資料自体の消毒はどうするべきか。ここでも,American Libraries誌におけるLara Ewen氏による”How to Sanitize Collections in a Pandemic“を紹介しながら考えたい。
記事では,図書館の資料は基本的に傷みやすいことから,溶剤などによる消毒は望ましくないと述べられている。
しかし,ポリエステルまたはポリエチレンで包まれた図書にはそうした対処は可能であるとも言及している。日本の図書館で使われている図書を覆うカバーの多くがそうしたものであれば,少なくとも「外側」について消毒が可能となる。
ただし,外側を拭くだけでは,ウイルスを完全に除去したとはいえないことに注意が必要とも述べている。資料内部のウイルスを完全に除去できないためである。
紫外線については,その照射強度が強いため,資料を傷める可能性が指摘されている。また,全てのページを照射することは,現実には難しいことを考慮する必要も指摘されている。
以上,記事を紹介してきたが,全体を読んだ印象としては,資料の消毒には限界があること,ウイルス除去には時間の経過が有効であること,資料を痛めないよう十分な配慮をすること,が強調されていたように感じる。図書館が資料を将来に向かって蓄積保存する役割を考慮すれば,資料がいたむような手段は用いるべきではない,という考えが見られる。