日本には資料選択のツールとして,図書館流通センター(TRC)の『週刊新刊全点案内』がよく知られている。また,発注から装備,納品までの一連の作業をTRCが担っていることもよく知られている。英国にも類似の業態があり,その仕組みを簡単に整理する。
ロンドン市内のある図書館で装備やマークについて尋ねたところ,業界は寡占化しており,発注,装備,MARCがセットで提供されているとのことであった。その図書館が契約していたのは Askews and Holts Library Services LTD (Askew社)であり1,公共図書館への資料納入の代表的業者の一つである。公式ウェブによれば,同社は出版前の図書,新刊,既刊の選択と発注を可能にするツールを提供し,MARCや装備も含めて納品している。図書の在庫は650万点にのぼるという。
また,TRCの「ベル」に近いスタンディング・オーダーにも対応している。これは,ジャンルごとに図書館のニーズを踏まえて自動的に納品する仕組みである。2018年のCIPFAの資料によると,ロンドンのサザーク区では図書館資料の選定について,およそ3分の1がスタンディング・オーダー,3分の2が図書館員による選定であった2。その後,サザーク区の図書館計画では業者選定の比率を増やす方向が示されており3,現在はさらに比率が高まっている可能性がある。報告書によれば,他の自治体では業者が選んだものから図書館員がさらに選択する方式もとられている。業者と図書館の関与度を調整できる仕組みになっているようである。
業者の寡占化については,2024年に政府が公表した報告書でも言及されている4。これはDCMSの委託を受けて上院議員によってまとめられた報告書である。ここで,図書館納入業者としては Askews社 と Peters(主に児童書)の二社しかないこと,競争環境が十分でないことが指摘されている。さらに,業者がサービスを停止した場合に大幅なコスト増につながることも危惧されている。各図書館ごとに装備仕様が異なることについては,オーダーメイド型の装備は前時代的という意見も記されている。
選書ツールの提供から発注,装備,MARCまでを包括的に行う企業が存在していることは興味深い。一方で,目録作成や選書が不要となり,図書館員に専門性が求められなくなっているという指摘も図書館員から聞かれた。日本とよく似た状況であると感じた。
- https://www.askewsandholts.com/AskHolts/CorpHome.aspx ↩︎
- https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5b754243ed915d0a9cfb6dc9/Analysing_data-CIPFA_statistics.pdf ↩︎
- https://services.southwark.gov.uk/assets/attach/8847/Libraries-and-Heritage-strategy.pdf ↩︎
- https://www.gov.uk/government/publications/an-independent-review-of-english-public-libraries-report-and-government-reponse/an-independent-review-of-english-public-libraries ↩︎