日本の公共図書館で図書館業務・サービスに関わっている企業は国内企業であることが多い。例えば,図書館システム(ILS)では富士通やNECの名前をよく聞くし,電子書籍貸出サービスでは,図書館流通センター(TRC)が大きなシェアを持っている。メディアドゥがOverDriveを提供していたり,EBSCOを導入する図書館もあるが,TRCと比較して多くはない。
一方で,欧州の図書館では,サービス提供企業が必ずしも自国企業に限られていないケースが多い。例えば,図書館システム(ILS)では,他国のILSを導入している事例がいくつも見られた。ポーランドでは,国立図書館を中心にClarivate社(英国・米国)のAlmaとPrimoを全国的に導入していた。また,フィンランドのHELMETではClarivate社のSierraを使っている。スウェーデンのヴェステロース市立図書館ではKohaを導入していた。これはニュージーランドで開発されたオープンソースのILSである。
さらに,これらILSの中には,業務用のバックエンドと利用者向けのフロントエンド(OPAC等)を切り分けて運用している例があった。この仕組みによって,業務用は海外企業のシステムを,利用者向けOPACでは国内で統一した総合目録的機能を持つシステムを導入しているケースも見られた(例えばタリン市)。ILSだけではなく,自動返却システムでも海外のものを利用している図書館が多く見られた。特に北欧では,Lyngsoe Systems(デンマーク)の仕組みが多く導入されていた。また,ハンブルク市の図書館では,アメリカの企業が運営するFreegal Music+という音楽ストリーミングサービスが導入されていた。
優れた仕組みであったり,自国で適切なサービスが見つからない場合は,海外のサービスを取り入れていることは注目される。このことが利用者へのよりよいサービス提供につながるし,適切な競争環境を作ることにもつながっているのだろう。また,異なるシステム間で連携しているということは,データのやりとりが標準化されていることを意味する。かつて話題となり現在でも使われているZ39.50という標準化プロトコルがあるが,日本のILSではこれに限らず各種の標準化がどこまで進んでいるのだろうか。標準化は,閉じたマーケットではなかなか進みにくい。ガラパゴス化を避ける上でも必要である。なお,国立図書館や広域自治体などを中心に独自の仕組みを開発・導入することが重要なことはいうまでもない。