感染症対策指針

日本の図書館では,近年,各種の危機対応への取り組みが進んできた。しかし,感染症に対する取り組みは十分ではなかった。今後,図書館は,今回のような事態を踏まえ対策を準備していく必要がある。ここでは,アメリカ図書館協会のPandemic Preparednessに掲載されている事項を参考に,指針のあり方の論点を整理してみた。

以下では,ALAが挙げた指針に含めるべきトピックである。また,それぞれについて,日本の文脈での論点を整理した。

  • 図書館を閉館する場合の基準
    日本では,感染症のため閉館することはこれまで想定してこなかった。こうした場合の規程を今後設ける必要があるのか,設ける場合,どのようなレベルの規程とするか(図書館条例,運営規則,施行規則,スタッフマニュアル),どのような内容とするか。
  • 病気休暇,給与,在宅勤務に関する図書館スタッフの方針
    図書館スタッフが在宅勤務する場合の方針を設けるのか,設ける場合,どのような規定とするのか。
  • 社会的距離の基準
    図書館内において社会的距離を確保するための手立てとして,どのエリアを対象とするのか(閲覧席,事務室など),入館者の人数制限をするのか,そのためのサインを設置するのか。
  • 実施する事業の中止基準
    おはなし会,対面朗読,映画会,各種講座などについて,どのような場合に中止とするか,どのような場合に再開するのか。
  • 設備の消毒
    どの範囲(トイレ,ドアノブ,電話,キーボード,カウンターなど)を,どのように消毒するか。
  • 長期休館中の各種対応
    施設管理者への対応,返却ポストの対応,会計処理などはだれが,いつ対応するか。
  • 連絡・広報
    自宅にいる職員と連絡はどのようにとるのか,利用者へのコミュニケーションはどのようにとるのかなど。

こうした論点を指針に落とし込む場合,当然,日本の法令,省庁によるガイドライン等を踏まえることになる。例えば,総務省が4月6日付けで「新型コロナウイルス感染症の大規模な感染拡大防止に向けた職場における対応について」を発出している。今後,日本図書館協会などが指針の雛形を作ることも期待さよう。