先住民和解と図書館

先日訪問したベンディゴ図書館を運営するゴールドフィールド図書館法人のウェブページを見ると,下の方に先住民に関する文章が載っている1。そこでは,土地や水路の伝統的所有者および守り手として先住民に感謝すること,現在も生き続けている文化を尊重すること,そして長老に過去・現在・未来にわたり敬意を払うことが述べられている。

これまで訪問した図書館のウェブページでも同様の記述をよく目にした。図書館によっては,さらに具体的に地域の先住民の名称を挙げている場合もある。こうした記述は「アクノレッジメント・オブ・カントリー」と呼ばれるもので,自治体のウェブページなど公的機関のサイトに広く掲載されている2

図書館によっては,さらに踏み込んで和解のための計画を策定している場合もある。たとえばゴールドフィールド図書館法人のウェブページでは「Reflect Reconciliation Action Plan January 2024–January 2025」が公表されていた3。こうした計画は略称してRAP(Reconciliation Action Plan)と呼ばれるが,一般に「Reflect」「Innovate」「Stretch」「Elevate」の4つの段階がある。この計画はその最初の段階に位置づけられるものである4。ちなみに,こうした計画は図書館界の職能団体であるALIAでも策定されている5

ゴールドフィールド図書館法人の計画の内容を見ると,まずこの計画はReconciliation Australiaによって承認されている。Reconciliation Australiaは,先住民との和解に関する取組を推進する国家レベルの非営利団体である6。そして,具体的なの内容として掲げられているのは,次のような事項である。第一に,先住民コミュニティとの関係構築であり,Reconciliation Weekなどのイベントを通じて交流を深めることが挙げられている。第二に,職員や組織の理解向上であり,文化理解などに関する研修を実施することが示されている。第三に,先住民の雇用機会の拡大の検討等,第四に,計画の進捗を測定・報告する仕組みの整備などが掲げられていた。また,付録では先住民文化に関する図書館サービス,アート作品の展示,コレクションの充実,イベントや講演会の実施にも触れられている。これらの事項は図書館の戦略計画にも反映されており,ウェブサイトでも取組がまとめられている7。実際に組織として取り組んでいることが分かる。

今回訪問してきたビクトリア州の図書館でも,こうした取組を見ることができた。クレイギーバーン図書館では児童コーナーに関連コレクションが設けられていた。またジーロング図書館では,一般向けにかなりまとまった関連コレクションが整備されていた。多くの図書館で取組が進められていることがうかがえる。なお,オーストラリアにおけるこうした図書館の取組については,州レベルの図書館などを対象に山本藍子氏の修士論文がある8

先住民族に関する図書館の取組は,北米,とくにカナダの図書館でも熱心に進められていた。一方,日本でも「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(2007年)を受けて,2019年に「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」が制定されている。こうした動きもあってか,アイヌの問題についての図書館の取組が少しずつ見られるようになっている。『カレントアウェアネス』でもいくつかの事例が紹介されており,たとえば「むすびめの会」で兎内勇津流氏がIFLAでの発表を報告している9。ただし,オーストラリアの取組の広がりと比較すれば,現時点ではかなり限定的といえる。

  1. https://www.ncgrl.vic.gov.au/ ↩︎
  2. https://www.reconciliation.org.au/reconciliation/acknowledgement-of-country-and-welcome-to-country/ ↩︎
  3. http://www.ncgrl.vic.gov.au/wp-content/uploads/2024/10/Goldfields-Libraries-Reflect-2023-2024_web.pdf ↩︎
  4. https://current.ndl.go.jp/car/40278 ↩︎
  5. https://current.ndl.go.jp/car/46466 ↩︎
  6. https://www.reconciliation.org.au/ ↩︎
  7. https://www.ncgrl.vic.gov.au/first-nations/ ↩︎
  8. https://www.slis.tsukuba.ac.jp/grad/assets/files/pub/2016/201421611_abstract.pdf ↩︎
  9. https://current.ndl.go.jp/ca1970 ↩︎