図書の隔離期間

日本図書館協会は2020年5月14日「図書館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」を示した。この中で,返却された資料の貸出しをどうするかに関し以下の説明がある。

資料へのウィルス付着に関係する対策については、現時点で、オーストリア図書館協会等をはじめとする海外の関係団体が公表している情報において、返却後の資料を一定期間保管・隔離したり、返却そのものを延期したりすることを推奨する例が見られるため、これらを参考にすることが考えられる。

「図書館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」 p.4

このうち返却資料の保管・隔離について,IFLAの“COVID-19 and the Global Library Field”というウェブページに関連情報が掲載されているので,以下,紹介したい。これらは,各国の図書館協会から示されている場合もあれば,図書館を所管するところから示されている場合もある。以下の表は基本的にIFLAの情報をもとにしており,それ以上の一次情報は当たっていない。しかしながら,明確に述べられていないところ(イタリア及びスペイン)は一次情報を確認した。期間の単位は「日」に直した。

国名10万人当たり感染者数図書の隔離期間
オーストラリア2761日間
チェコ7852日間
アイルランド4,8593日間
スイス3,5363日間
オランダ2,5613日間
ベルギー4,7473日間
フランス2,751ビニールコーティングは10日間,紙は3日間
イタリア3,70210日間
スペイン(アンダルシア地方)5,86814日間

IFLAで紹介されている以外に,ニュージーランドは3日間(こちら)である。

100万人当たりの感染者数を調べたのは,感染が広がった国は長くなるのではという単なる興味である。こちらのデータはWorldometerで調べた(5月15日時点)。結果,両極はそうした傾向が見られるが,それ以外はそれほどはっきりしない。ちなみにニュージーランドは311人,日本は245人である。

それぞれ根拠はあるようだが,表から3日(72時間)が多いことが分かる。上の表にないアメリカであるが,OCLC,IMLS,Battelle(非営利の団体)がREALM(Reopening Archives, Libraries, and Museums)というプロジェクトを立ち上げた。図書館,アーカイブズ,博物館を対象に,科学的観点からCOVID-19の問題に取り組むものだが,ウイルスの残存期間も検討するようである。こちらも注目されるが,結果が出るまでには時間がかかるようである。