オハイオ州では図書館員による労働組合結成が増加しているという。図書館員への聞き取りの中でも,こうした動向に注目しているという発言が聞かれた。ここでは,その背景について簡単にまとめておく。
カナダでは労働組合が活発に活動しているところが見られたが,オハイオ州では,これまで図書館の労働組合はそれほど多くなかった。そうした中,州最大の図書館システムであるコロンバス・メトロポリタン図書館で労働組合結成の動きがある1。他にもワージントン,グランドビューハイツ,ピカリントン,アッパーアーリントン,アセンズ・カウンティ,デラウェア・カウンティ,トレド・ルーカス・カウンティー等で組合が結成されたり,その動きが活発化している2,3,4。コロンバスでは教員組合と合同で結成することが予定されている。現在は結成に向けた取組が進められているが,組合員資格を持つ図書館員の80%から支持を得ているという。
なぜ労働組合結成の動きがあるのか。記事ではいくつかの背景が指摘されていた。職場がより危険になりつつあること,すなわち利用者対応などの場面で暴力を含む事故が増加していること,賃金の問題,医療や有給休暇などの福利厚生が課題となっていること,等が挙げられている。さらに,知的自由,多様性,公平性,包摂性が深刻な脅威を受けていることも関係しているという。こうした問題に取り組むにはしっかりとした雇用環境が求められるということであろう。聞き取りの中では,教員組合が周辺職種への組織化を積極的に進めていることも要因にあるのではとも聞かれた。実際,コロンバス・メトロポリタン図書館を含め,オハイオではオハイオ州教職員連盟(OFT)のもとで組合結成が進められている。
組合がすでに設置されているワージントンの2023年の労働交渉協定を見てみると5,賃金,休暇,異動,懲戒,勤務時間などが記載されていた。このことにより,職員としては労働条件が透明化され,こうした問題に対する見通しが立ちやすくなるというメリットがある。興味深い点として,異動の規定である。アメリカでは,異動はないと思っていたが,限定的にあるようである。但し,これは場所の異動(transfer)であり,職名(position title)の変更ではない。
他にも興味深い点として,MLS取得を目指す職員への年間最大2,000ドル(30万円)の補助の規定があった。専門職を図書館内で養成する制度である。給与も細かく規定されていた。各ポジションごとに,給与の最小・中間・最大の範囲が定められている。その中で,例えば,図書館長(CEO)のすぐ下のポジションであるDirectorレベル(pay range: 37)の中間は年収112,823ドル(1,690万円)であった。逆に,図書館員として最もランクの低い貸出支援(Circulation Assistant)は中間の時給が22.27ドル(3,340円),年収42,847ドル(643万円)であった。給与や物価の水準が大きく異なるとはいえ,日本で働くよりもオハイオで働く方が給与は格段によいようである。
- https://ohiocapitaljournal.com/2025/11/18/workers-at-one-of-ohios-largest-library-systems-set-to-unionize/ ↩︎
- https://www.delgazette.com/2024/08/18/library-staff-seek-union-recognition/ ↩︎
- https://ohiocapitaljournal.com/2024/03/28/union-busting-in-ohio-public-libraries-is-insulting-and-wasteful/ ↩︎
- https://www.wtol.com/article/news/local/toledo-library-union-cwa-local-rejects-contract-votes-strike/512-8c4c5315-0662-45fc-9077-70fa7b59c8e6 ↩︎
- https://serb.ohio.gov/view-document-archive/collective-bargaining-agreements ↩︎