図書館ネットワークHELMETの仕組み

近年,日本では定住自立圏構想に基づいて,広域自治体を基盤に電子書籍サービス提供が増えている。契約主体を大きくすることにより提供可能タイトル数の増加が期待される。海外でも,自治体間で共同して図書館サービスを提供することが進んでいる。ここでは,フィンランドのHELMETの仕組みを見てみたい。

HELMETは,フィンランドのヘルシンキ市,エスポー市,ヴァンター市,カウニアイネン市によって構成される図書館ネットワークであり,Helsinki Metropolitan Area Librariesの略称である。1976年に設立されている1。公式情報によると,この図書館ネットワークは60以上の図書館,5台の移動図書館を持ち,750人以上の図書館員が働いている。サービス対象人口は100万人を超え,年間来館者数は約2,700万人,貸出点数は約1,600万点,所蔵資料は約300万点とのことである2。フィンランドでは,このような図書館ネットワークが全国に30近く存在し,多くの自治体が何らかのレベルで連携を組んでいる。

HELMETでは,利用規則や各種サービス,ILSが共通化されている。その結果,検索画面は統一され,貸出や返却はどの館でも可能である。物流システムも整備されている。もちろん,カードも共通化されている。電子書籍などのデジタルリソースについては,かつてはネットワークで共同調達を行っていたが,現在は国立図書館がまとめ役となっている「E-kirjasto」に参加しているようである3

HELMETの利用協定書を見ると,運営の一端を知ることができる4。まず目的はサービスの向上,運営の効率化,経済性の向上である。意思決定は,館長などから構成される経営委員会が担っている。経営委員会は年6回以上の会議を開催するとされている。その下に,図書館システム維持管理グループ,目録作成グループ,広報グループ,研修グループ,ウェブサイト編集グループなど,業務別の専門グループが置かれている。

費用負担についてだが,図書館システムや共同事業など共同運営に伴う費用は,別の4市連携組織のルールに準じて分担している。2017年の協定書ではヘルシンキ市50%,エスポー市27%,ヴァンター市22%,カウニアイネン市1%となっている。ただし,職員の採用や物理的なコレクションの選書などは各自治体が主体的に行っているとも聞いている。したがって,あらゆる業務を共通化しているわけではなく,各市が自律的に決定できる事項もある。

こうした仕組みは,定住自立圏構想などに基づく広域的な図書館ネットワークを展開させていく上で参考となるであろう。一方で,定住自立圏構想に関しては,自治体の団体自治や住民自治の観点から,民主的な意思決定に課題を生じさせるリスクがあるとも言われている。共同のレベルを深めれば深めるほど,そうした課題は生じうる。住民の民主的な意思決定を確保した上で,いかにサービス向上につなげていくかが課題となる。

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Helsinki_Metropolitan_Area_Libraries ↩︎
  2. https://helmet.finna.fi/Content/about, https://www.hel.fi/static/public/hela/vipaU480400VH1_Kulttuurin_ja_vapaa-ajan_toimialajo/Suomi/Paatos/2017/KUVA_2017-10-13_26_Pk/004A3EE6-FAE5-CE6B-8766-5F15DB700002/Helmet-kirjastoyhteistyosopimuksen_allekirjoittami.html ↩︎
  3. https://helmet-tukisivusto.hel.fi/en/news/the-finnish-nationwide-e-library-will-change-the-e-library-services-of-helmet-library ↩︎
  4. https://www.hel.fi/static/public/hela/vipaU480400VH1_Kulttuurin_ja_vapaa-ajan_toimialajo/Suomi/Paatos/2017/KUVA_2017-10-13_26_Pk/004A3EE6-FAE5-CE6B-8766-5F15DB700002/Helmet-kirjastoyhteistyosopimuksen_allekirjoittami.html ↩︎