ウプサラ市立図書館

ウプサラ市はストックホルムの北に位置し,ウプサラ県に属している。人口は統計によれば約25万人で,ウプサラ大学をはじめとする高等教育機関が多く集まり,大学関係者や県・市など行政に関わる人も多い。図書館は市の文化・スポーツ・レジャー局の下に置かれている。図書館法に基づき「図書館計画2025〜2029」を策定している。市内には12館の図書館と2台の移動図書館があり,職員数は115名である。年間116万人が来館し,物理的資料の貸出は160万点と多い。

図書館はウプサラ市の中心部にあり,周囲は賑わいエリアである1。すぐ近くには分類学の父,リンネの植物園がある。賑わいのあるスヴァルトベックス通りの側から入ると,やや古めの木造の建物がある。かつては事務スペースとして使われていたようだが,現在はカフェレストランになっている。少し目立たない場所に中庭のような空間もあり,子どもが遊んでいた。古い建物と図書館はガラスの屋根でつながっている。光が入って気持ちのよい空間である。そこでは新聞や雑誌を閲覧したりパソコンで作業したりする人がいた。図書館に入ると正面にカウンターがある。自動貸出機や返却機もあるが,カウンターで問い合わせをする人も多い。その脇にはPC利用コーナーがあり,こちらもよく利用されていた。

左手奥にはホールがあり,その隣の部屋は言語カフェに使われている。ホールの利用はあらゆる団体に開かれているが,特定の政治的立場を主張する団体には,意見が偏らないようバランスをとるよう求めているという。この部屋は図書館員の会合にも使われている。ウプサラ市では,毎週金曜午前中に分館を含めて図書館員全員が集まっている。分館は,休館またはセルフサービスで利用できるようにしている。そのような場で業務の調整や図書館の方針などを議論しているとのことである。貴重な場である。

カウンターのあるフロアは大人向けの図書が中心である。音楽,スタジオ,若者向け,ファンタジーなどのコーナーがあり,日本のコミックも多く所蔵されている。障害者用のトーキングブックの近くには大型活字本が置かれていた。書架の間には多くの席があり,利用者も多い。「Studio」と呼ばれる部屋にはミシンが4台ある。奥にはサウンドルームがあり,ポッドキャストなどの録音に使えるマイクやミキサーがある。その隣のピクチャールームではAdobe Creative Cloudが利用できるMacがある。他に,A2サイズまで印刷できるインクジェットプリンターもあった。若者向けのコーナー「クラウド」は13歳から25歳までを対象にしている。通常より年齢の上限が高い。図書はRFIDタグで管理され,スウェーデン独自の分類法を採用している。面陳を多く行って魅力的に図書を展示している。

中2階から下のフロアの眺めは格別である。そこには多言語の図書が置かれ,日本語資料もある。奥には静かに過ごせる閲覧室がある。ここは学生の利用が多いという。入口から右手に行くと下の階に児童の部屋「Läsfabriken(読書工場)」がある2。部屋の入口にはÄppelhyllan(リンゴの棚)があり,日本でも広がっていることを伝えると説明をしてくれた図書館長は,こうした取組を小さな棚にとどめず,図書館全体に広げたいと話していた。児童室には大人が入れないような小さな隠れ家のような「席」がある。子どもにとって魅力的であろう。児童サービスと関連してブックスタートについてだが,ウプサラでは図書館員が各家庭に出向く形で実施している。外国から来た人などは図書館への理解が十分でないこともあり,図書館に来ないためとのことであった。

ウプサラの図書館の活動は多岐にわたるが,いくつか印象に残ったことに触れる。「リーディング・アンバサダー(Läsvisare i Uppsala)」という取組を行っている3。大人が若者に図書を薦めても効果が薄いが,同年代から薦められると効果があることは図書館員もよく知っている。そこで,ウプサラでは若者を雇用して読書会を主催してもらうなど読書大使として活動してもらっているという。無償ではなく,賃金を払って仕事として携わってもらうというのである。そのためにスウェーデン芸術評議会から92万クローネ(約1,500万円)の助成金を得ている。

また,若者への別のアプローチとして,地元プロサッカーチームと連携している4。18歳未満で図書館カードを作った子どもにホームゲームのチケットを先着順で「貸出している」(返却不要)。子どもの中には読書には興味がなくても,サッカー選手には強い憧れを持っていることがある。そうした憧れの存在が,図書館利用を薦める効果は大きいという。これはチーム側からの連携要請とのことで,図書館が費用を負担しているわけではない。

図書館内に多くの青いバックがあった。これにはブッククラブ用の図書セットが入っているとのことである。公式ウェブによると112タイトルある。袋には同じ図書が6冊と質問のヒントなどが入っている。中の図書が外からわかるよう図書の案内がラミネート加工されて袋についている。大人向け以外に若者向けのセットもある。そのセットには日本のコミック『呪術廻戦』(第1巻)も含まれていた。セットが用意されていると,ブッククラブ開催の敷居が大分下がるように思った。

マネジメント関連で興味深かったのは,まず返却の仕分け機である。日本でも入れているところはあるが,北欧ではかなり普及している。運用は日本でも大きく変わらないと思われるが,仕組みは以下の通りである。電算的な処理はRFIDで自動で行われ,分館の図書は分館ごとに振り分け,当該館の図書は分類ごとに振り分ける。振り分けたら振り分けられた容器の角度を変更し,そのままブックトラックに早変わりさせ,フロアの排架作業に使われる。手作業であれば,返却処理をして自館と他館の資料を分け,自館のものは一時的な返却用の棚に分け,ある程度たまったところで,それをブックトラックに移動すると思われるが,その一連の作業が省力化されるわけである。機械導入時には図書館員の反対が多かったが,機器入れ替えの際,反対する図書館員はいなかったという。長く図書館員として働いていると腱鞘炎になることもある。そのリスクを少しでも軽減したいとのことであった。それでも腱鞘炎対策の手袋をしている図書館員もいたが。

他にマネジメント関連で興味深かったこととして,最近,プロジェクト管理の職を新設し,多様なプロジェクトの進捗支援や外部との調整を担ってもらっているという。図書館員は専門的業務の専門家であっても,プロジェクトの立ち上げから実施までのマネジメントに長けているわけではない。そのために,この役職が設けられたという。

また,図書館長から,図書館法が外部からの圧力に対して図書館を守る役割を果たしていることが何度も聞かれたのが印象的であった。図書館法が図書館を守っているといった発言はフィンランドでも聞かれた。表現の自由,包摂的な各種施策,LGBTQ+(ウプサラではHBTQ+)など,近年,論争になり得ることは多くある。しかし,それらを図書館に求めているのは図書館法(及び関連立法)なのである。したがって,外部からの攻撃があっても,図書館は図書館法が求めることを行っていると説明できるわけである。また,「アームズレングス原則」(arms-length principle)に関しても言及があった。こうした規範が関係者に共有されているおかげで,図書館の運営はスムーズに行えているとのことであった。

帰りに他の図書館員に勧められたウプサラ大学図書館に行った。入口が控えめすぎて,人が入っていくのを見なければ,悩みそうである。展示室があり,すばらしい展示であった。日本の『本草図譜』も展示してあった。

  1. https://bibliotekuppsala.se/startsida#/ ↩︎
  2. https://www.youtube.com/watch?v=9SgiD1aXQcI&t=2s ↩︎
  3. https://www.uppsala.se/kommun-och-politik/nyheter-och-pressmeddelanden/2024/bibliotek-uppsala-far-920-000-kronor-for-att-fa-fler-unga-att-lasa ↩︎
  4. https://bibliotekuppsala.se/matchbiljett ↩︎