみで4.7,電子書籍を含めると6.1である。

この図書館は改装されて2024年2月に新たに開館した。グラウンドフロアに入るとすぐ左手にカウンターがあり,返却図書の自動仕分け機も設置されていた。入口を背に右側にはノンフィクション,大活字本,録音図書,スタディスペースがあり,中央にはLibrary of Things,DVD,特集展示,予約図書が並んでいる。左側には雑誌のブラウジングコーナー,児童コーナー,フィクション,TEEN,グラフィックノベルなどが配置されていた。1階には事務室とミーティングルームがある。

入口近くには種の図書館が設けられていた。ここでは種をまくためのポットとして,卵のケースや除籍図書の紙葉で作った小さな鉢が置かれている。種は専用ケースに入っており,収穫時期や植える時期,日当たりなどの情報が書かれていた。ノンフィクションはDDC順に並べられており,その中で旅行とサステイナビリティの資料が別置されている。それぞれは背表紙のシールで区別されていた。またオーストラリア文学は請求記号の最初にAを付けて,英米文学と区別している。

Library of Thingsには実物はわずかしか置かれておらず,パウチされたカードが並んでいた。カードはキッチン,ガーデンツール,健康,ワークショップツール(DIY関連),趣味などのカテゴリーに分けられている。特集展示では人気図書を貸出しており,それらには「Most Wanted」と書かれたシールが貼られていた。貸出期間は1週間で予約はできないが,この図書館では更新が2回可能である。また,Enid Blytonのシリーズで最も好きな作品を尋ねる特集も行われていた。

フィクションはジャンルごとの棚分けはされていないが,背表紙に17種類のシールが貼られている。一般的なロマンスやミステリーのほか,オーストラリアのフィクションやLGBTQ+などのカテゴリーもあった。新刊雑誌には日本の図書館と同様に透明カバーがつけられている。日曜日に訪問したが児童コーナーはかなり混んでいた。図書は装備されておりRFIDが付けられている。OPACはSpydusであり,Syndetics Unboundによって目録の情報が拡張されていた。

館内にはPCが各所に置かれていた。部屋としてはPODがあり,他にもいくつかの部屋が閲覧スペースとして開放されている。Justices of the Peaceのフライヤーが貼られた部屋もあり,書類の公的証明を行うサービスが提供されていた。こうしたサービスは他の図書館でも見かけることが多い。この部屋では,モナシュ大学でソーシャルワークを学ぶ修士学生によるクリニックが火曜日から木曜日に行われている。近くにはヘリテージルームがあり,姉妹都市の裾野市から贈られたものが展示されていた。第二土曜日には地域のグループが集まって活動しているとのことである。奥にはカウンシルとコミュニティの掲示板があり,その近くでは除籍図書の販売も行われていた。価格は1冊50セントであり,紙袋に詰め込み放題で5ドルという方法もあった。電動車椅子を充電できる場所が設けられていたのも興味深い。

興味深かった点を二つ挙げたい。まず書棚である。書棚は4段で移動式であり,車輪が付いている。最上段には表紙を見せて展示できるようになっている場合が多く,側面にも板が付いていて表紙を見せる展示ができるようになっていた。移動が可能なので配置の変更も容易であり,この図書館ではいくつかのコーナーでコの字型の空間が作られていた。公共施設の再編が議論されている日本では,こうした柔軟な仕組みは参考になるのではないだろうか。

もう一つはDVDの扱いである。DVDには利用対象者を示すシールが貼られていた。これは図書館独自の分類というより,映画やビデオゲームに付けられている一般的なレーティングである。DVDには黄,青,赤のシールがあり,黄は子どもは保護者の指導が推奨されるもの(Parental Guidance),青は大人向けのもの(Mature),赤は15歳未満は保護者と一緒に借りる必要があるもの(Mature Accompanied)である。それに加えて,暴力や大人向けテーマ,下品な言葉など内容を示すキーワードも付けられていた。ただし規則として子どもの貸出を制限しているわけではなく,「保護者は子どもの図書館資料の利用について責任を持つ」とされていた。ただし,図書館の中には「赤」は,一律に15歳未満の貸出をしないところもあるので,取り扱いは図書館に依るようである。

スプリングベール図書館

グレーター・ダンデノン市にある29。サービス対象人口は16.7万人で,利用者数は5.4万人,職員数はFTE換算で64.0人である。貸出点数は物理資料が64.8万点,電子書籍が8.1万点であり,貸出密度は物理資料が3.9点,電子書籍を含めると4.4点であった。来館者数は82.1万人と貸出点数を上回っている。図書館は2館で,他にコミュニティハブ内に設置されている施設などがある。図書館のファサードの様々な色は,多様な文化的背景を持つこの地域を表している。また,赤と黒は先住民を象徴している(1枚目の写真)。施設は環境性能が非常に高いと評価されている(6つのグリーンスター)。

館内はグラウンドフロアと1階に分かれている。グラウンドフロアには,入口を背に右側にDVD / ブルーレイ,児童コーナーがあった。中央は円形の吹き抜けとなっており印象的な空間である。ノンフィクション,ローカルヒストリー,伝記などが排架されていた。PCが置かれているところもありテクノロジーハブと呼ばれている。奥には予約資料があり,左側にはブラウジングコーナーを兼ねたカフェがあった。雑誌,新聞が置いてある。午前中の訪問であったが,利用客が多かった。さらに図書館のゲート外にはミーティングルーム,ミッチェルホール,カウンシルのカスタマーサービスが設置されている。ミーティングルームは1階にも6室あった。

カウンターは入口付近と行政コーナー側の入口前に一人用のものが設置されていた。児童コーナーにはジュニアフィクション,ジュニアノンフィクション(テーマ別排架),絵本が並び,子どもが騒いでもよい部屋も設けられていた。書棚は4段の移動式であった。

1階に上がるとTEENコーナー(Youth Launge)があり,その横には静かにする部屋(Quiet Zone)があった。フィクションや大活字本が並び,ロマンスは別置されている。この階には多言語図書が排架されていた。中国語,ボスニア語,セルビア語,ギリシャ語,クロアチア語,イタリア語,スペイン語,ベトナム語,フランス語,パンジャブ語,カンボジア語,ウルドゥー語など多様な言語の資料が並んでいた。

TEENコーナーは赤を基調とした空間で,フィクションやグラフィックノベルが置かれていたほか,Nintendo SwitchやPlayStationが設置されており,ゲームで遊べるようになっていた。フィクションには7種類のジャンルのシールが付けられている。この階にはVCEの書棚もあった。これはビクトリア州の高校修了・大学進学資格に関する資料を集めたものである。科目英語の資料が中心で,小説,劇,詩,勉強ガイドなどである。閲覧席は多く,窓際の一人用の席やソファ席などがあった。また,The Studioと呼ばれるスペースがあり,キッチン設備が備えられている。

興味深かったことを4点述べる。一つは相互貸借についてである。図書館はPublic Libraries Victoriaのネットワークに参加しており,バックヤードでは参加自治体への配送用コンテナボックスが多数並んでいた。このネットワーク内での資料移動はILLというよりも分館間の移動に近い取り扱いのようだった。利用者はウェブ上で簡単に依頼できる。配送料等,相互貸借にかかる経費は参加館同士で負担しているとのことであった。州立図書館との貸借では貸出料金は免除されるが,利用は館内に限定される。

二つ目は多文化関連のプログラムとコレクションの関係についてである。多言語コレクションの利用状況によっては,利用活性化のためのプログラムが開催されることがあるとのことだった。訪問した3月には「セルビア人コミュニティ 図書の日」が開催される予定となっており30,セルビア語資料の展示や図書館サービスの紹介に加え,衣装の紹介や踊りの披露などが行われる。また,「ボスニア・ヘルツェゴビナの日」も別に設定されていた。これらの機会は,図書館サービスに対するフィードバックを集める場としても位置づけられていた。

三つ目は,外部資金の重要性である。この図書館では地域特性を背景に,多文化コミュニティを対象としたプログラムが多く実施されてきた。その際,ファンドが重要な役割を果たしてきたという。特に新規事業の立ち上げにおいては,連邦・州の資金や民間資金が活用されており,最近では連邦政府のコミュニティの結束(Community Cohesion)に関する助成金を得ている。こうしたファンドの獲得は担当者の重要な業務の一つのようだった。また,ファンドが終了した場合でも事業が直ちに終了するわけではなく,図書館の予算で事業が継続されることもある。このように,ファンドは新規事業の立ち上げを支える重要な役割を担っているといえる。

四つ目は,「Talking Faith(信仰を語る)」という取組である31。これは2010年から毎年実施されているイベントであり,近年は上記のCommunity Cohesionの助成金を得て行われることになっている。異なる宗教の指導的立場の人に信仰について語ってもらい,参加者の質問に答えるフォーラム形式のイベントとのことだった。地域内の多様な人々の相互理解を促進することを目的としている。図書館がコミュニティの関係構築に寄与する重要な取組と感じた。

ダンデノン図書館

スプリングベール図書館と同じグレーター・ダンデノン市の図書館である。市役所と同じ建物にある。この地域はビクトリア州の中でも多文化的な特徴を持ち,2021年のセンサスでは人口の61.2%が外国生まれである32。図書館内は長細い構造で,グラウンドフロアと1階からなり,比較的広い。スプリングベール図書館もそうだが館内のカラーの使い方がイギリスのアイデアストアに少し似ている。

入口を入ると正面に大きなカウンターがある。入口脇には先住民ウェンバ・ウェンバ族のエマ・バンブレット氏の作品が展示されていた。グラウンドフロアは左奥からTEENコーナー,DVD,CD,グラフィックノベル,新聞,雑誌が並び,右側にはLibrary of Thingsと児童コーナーが配置されていた。Library of Things では,サーマルカメラや血圧計などがあった。これらの購入では,リストを作成し,オンライン上で住民の人気投票し,その投票状況を参考にしているという。図書館としては,これらを提供する意義として,購入前に試せること,利用頻度の低いものを共有できること,市民全体に利用機会を提供できること,などを挙げていた。

TEENコーナーにはフィクションやグラフィックノベル,雑誌があり,DVDも置かれていた。雑誌の中にはYA Zineも含まれていた。図書館ではZine制作のワークショップも開いている33。また,Nintendo Switch や PS5 が設置され,ゲームを利用できるようになっていた。ソフトは一定期間は同じものを入れておき,定期的に入れ替えているという。訪問時にはマインクラフトやサッカーのゲームが利用できた。その横にはレコーディングブースがある。ここでは音楽やポッドキャスト,ナレーションの録音が無料で行える。さらにVCEのコーナーが設けられており,高校修了・大学進学資格に関連する資料が並んでいた。教科書などではなく関連図書を中心に提供しているとのことである。

児童コーナーにはジュニアノンフィクション,ジュニアフィクション,絵本,DVD,雑誌などが排架されていた。大きなディスプレイ,スクリーン,お話し会用のスペースもあった。近くではJustices of the Peaceによる書類証明サービスが行われていたが,利用者が列を作っていた34。予約不要で利用できるものであり,ボランティアによって運営されている。多文化コミュニティではこうしたサービスの需要が高いとのことであった。また,同じフロアでは英語教室も行われていた。生徒は3名であった。これらと関連した取組として,この図書館ではリテラシー・オフィスが設けられている。ここでは,語学学習の相談,書類作成,履歴書作成,面接対策などの支援を行っている。これらも多文化コミュニティにおいては特に必要性の高いサービスである。

上のフロアにはフィクション,ノンフィクション,多言語図書,録音図書,伝記,成人向けグラフィックノベルが排架されていた。多言語資料は多様であり,ベトナム語,フランス語,イタリア語,ペルシア語,パンジャブ語,ヒンディ語,中国語,クロアチア語,ボスニア語,アラビア語,タミル語,シンハラ語,スペイン語などである。ベトナム語資料の中には日本のコミックの翻訳も含まれていた。少し複雑である。PCは館内各所に配置されていたが,それぞれで利用可能な時間(長さ)が異なる。この地域ではPCを持たない利用者も多く,その点で重要なアクセス機会となっていた。PCではオフィスソフトも利用可能である。また,PCではフィルタリングは行っておらず,利用規約に基づいて管理しているとのことであった。上のフロアにはMacも設置されていた。対応ソフトの関係とのことだった。トレーニングルームにはPCが14台あり,訪問時は開放されていた。

書棚は移動式で,ノンフィクションはテーマごとに排架されていた。DDC順の排架は多様な背景を持つ利用者には分かりにくいと考えており,地域の利用者にとっての分かりやすさを重視していた。テーマ毎に背表紙にラベルを付けて区別しており,テーマ内でDDC順に並べていた。

興味深かった点を3点述べたい。1点目は今後の改修である。予定されている改修で図書館では「祈りの部屋(prayer space)」を設置する予定であった。多文化的な地域特性を反映した改修である。また,静かな空間の不足に対応するための部屋の整備も検討していた。図書館では,1階はグラウンドフロアよりも多少,静かな(quieter)空間であることを想定しているものの,全体として静寂を強く求めるわけではない。通常の会話や交流は1階でも問題はないと捉えている。そのうえで,静けさを求める利用者のために専用の空間を設けるという考え方であった。ビクトリア州の図書館全般でいえることだが,図書館全体はある程度のノイズを許容しつつ,静かさを求める利用者に対しては,静かな部屋を用意するという運用が多い。

2点目は事務室についてである。この図書館では大部屋形式であり,カウンシルと共用であった。ヨーロッパでは,部署毎に部屋が分かれていることが多かったが,ビクトリア州では日本と同様,大部屋での仕事が多いようである。また,個人専用の机はなく,席は自由に利用する方式であった。大部屋であることで,職員間のコミュニケーションが取りやすいのことだった。必要に応じて会議室も用意されており,相談はそうした部屋を使うとのことだった。

3点目は業務の省力化である。図書館では,貸出,返却,予約資料の受取は利用者自身で行えるようになっている。さらに返却処理や仕分けも機械が行っている。図書の納品は目録データと装備がセットになっている。選書もスタンディング・オーダーを活用している。もちろん,選書を全てを任せるわけではなく,分野ごとにライブラリアンが分担して選書を補完している。こうした省力化を何のために行うのか。図書館員によると,カウンターに出て利用者への対応やサポートにより時間を割くことが可能になると話していた。日本では議論がありそうだが,ここらへんはかなり割り切って運用しているようであった。

サンシャイン図書館

サイデンハム図書館と同様,ブリムバンク市にある図書館である35。周辺は多文化的町並みで,アジア系やアフリカ系の飲食店,雑貨店も多い。図書館にはメルボルン滞在中に何度も訪問した。図書館員が様々な利用者に丁寧に接している姿を何度も見かけた点で印象に残っている。説明を受けた当日は,英語学校の生徒が20名ほどやってきて,利用登録や館内見学を行っていた。

グラウンドフロアには,予約資料,DVD,ビデオゲーム,フィクション,多言語図書,コミック&マンガ,雑誌などが排架されている。DVDについては年齢制限がある場合,該当しない子どもは借りることができないとのことであった。これはフラクストン図書館とは異なる運用である。多言語図書には,アラビア語,中国語,イタリア語,マルタ語,ベトナム語などがあった。多言語図書の近くには完成間近のパズルが置かれた机があった。こうした仕掛けは,「パズルを楽しんで」というメッセージ以外にも,読書以外の利用も歓迎していること,滞在を歓迎していることを示すものに感じられた。

奥にローカルヒストリー&デジタルルームという独立した部屋がある36。地域の歴史資料は鍵付きのキャビネットに入れて保管されていた。また,利用者がVHS,ネガ,スライド,写真などを自分でデジタル化する機材も整備されていた。カウンターは各フロアに1人または2人用のものがある。窓際には座席が多く設けられていた。PCも各フロアに配置されていたが,その普及やスマートフォンの利用拡大により,利用は以前ほどではなくなっているとのことであった。

ゲームについてはPS4,PS5,XBox,Nintendo Switchのソフト貸出に加えてディスプレイも設置されていた。訪問時は青年がバスケットボールのゲームをしていた。放課後は生徒の居場所として機能しているという。ソフトは基本的に入れたままとし,定期的に入れ替えているという。入口ではLove Your Libraryの取組が行われていた。ソマリア語,韓国語,トンガ語,ネパール語,ヒンディー語,フィジー語などのコメントが見られた。図書館員によれば,この取組は毎年実施されており,地域の多様性を理解できるとともに,利用者が同じ出身の人の存在を知ることができる点で意義があるという。

階段を上がった1階にはノンフィクション(テーマ別),児童コーナー,TEENコーナー,学校用テキスト,おもちゃの図書館があった。児童コーナーにはジュニアフィクション,ジュニアノンフィクション,絵本,リテラシー図書があり,おもちゃの図書館にはパズルや積み木が用意されている37。ノンフィクションはジャンル毎に排架されており棚差しで細かなテーマ表示がされていた。訪問時,Storytimesが開催されており,30名ほどが参加していた。大きな音が出ていたが,利用者から特に問題視されている様子はなかった。

同じフロアの半分にはラーニングセンター,スタディールーム・ブース,ITトレーニングルームがあった。スタディールームや奥のスペースは静かであるため,必要に応じて場所を選べるようになっていた。ITトレーニングルームはPCが並び,訪問時は開放されていた。ラーニングセンターではJustice of Peaceやコネクト&チャットが実施されていた。コネクト&チャットは特定のテーマや教材はなく,参加者同士で会話を楽しむプログラムであり,4名ほどが参加していた。その先の図書館のゲートを出たところにはギャラリーがあり,現代抽象絵画が展示されていた。またこの建物にはブリムバンクのカウンシルも入っている。

興味深かった点を4点述べる。まず,移動式書架である。ビクトリア州の多くの図書館で見られたものであるが,非常に有効とのことであった。コレクションの見直しはしばしば行われており,その際に柔軟に対応できるという。例えばDVDは,以前はより多く排架されていたが,ストリーミングの普及により利用が減少しコレクションを見直したという。最近では,多言語図書も,同様に再編が行われた。以前は各館に様々な言語を分散して排架していたが,規模が小さいと利用されにくいため,現在は言語毎に担当館を決めてある程度まとまった規模で排架しているという。

2点目は上のことと関係するが多言語図書の分担収集である。住民の民族構成や年齢構成の変化は速く,それに対応する必要があるという。ブリムバンク市ではセンサス情報に加え,利用登録時に「英語以外の言語で読むか」を確認し,読む場合は言語を入力している。また貸出・返却データも参考にして,どの図書館にどの言語の資料を所蔵するかを決定しているという。

3点目は多言語図書の購入である。図書館ではスタンディング・オーダーを利用しており,図書は装備済みかつMARC付きで納品される。そのため図書館員がすべての言語に精通する必要はない。ただしベンダーに対して具体的な要望を伝える必要があり,それは利用状況やニーズに基づいているという。実際にイタリア語ではロマンスが充実している一方,中国語ではノンフィクション中心となっていた。

4点目はボランティアの活用である。図書館の業務はあくまで職員が担当するのが原則である。そのうえで,職員では対応が難しい部分にボランティアが関与するという。リーディングバディという取組では,ボランティアが子どもの読書を15分程度,一対一で支援している38。また図書館に来館できない利用者への配送サービスにもボランティアが関わっていた。

ブレーブルック図書館

ウェスト・フッツクレー図書館と同じくマリビアノング市にある39。メルボルン滞在中に何度も訪問した図書館で,小規模ではあるが,とても居心地のよい空間であった。児童コーナーで高齢者向けの椅子を使ったエクササイズが始まり,インストラクターの大きな声で驚いた記憶がある。建物はスキナーリザーブという公園の中にあり,ブレーブルック・コミュニティ・ハブの一部として整備されている40。コミュニティ・ハブは常に賑やかで,毎日,様々なイベントが行われていた。コンピュータ教室が開かれていたり,高齢者が食事をしていたり,体操をしていたりと,活動の幅が広い。

入口すぐにカウンターがあり,分館らしく利用者と職員の距離が近い。左手には先住民コレクションが排架されている。その先には座席が比較的多く設けられた空間があり,仕事をしたり,スマートフォンを使ったり,会話をしたりする利用者が多かった。近くにはQuiet Studyと書かれた部屋があり,静かな環境を求める人はこちらへ,という運用であった。実際,館内は先に述べたように,プログラムの音など,ある程度,音が出ることを前提としている空間であった。

入口を背にして,フロア左側にはベトナム語のフィクション,ノンフィクション,DVDなどがまとまって排架されている。ベトナム語コレクションが充実しているのは,この地域にベトナム系住民が多いことと関係している。中央付近にはPCが10台程度設置されており,その周辺にパズルなどの遊具,予約資料,SteamKits,フィクション,ノンフィクションが並んでいた。SteamKitsは白いプラスチックケースに入っており,内容も充実し,数も多かった。右側にはヤングアダルトコーナーと児童コーナーがあり,子どもによる推薦図書が掲示されていた。

興味深かったのはコミュニティ・ハブの活動と図書館の活動の関係である。コミュニティ・ハブは,日本の公民館に近い性格を持ちながら,それよりも幅広い機能を担っていた。母子保健サービスや視力・眼科サービスなども同じ施設内に入っていた。その中で,活動の中心はコミュニティ・センターであった。

最近のプログラムを見てみると,学習に関わるものとしてiPadを使ったアニメーション制作や,高齢者向けのデジタル講座があった。健康に関わる活動としてはラインダンスやズンバ,麻雀,太極拳,マインドフルネスなどがある。交流を目的としたランチの会も行われていた。文化的な活動としては裁縫の講座や映画会があり,社会包摂に関わるものとして英語学習のプログラムも実施されていた。このように多様な活動をしている。

一方,図書館側のプログラムとしては,ライムタイムやバイリンガル・ストーリータイムといった初期リテラシーに関わる取組も多いが,旧正月をコーヒービスケットで祝う会や,椅子を使ったエクササイズ,高齢者向けの脳トレーニングなど,内容がコミュニティ・センターと重なるものも多かった。日本では公民館との役割分担が議論されることがあるが,ここでは必ずしも明確に区分せず,重なりあいながら実施されている点が印象的であった。

ナーム・ナルグー図書館

ドックの図書館(Library at The Dock)同様,メルボルン市(City of Melbourne)の図書館である41。narrm ngarrgu(ナーム・ナルグー)は,この地域の先住民の言葉ウォイ・ウルン語で「メルボルンの知識」を意味する。2023年に地区の再開発に伴って開館した。場所はクイーン・ビクトリア・マーケットのすぐ近くで,入口は少し奥まったところにある。CBD近くで,州立図書館駅からアクセスしやすい。要するにメルボルンの中心にある。滞在中,この図書館には何度も来たが,施設は新しく快適な図書館だった。

階段を上がった1階には常に警備員がいて,来館者に挨拶をしている。マーケットが近いこともあり,いろいろな利用者がいることも関係しているようであった。階段の先にはリーディング&イベントスペースが広がる。イベントがないときは閲覧スペースとして開放されていた。席は昼頃には満席になる。ここには大きなノートパソコン貸出機がある。閲覧席の反対側には階段状の観客席がある。ここは,上階まで吹き抜けの空間になっていた。この階にはサウンドスタジオ,コンピュータルーム,メーカースペースがある。メーカースペースはそれほど大きくはないが,見学時には8人ほどが利用していた。ミシンや衣類への印刷など服飾関係の作業をしている人が多かった。他にはんだごてを使う利用者もおり,3Dプリンターも動いていた。ドックの図書館同様,活発に利用されていた。通路には1930年代のマーケットの領収書が飾られていた。このフロアには図書は置いていない。

2階は大人とティーンのフロアである。入口付近のカウンター前には推薦図書や Love Your Library in Your Language が展示されていた。大人向けのノンフィクション(ジャンル別),フィクション,多言語図書,グラフィックノベル,ローカルヒストリーが並び,TEENコーナーも設けられている。多言語図書は中国語や韓国語に加え,日本語のものも多く見られた。英語学習図書も充実しており,その半分はペンギンズ・リーダーズのシリーズであった。

TEENコーナーはフィクション中心で,書棚によって小さな空間がつくられている。書棚は4段で,最上段は面陳用となっており,側面にも図書が展示されていた。壁にはKelly Koumalatsos氏の作品が飾られていた。館内には他にも美術作品が多く見られる。閲覧席は多いものの昼頃にはほぼ埋まる。奥には静寂室が設けられている。静寂室の前にはメルボルンの観光案内のリーフレットなどが置かれていた。

3階は児童向けのフロアである。エレベーターを降りて図書館へ向かう通路には,アボリジニのアーティストであるマリー・クラーク氏の作品が壁一面に描かれている42。児童室ではテリー通り側に多くの座席があり,平日午後でも保護者と子どもが多く滞在していた。蔵書はジュニアノンフィクション,ジュニアフィクション,ジュニアミドルフィクション,ジュニアグラフィックノベル,絵本,ジュニアイージーリーダーズ,育児書などがある。ビデオゲームの貸出と館内利用も行われており,子どもたちが遊んでいた。

日本語資料もあり,「日本の歴史」「おしりたんてい」「ポアロ」などのシリーズが並んでいる。また,日本語のストーリータイムが実施されていたのには驚かされた。多言語のお話会は他館でも見られたが,日本語のものは初めてであった。CBDでは日本料理店を多く見かけるが,日本人利用者も一定数いるのであろうか。この階にはルーフトップテラスもあるが,訪問期間中は立ち入り禁止であった。ガラス越しに植物や,ウナギ捕獲用トンネルを模したオブジェが見える。屋内には「ウナギの季節」という大きな絵が展示されていた。ウナギは先住民の食文化と関係した生き物である。

プログラムとしては,日本語のストーリータイムのほか,ローカル・ランチクラブ,英語の歌,基礎英語クラブ,英語学習リーディングサークルなどが実施されていた。ローカル・ランチクラブは廃棄予定食材を用いて無料のランチを提供するものである。英語の歌や基礎英語クラブは中国語話者を対象とし,中国語によるサポートがある。英語学習リーディングサークルは英語の図書をネイティブスピーカーとEAL(English as an Additional Language)が一緒に読む。立地の影響もあってか,言語に関するサービスが多い印象であった。

シティー・ライブラリー

ドックの図書館(Library at The Dock),ナーム・ナルグー図書館と同様,メルボルン市(City of Melbourne)の図書館である。2024年に改修され,読書,学習,共同作業のためのスペースが拡充された43。図書館の名称がシンプルな理由はよく分からない。CBD内の非常に賑やかな地域にあり,同じビルにはBox Hill Instituteという職業教育の学校が入っている。ウェブページによると,メルボルン市で最も利用が多いとされており,実際に予約資料が多く並んでいた。ただし規模はそれほど大きくない。滞在中,何度も訪れた図書館であった。

図書館へは,ジャーナル・カフェというカフェのカウンター前を通る。フロアはグラウンドフロアと1階で,グラウンドフロアには中二階が設けられている。グラウンドフロアにはカウンター,ノンフィクション,PCコーナー,TEENコーナー,児童コーナーなどがあった。メザニン(中二階)にはフィクションとブラウジングコーナー(雑誌・新聞)がある。1階にはほとんど資料はなく,ギャラリーや閲覧席,各種の部屋が配置されていた。グラウンドフロアのPCにはExpressと呼ばれる短時間利用の端末もあった。ノンフィクションはテーマごとに排架され,請求記号にテーマが記載されている。

多言語資料として中国語,日本語,韓国語の図書が並び,英語学習の棚も充実していた。英語学習の図書はアカデミック・ライティング,辞書,IELTS,職業英語,PTE(Pearson Test of English),読解と作文,スピーキングと聞き取り,語彙,仕事などに細かく分かれていた。図書としては,“Advanced Grammar in Use”のような自習用参考書が置かれており,表紙には「書き込まないでください」と注意書きがあった。書棚は4段の移動式で,図書にはRFIDが貼付されている。メザニンには小型のリフトがあり,ブックトラックの移動に使われていた。フィクションのほか,グラフィックノベル,DVD,CDもあったが,資料は全体として少ない。日本語の雑誌もあり,『メンズノンノ』『クロワッサン』『ブルータス』『今日の料理』『家庭画報』などが並んでいた。

1階にはギャラリー,学習スペース,会議室(Majorca Room),静かな部屋(Quiet Study Room),ソーシャルスペース,ミーティングスペースなどがある。ギャラリーでは韓国の民画グループによる民画(Minhwa)が展示されていた。ピアノも置かれており,ときどき弾く人がいる。現代音楽のような曲や聞き覚えのある曲が流れていた。ピアノは弾いてよい時間が決まっている。ソーシャルスペースは会話可能な場所であるが,ほぼ静かであった。ナーム・ナルグーやドックの図書館と比べると,座席を見つけやすい。

興味深かったのは,ここでも行われていたLove your Library in Your Languageの日本語コメントである。外国にいる日本人がこの図書館をどのように見ているかが分かる。コメントには,「選書がよい」「スタッフが親切」「PCが使えるところがよい」「立地がよい」「図書館の雰囲気がよい」「椅子の配置がよい」などが見られた。中には,「英語の図書を読むには語学力が不足しており,読書を諦めていたが,ここで日本語の図書を借りて充実したme timeを過ごせている」といったものや,「図書館には勉強をしに来ているがあまりにつらすぎて図書館まで嫌いになりそう」といったものもあった。このような利用者の声では普段知ることができない利用者の認識を知ることができ興味深い。

フッツクレー図書館

サンシャイン図書館やサイデンハム図書館と同様,ブリムバンク市にある図書館である44。メルボルン滞在中,何度も訪問した図書館であった。館内には中庭が設けられており,気分転換ができるのがありがたかった。

図書館はコの字型の構造になっており,中庭を囲むよう形である。この中庭は外部から入ることはできず,図書館から出入りする。フロアはグラウンドフロアと1階で,1階には会議室などがあるが,今回は見ていない。入口を入ってすぐカウンターがあり,右手には児童コーナー,正面にはPCが並ぶエリアがある。奥に,大人向け資料やTEENコーナー,閲覧スペースがある。

ここでも「Love Your Library in Your Language」が行われていた。見てみると,多様な言語の利用者がいた。掲示されていたものは,デンマーク語,スペイン語,ドイツ語,マケドニア語,セルビア語などに加え,チベット語,モンゴル語,日本語,ベトナム語などがあった。この地域はベトナム系住民が多いことで知られており,周辺にはフォーのレストランも多く見られる。日本語の子どものコメントもあり,図書館の好きなところとして,チェスができること,レゴクラブがあること,STEAMキットを借りられることなどを挙げていた。

入口すぐでは,国連Women Australiaによる国際女性デーに関連し,「天秤のバランスを取ろう」というテーマの特集展示が行われていた。カウンター前にはPCが15台ほど設置されており,いずれもよく利用されていた。また,廃棄図書の販売も行われており,図書は1冊1豪ドルで売っていた。小規模な会議室もあり,ここではJustice of Peaceのサービスが定期的に実施されていた。

奥に進むとコレクションが並んでいる。ここでは多言語資料が充実している。特にベトナム語と中国語のコレクションは規模が大きく,DVD,フィクション,ノンフィクションなどが揃っていた。中国語資料では,新川帆立『元彼の遺言状』や『日本我來了』といった日本関連の図書が表紙を見せる形で展示されていた。その他,ギリシャ語,イタリア語,スペイン語の資料があった。その先にはTEENコーナー,グラフィックノベル,フィクション,ノンフィクション,大活字本などが続いている。

TEENコーナーの前にはLocal Study & Geologyの部屋があり,一人の利用者が古い新聞を書き写していた。ここには資料がキャビネットに収められており,マイクロフィルム・フォームのリーダーも設置されていた。館内には窓際や壁際に加え,書棚の間にも座席が設けられている。座席は一人用,またはテーブル席がある。書棚は7段や4段のものが混在している。非常に混雑するときもあれば,あまり混在しないときもあった。一番奥にはフッツクレーの地域資料もあり,“A History of Footscray”など興味深い図書が展示されていた。

中庭はこの図書館の特徴的な空間である。喫煙禁止で,飲食や会話は自由である。大きな木の周囲にテーブルやベンチがある。中央には大きなチェスの駒が置かれていた。訪問時は夏であったため暑い日もあったが,天候の良い日には作業や読書に適した場所であった。会話をする人,作業をする人,読書をする人,食事をとる人など,様々な利用がいた。

児童コーナーには通常の児童書に加え,中国語,アラビア語,ギリシャ語,ベトナム語,スペイン語などの多言語資料があった。さらにSTEAM KITが,入口付近および児童コーナーに置かれていた。

興味深い点を2点挙げたい。一つはSTEAM KITである。これらは大きなプラスチックケースに入っており,ふたには中身の説明や貸出・返却時のチェック事項が記載されている。対象年齢は1歳以上のものもあれば11歳以上のものなどもあり幅広い。内容も楽器,顕微鏡,恐竜パズル,ブロック,周期表タイル,望遠鏡,地球儀,人体図パズル,分数パズルなど多岐にわたる。児童担当職員が市販されているものから選定しているとのことであった。とても人気があるようだった。

二つめは,図書館アプリである。ブリムバンク市では図書館アプリを提供している45。ビクトリア州の公共図書館ではこうしたアプリの提供が多く見られた。特に利用券をバーコード表示できる機能は便利とのことだった。他の機能としては,資料検索や予約,ISBNバーコードからの検索,貸出や延長処理,ウェブページの閲覧,貸出履歴の確認,文書の印刷,ウィッシュリストの作成,学習室の予約,イベント情報の確認などができる。インターフェースはジーロング図書館とほぼ同様のもののため,同じILSの会社のものかもしれない。

  1. https://www.humelibraries.vic.gov.au/About-Us/Locations-and-Opening-Hours/Craigieburn-Library ↩︎
  2. https://www.architectureanddesign.com.au/editorial/industry-news/australian-library-wins-schmidt-hammer-lassen-arch ↩︎
  3. https://www.theguardian.com/books/australia-culture-blog/gallery/2014/aug/20/10-beautiful-australian-libraries-in-pictures ↩︎
  4. https://www.plv.org.au/projects/libraries-after-dark/ ↩︎
  5. https://www.talpasearch.com/2338.2937 ↩︎
  6. https://www.melton.vic.gov.au/Out-n-About/Libraries-and-learning/Libraries ↩︎
  7. https://www.architectureanddesign.com.au/editorial/industry-news/melton-library-and-learning-hub-in-vic-is-australi ↩︎
  8. https://djerriwarrh.org.au/melton-study-hub/ ↩︎
  9. https://conversations.melton.vic.gov.au/storywalk-2025 ↩︎
  10. https://www.ncgrl.vic.gov.au/ ↩︎
  11. https://architectureau.com/articles/bendigo-library-redevelopment/ ↩︎
  12. https://www.brac.vic.gov.au/ ↩︎
  13. https://www.brac.vic.gov.au/about-1 ↩︎
  14. https://brimbanklibraries.vic.gov.au/visit-us/locations/sydenham-library/ ↩︎
  15. https://en.wikipedia.org/wiki/City_of_Brimbank ↩︎
  16. https://brimbanklibraries.vic.gov.au/learn-discover/children-and-families/apps-for-kids/ ↩︎
  17. https://www.plv.org.au/projects/love-your-library-in-your-language/ ↩︎
  18. https://www.wml.vic.gov.au/Libraries-Hours/Nunawading-Library ↩︎
  19. https://www.wml.vic.gov.au/About/About-the-library ↩︎
  20. https://www.wml.vic.gov.au/Services/Events-and-Programs/Makerspace ↩︎
  21. https://www.yprl.vic.gov.au/articles/boobook-digital-library/ ↩︎
  22. https://www.wml.vic.gov.au/About/Reports-Plans-Policies#:~:text=Annual%20Report%202024,(PDF%2C%C2%A06MB) ↩︎
  23. https://libraries.ballarat.vic.gov.au/ ↩︎
  24. https://libraries.ballarat.vic.gov.au/about/partner-libraries ↩︎
  25. https://www.ballarat.vic.gov.au/central-library-redevelopment ↩︎
  26. https://www.strathbogie.vic.gov.au/wp-content/uploads/2024/08/20240820_Item-11.4.5_Attachment-1_Regional-Library-Collaboration-Future-Structures-Discussion-Paper.pdf ↩︎
  27. https://ballaratlib.wpenginepowered.com/wp-content/uploads/2025/09/CHL-Collection-Development-Guidelines.pdf ↩︎
  28. https://library.frankston.vic.gov.au/Home ↩︎
  29. https://cgdl.libsvic.ent.sirsidynix.net.au/client/en_AU/cgdl/ ↩︎
  30. https://libraries.greaterdandenong.vic.gov.au/libraries/events/serbian-community-book-day-multicultural-march ↩︎
  31. https://alianational.alia.org.au/2024program/talking-faith/ ↩︎
  32. https://www.greaterdandenong.vic.gov.au/about-us/social-statistics ↩︎
  33. https://libraries.greaterdandenong.vic.gov.au/libraries/events/zine-making-art-series ↩︎
  34. https://libraries.greaterdandenong.vic.gov.au/services/justices-peace ↩︎
  35. https://brimbanklibraries.vic.gov.au/visit-us/locations/sunshine-library/ ↩︎
  36. https://brimbanklibraries.vic.gov.au/visit-us/library-spaces/digitisation-station/ ↩︎
  37. https://brimbanklibraries.vic.gov.au/read-watch-listen-play/play/toy-library/ ↩︎
  38. https://learning.brimbank.vic.gov.au/calendar-venue/sunshine-library-calendar/icalrepeat.detail/2026/03/11/403293/-/reading-buddies-sunshine-library ↩︎
  39. https://www.maribyrnong.vic.gov.au/library/Visit/Locations-and-Hours/Braybrook-Library ↩︎
  40. https://www.maribyrnong.vic.gov.au/Community/Community-Centres-and-Neighbourhood-Houses/Braybrook-Community-Hub ↩︎
  41. https://www.cbdnews.com.au/new-library-and-family-services-facility-opens-at-queen-vic-market-precinct/ ↩︎
  42. https://nit.com.au/01-12-2023/8770/melbournes-newest-library-narrm-ngarrgu-celebrates-kulin-culture ↩︎
  43. https://www.melbourne.vic.gov.au/city-library-redevelopment, https://insidelocalgovernment.com.au/major-upgrade-announced-for-melbourne-city-library/ ↩︎
  44. https://www.maribyrnong.vic.gov.au/library/Visit/Locations-and-Hours/Footscray-Library ↩︎
  45. https://brimbanklibraries.vic.gov.au/brimbank-libraries-app/ ↩︎