州におけるLSTA助成金の使途

日本では,アメリカの図書館政策として図書館サービス及び技術法(LSTA: LIBRARY SERVICES AND TECHNOLOGY ACT)がよく知られている1。LSTAが知られているのは,これが連邦政府の主要な図書館政策であるためであろう。では,この助成金は州レベルで,実際にどのように活用されているのだろうか。

州政府の活用を見る前にLSTAについて確認しておくと,LSTAは単独の法律ではなく,博物館図書館サービス法(MLSA: MUSEUM AND LIBRARY SERVICES ACT)の第Ⅱ節に位置づけられている条文を指す2。LSTAによる助成の実施と予算の執行は,博物館・図書館サービス機構(IMLS: Institute of Museum and Library Services)が担っている。LSTAは時限立法であるが,これまで何回か再承認という手続きで継続されてきた。最近では2018年に再承認され,2025年まで継続されてきた。

3月に,IMLSに関する大統領令が出されて3,多くの助成事業が中止となり混乱が生じている。しかし,オハイオ州の事業はあまり中止されていないようである4。2025年11月時点において,法律が再承認されたという報道は出ておらず,IMLSによる助成についても,少なくとも9月時点の新聞報道では2026年以降は未定となっているという5

LSTAの目的は9121条に定められている。そこでは12項目が掲げられている。図書館サービスの改善,資料アクセスの向上,リソース共有,識字や生涯学習,多様な利用者への支援,地域社会の活性化,図書館職員の人材育成,保存,災害時の地域貢献など,幅広い領域が示されている。「Technology」的要素については,改正が繰り返される中で,以前と比較して相対的に目立たなくなった印象がある。

LSTAに基づく助成金の多くは,人口に応じて各州に配分される。各州は一定割合の財政負担を求められるほか計画の策定や報告の義務を負う。オハイオ州では,州立図書館が受け皿となり,例年540万ドル(約8.6億円)を受け取っている。この助成金は公共図書館に限らず,すべての館種の図書館を対象とした支援である。州立図書館では,IMLSの方針を踏まえつつ,州として5カ年の助成プログラムを策定している6。また,LSTA諮問委員会(Advisory Council)を設置して,多館種の関係者から助言を受けている7

州立図書館の助成金ウェブページを見ると,8 つの取組が紹介されていた8。それらを紹介すると,「オハイオ図書賞と作家助成金」は,オハイオ州に関連する図書の購入等に充てられる。1館あたり最大2,000ドルである。「競争的助成金」は,コミュニティの拠点としての図書館,識字,利用者にリーチする革新的方法という3分野に沿って,各館が提案を行うものである。「保存と修復保存」はコレクションを対象にした保存等の取組への助成であり,「オンライン支援」は農村部の図書館がコンピュータ指導員を雇用するための助成である9。「Know Your Flow」は生理貧困対策のプログラムであり,「メタデータ」はオハイオ・デジタル・ネットワークやDPLA(Digital Public Library of America)の基準に合わせてメタデータを修正するための助成である。「オープングラント」は申請者が必要とする取組を提案するものであり,特にオハイオ州が定める助成プログラムの方針に沿った事業が期待されている。「夏期図書館プログラム」は,夏期に実施されるプログラムへの支援である。

2023年の支出データからは,助成金が実際にどのような事業に投入されているのかが分かる10。最も多いのはLibraries Connect Ohioであり,オンラインデータベースの契約などに58.16%が充てられていた。次に多いのが「オンライン支援」であり14.54%である。3番目は「競争的助成金」で8.25%,4番目は視覚障害者へのサービスで4.76%となり,この4つで85%を超える。以降,「地域図書館システム支援」(3.0%),「オハイオ図書賞と作家助成金」(2.5%),「夏期図書館プログラム」(2.37%),「オープングラント」(2.25%)と続いている。

全体として,州の共通基盤整備と図書館の底上げに役立っていると感じる。また,意欲ある図書館への支援,専門的知見を踏まえた支援も特徴として挙げられよう。

  1. 連邦レベルの動向は橋本の文献が詳しい。橋本麿美. (2015). 1996 年以降におけるアメリカ連邦政府の図書館政策: 図書館サービス技術法に基づく補助金事業の動向. 日本図書館情報学会誌61(4), 215-231. ↩︎
  2. https://www.govinfo.gov/content/pkg/USCODE-2022-title20/html/USCODE-2022-title20-chap72-subchapII.htm ↩︎
  3. https://current.ndl.go.jp/car/243184 ↩︎
  4. https://www.cosla.org/imls-grant-cancellations ↩︎
  5. https://ohiocapitaljournal.com/2025/09/15/state-library-of-ohio-among-libraries-awaiting-court-decisions-congressional-votes-on-funding/ ↩︎
  6. https://library.ohio.gov/libraries/grants/additional-resources/five-year-plan ↩︎
  7. https://library.ohio.gov/about/committees-and-councils/committees-councils ↩︎
  8. https://library.ohio.gov/libraries/grants ↩︎
  9. https://library.ohio.gov/libraries/grants/guiding-ohio-online ↩︎
  10. https://library.ohio.gov/about/publications/annual-reports ↩︎