図書館の危険性

ジョンズ・ホプキンス大学が,”Public Health Principles for a Phased Reopening During COVID-19: Guidance for Governors“を4月17日に刊行している。これは,今後感染リスクが低下する中で,段階的再開に向けた取り組みの手順を,主に州レベルの「意思決定者」に向けてまとめたものである。

ジョンズ・ホプキンス大学といえば,先日,NHKのニュースで「米ジョンズ・ホプキンス大 コロナ特設サイト 信頼性高いと注目」(2020年4月26日)という報道があった。当大学のウェブサイトは,最新の,信頼される情報がまとめられ,世界的に注目されているという。

この報告書では,図書館を「コミュニティの人々が集まる場所」の施設の一つとして,危険性を評価している。そうした施設には,礼拝所,図書館,コミュニティーセンターが掲げられている。

図書館の危険性は,接触の強度が「低」,接触の回数が「低」と評価され,緩和策による効果は「中」とされている。最初の2つがともに「低」とされた施設は,報告書の中で「公園・散歩道・犬の公園(dog park)」だけである。日本の休業要請で同じカテゴリに入っている美術館は「中」「高」である。要するに,危険性の少ない施設と評価されている。

さて,この報告書に対して,PLA(Public Library Association)が抗議文を出した。公共図書館には非常に多くの利用者が来館していること,危険性は提供されるプログラムにも依存すること,などからコミュニティーセンターと同等の危険性にすることを求めている。図書館の現場から見れば,読み聞かせを始め各種プログラムを実施しており,そのことを考慮すれば,公園と同程度とのリスク評価は受け入れられないということであろう。

なお,PLAからの書簡からは,やり取りは以前からあるかもしれない。というのもPLAの抗議文には「新たな脚注」への言及があるためである。報告書では「図書館」の項目に脚注がつけられており,社会的活動,コミュニティの集まりがある場合は,コミュニティセンターに含むべきことが書かれている。

いずれにしても,図書館の活動を元に戻すには段階的にならざるを得ないこと,しかし,一定の配慮(社会的距離を取ることなど)をとるのであれば,少なくともジョン・ホプキンス大学の見解では,それほどリスクは高くないとなりそうである。日本では都道府県の「休業要請」により,「美術館」「博物館」と同様,「集会展示施設」の一つに分類されている。今後,施設のタイプ,活動の種類,再開に向けた段階的取り組みなどの全体を評価しながら,再開の時期を検討していく必要がある。